「みっちゃん!どうだった?」

「ふぉい?」

放課後、なぜかやきそばパンを口一杯にほお張っていた葛城ミサト教諭のところへ
教頭の碇ユイがやってきた。
といっても、肩書き上はそうだが、実際は唯の友達みたいなものだ。

「もーもぐもぐしちゃってかわいいんだから〜」

そういって頑張って飲み込もうと努力しているミサトのわき腹をつつく。
かわいい笑顔を浮かべつつ、まぎれもない白衣の悪魔だ・・。
ちなみにこの教頭時々理科を教えていたりするので白衣を着ている。

ミサトはなんとか耐えつつ、飲み込んだ。
なぜ至福の一時が、この一人の為に地獄に変わらねばならないのだろうか・・
ミサトの脳裏にそんな疑問がよぎった。

「新しいクラスどうだったかしら?」

「は、はい・・」

ぜぇぜぇと息も絶え絶えなのはしかたがない。

「な、なかなか元気で良かったです。」

「そう、特に問題はないわね?」

「ええ、でもなぜです?」

ふとミサトは管理能力が問われているのかと思った。
まずい・・教師失格と散々同僚に言われていたことが事実になるのか。
今年はその最終テスト・・ぞっ・・。

「今年あなたのクラスにシンちゃんがいるじゃない。
 やっぱり母親としてはちょっと気になるところなのよ。」

「ああ、なるほど。
 そういうことなら全然問題ないと思います」

最近では自分でも感じる自分の指導能力のなさに
はっきりと問題がないとは言えなかったが。

「そう、よかったわ。これからよろしくね」

「はい」

とりあえずミサトの危機ではなかったようだ。
が、ユイの息子がクラスにいるとなると余り下手なことをやるとユイの耳に入りかねない。
さらにはユイの夫であるゲンドウにも・・。
あの髭づらが迫ってきて日には自己退職せざるを得ない事間違いない。
そしてそれは退職金の大幅減額を意味する。
・・・とは言っても勤務年数の少ないミサトの退職金など元々すずめの涙も良いところだったが。

(こりゃ、気を引きしめてかからにゃ明日のご飯がなくなるわ・・。)

残りのやきそばパンを口にほうりこみながらミサトは思った。





「シンジ、学校どうだった?」

「え?別に普通だったよ。」

夕飯のテーブルにて。

「去年仲の良かったトウジも居るし。
 でも、ちょっと変わった人が多いかも・・。」

「そうよね、私も見たときちょっと思ったわ
 でも大丈夫、シンジならやっていけるわよ」

「別にそんなに心配しているわけじゃないけどさ」

「あら、頼もしいじゃない」

「そう?」

ゲンドウは、唯ひたすらご飯を食べ続けている。
一心不乱に。




翌日

「おはよーございます!」

それにしても、良くぞここまで集めたと言わんばかりの個性がそろっている。
教壇から見渡せば、とりあえず目に付く髪の色
赤青黄色にこげ茶色〜♪白銀、プラチナ、ブロンド、グレーにセクスィー漆黒♪
歌ってからと言って何か意味があるわけではないが、
とりあえずどの生徒も、染めているわけではなく地毛だ。
というか、このようなきれいな髪の色の前で染めた色など恥ずかしくて出来ない。
国際化が進んだ今、髪の色ひとつ染めるのも大変だ。

目の色もそれに伴ってたくさんある。
当然だ。紅蒼青水色茶色黒。
というか、日本人でも本当の真っ黒と言うのはなかなかいないし。

それに、双子もそろってこのクラスに入っている。
しかも、シンガポール人。
彼らは日本語を流暢に話すが、中には余り話せない外人の生徒もいる。
このクラスに限ってはすでに島国日本の名は失われつつある。

外人ばかりでなく、日本人だってかなり変わったものが揃い踏みだ。
それはおいおいわかっていくだろう。
とまー外見だけをざっと言っただけでもこの個性ぶり、まるで1世代前のアメリカだ。

「今日から本格的に授業が始まりまーす
 なかなか退屈な時間もあると思いますが、
 くれぐれもばれるように寝たりなどすることないように!失礼ですよ。
 それにこの学年には面白いか怖いかのどちらかの先生が集中的に集められているので
 寝る暇なんてないとおもうわ!」

