トロイ ★★+★
2004年 アメリカ
監督 ヴォルフガング・ペーターゼン
脚本 デビッド・ベニオフ
出演 ブラッド・ピット,エリック・バナ,オーランド・ブルーム,
ディアーヌ・クルージェ,ショーン・ビーン他
原作のホメロスと言や、シェイクスピアと並び
西洋文学史上における三大教養のお一人。
その一大叙事詩をCGで映像化したのが本作なわけですが、
神々と人間が入り乱れた神話的な雰囲気の強い原作から
きれいさっぱり神話色を拭い去り、
史実的な雰囲気の作品に仕立て直されてます。
なので、本作で「英雄アキレス」の話を初めて観る人には、
「人間アキレス」に違和感を感じないよう分かりやすく
無難にまとめられているんですが、逆に
「踵」以外に弱点がない超絶無敵英雄アキレス
という神話的な知識のある人間からすると
なんだか普通の人間すぎて物足りないんですなあ。
これは本作が群像劇仕立てになっているせいでもあるんですが、
正直アキレスを単体で掘り下げた方が良かったんではないかと。
せめて踵が唯一の弱点、くらいは描いて欲しかったです、個人的に。
「史上最大の『愛』のための戦い」と称しているだけに、
いろんな『愛』を軸にして物語が組み立てられているし、
戦争というのは今も昔もそうしたいろんな愛を
踏みにじるものでしかないんだね、という不毛感、
みたいなものは一応感じられはするんですが。
ただ、そうした愛憎劇としても些か中途半端で、
全体的に掘り下げが甘いのですね。
特にトロイ戦争の発端になるパリスの恋情なんか、
絶世の美女に僕ちんメロメロさ!
ってことと後はパリスのヘタレっぷりだけしか描いてないし。
それでいいのか。監督。
てーか、あのヘタレッぷりは笑いどころですよね、監督?
むしろ戦争の不毛さならば
アキレスとブリセウスの関係を掘り下げるだけで十分な話。
にもかかわらずこの関係とアキレスの造形自体に深みがないので、
劇的なクライマックスの盛り上がりが今一つパンチに欠けるんですな。
何と言うか、アキレスに対する感情移入がそこまで深まらないというか。
上述のパリス、ヘクトル、アキレスの愛憎劇を横糸とすると
ヘタレパリスと質実剛健ヘクトル様、
傲慢強欲アガメムノンと不良兄さんアキレスの
(主従に似た)関係性が縦糸にされているんですが、
まぁ、激甘に見て戦争の引き金となった人物
(パリスとアガメムノン)を思いっ切り『ヘタレ』に描くことで、
アホな指導者を持った国民は不幸だ――
ということをも同時に描きたかったのかもしれんのですが、
そんなことは観ている最中には全然、全く感じられまへん。
全体的にパッとしない中で、
唯一輝いていたのがエリック・バナでした。
弟の尻ぬぐいをさせられるヘクトルを
予想以上に好演してくれてるおかげで、
アキレスとの決闘直前に漂う悲壮感は
本作の見どころの一つなのは間違いないでしょう。
ただ、まぁ、なんにしても163分はちと長いっすね。
確かにギリシャ時代の合戦風景を再現したアクションシーンは
迫力満点で言うことなし、ではありましたが。
長丁場の準備をしてから決戦に臨みましょう。