思えば先生も十分個性的だ。
というか、教師という枠ぎりぎりと言うよりも
豪快に枠の外に飛び出しすぎてしまっている感がある。

何はともあれ、授業は進んで行く・・・。





「ほ、ほんまつかれるで・・こんなんじゃ体が持たん」

今にも死にそうな顔で悲鳴を上げているのはトウジ。

「トウジ、なに言ってんのよ!
 私が何回たたき起こしてあげたと思ってるの!まったく」

元気な怒鳴り声を上げているのはこのクラスの委員長になった洞木ヒカリ。
斜め前に座るトウジを去年から、いや小学校からの腐れ縁でたたき起こし続けているとか・・。

「せ、せやけどなぁ。今年ホンマに気の抜ける先生おらへんで。
 理科のリツコ先生なんてうつらうつらしとっただけで命を取られそうな目向けてきおったんや。
 英語のマヤ先生には申し訳なくて寝るな・・い、委員長?」

「なんでマヤ先生には申し訳ないのかなぁー?」 withおでこに十字袈。

「ほ・・ほれは、いや、なんちゅーかその・・かわゆいか『ゲシッ』・・」
「フン、もうマヤ先生の授業じゃ起こしてあげないから!」

そういってドスドスとヒカリは立ち去った。

「ばかなトウジだ・・」
「だね・・。」

どうせあの二人がもめていると最終的に嵐が巻き起こることを知っていたシンジとケンスケは
こそこそと離れた場所から事を見つめていた。


(ヒカリったらなんであんなのが良いのかしら?
 男に泣かされるタイプねー・・。
 それにしてもまたこのクラスにはガキばっかね・・)

辛辣なコメントを頭の中で吐いているのは惣流アスカラングレー。
彼女の隣では双子の
ウェイ=ウィグフィールドとウェイチェン=ウィグフィールドが
何やら本を見てしゃべっている。
時々聞こえてくる数式のようなものからアスカはそれが物理のものだとわかっていたが。
彼らは、この学校トップクラスの、いや、日本のみならず世界を見てもトップクラスの頭脳の持ち主。
が、アスカは間違いなく世界トップ10に入ろうかと言う天才だ。

ちなみにこの二人を見分けるのは簡単だ。
ウェイチェンの方がめがねをかけているのだ。
時折アスカの方にちらりと目線をやるのはライバルだとでも思っているのか。
それがまたアスカの気に触る。
言いたいことがあればはっきりと言えば良いのに。
アスカのフラストレーションは上がりっぱなしだ。
大体、担任からして何なのよ・・あれはないでしょあれは!
それに、あいつもちょっとむかつくわね。

アスカの視線の先には漆黒のウェーブしたショートヘアと、漆黒の瞳を持つイタリア系の少女。
日本語が余りしゃべれないという逆ステータスと、パッチリした目。
そして全体的に見てどうにも『かわいい』のだ。女子男子とわず大人気!
アスカは去年気が強い、と言う事がばれてしまってからは
隠れファンは多くとも彼女 リサ=ラネー のような取り巻きは出来ない。
出来たら出来たでうざいと思うのだが、
自分に出来なくて他人に出来ていると言うのもこれはまた腹が立つのだ。
そして、腹が立っている自分にまた腹が立つと言う相乗効果。
ふつふつと確実にアスカの怒りのボルテージは上がっていっていた。

ちなみに去年その相談役兼解消役となっていたヒカリは、
同じクラスになってみるとトウジとかいうのにつきっきりで
アスカのことをかまっている余裕はないと見える。
全てがアスカには不満な状況だった。



そして、遂にたまりにたまったエネルギーは掃除の時間に爆発することとなった。

事の始まりは唯の小さな事故。
掃除のやる気などまったくなかったアスカは雑巾を足の下に引いて
足で掃除しているのやら、ただ突っ立っているだけなのか分からない状態でいたところに
こちらもまた掃除中にもかかわらず
箒と丸めた雑巾で野球をしていたシンジの投げた雑巾がコントロールを誤ってアスカの腹部に直撃。

これにアスカは激怒した。

「こ・・この、ウスラトンカチ!・・」


そして続けざまに罵声を浴びせ掛けようとしたところ、
なんと、自分でも吃驚の涙がこぼれてきたのだ!

アスカは、焦った。
それでも意地で一撃シンジのほほに平手をくらわしてから教室を飛び出した。

アスカの怒声を聞きつけて急いで教室に戻ってきたヒカリが見たのは
走り去るアスカの後姿、呆然と立ち尽くすシンジと
一体、あのアスカラングレーが泣くとは・・どういうことだ?
と、困惑したクラスメートたちの顔だった。

(シンジ君・・よね?被害者となるべき加害者は。)

なぜか軽い頬のダメージだけですんでいるシンジを見て
ヒカリもアスカに何が起こったのか不安になった。
・・・いささか失礼ではあるが。







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