1月例会(1月12日)
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
平成15年最初の「SRの会」関東例会は、1月12日(日)に「ニューヨークカフェ」渋谷店の地下会議室「マイスペース」6号室で開催された。今月のトピックは、雑誌「ミステリKADOKAWA」の取材を受けたことだろうか。同誌には見開き2頁でミステリのファンクラブを紹介する企画があるのだが、その取材対象に「SRの会」が選ばれたのだ。申込を受けた際には、田村会長が大阪にいることだし、関西地区の例会に行ってもらった方がよいと考え、会長に相談をしたところ「そちらで対応してもらって結構ですよ」とのことで関東例会で受けることとなった次第。新年だからか、それとも角川書店の取材があるからか、三連休の中日にもかかわらず参加者は20名の多数にのぼった。そして、予定の15時をすこし過ぎて角川書店・倉田晃宏氏が登場。いよいよ取材である。最初に「SRの会」の沿革をこちらから説明し、その後倉田氏から出席者に質問があって、という手順で取材は行なわれた。また、本をどういったところで手にするか(書店、古本屋、図書館、インターネット)といったこと等を尋ねるアンケートもあった。1時間程度を予定していたが、古本オークションまでお付き合いいただいたので(角川書店の新刊が出品されなかったのは幸いであった……)終了は5時近くであった。取材の内容を詳細に記すると興を削いでしまうので、ここではこの程度にしておこう。会員の皆さん、書店で「ミステリKADOKAWA」を見掛けたら手にとってみてください。2月15日発売の3月号に掲載予定とのことです。
取材以外のトピックとしては「甦る推理雑誌」の「『探偵実話』傑作選」の解説に深堀骨氏が立候補したことだろうか。編纂者である山前氏への売り込みの結果が実を結ぶかどうか注目したい。また、以前関東例会で「乱歩一代記」をはじめとする講談を披露した講談師・旭堂南湖氏が2月16日(日)に両国で講談会を開催することが告知された。今回の演目は海野十三の『蝿男』さらに、南湖氏と会員の山前譲氏の対談もセットされているとのこと。講談会後には宴会も予定されているようなので楽しみである。
例会恒例の古本オークションでは恩田陸『ねじの回転』(集英社)の500円が最高落札価格。イーデン・フィルポッツ『医者よ自分を癒せ』(HPB)が少し競って150円、山田風太郎『伊賀の聴恋器』(角川文庫)が50円という相変わらずの超格安相場だった。
次回の例会は2月9日(日)。ちょうど2002年度分のベストテン作品を選んでいる頃合いだと思うので、そういった話ができればと思います。それでは、また来月。
(廣澤吉泰)
2月例会(2月16日)
2月の関東例会は、2月9日(日)に「ニューヨークカフェ」渋谷パルコ横店の地下会議室「マイスペース」5号室で開催された。所用があって早めに退席したため、例会の模様についてはほとんどお伝えできないので例会でも伝えた各種の連絡事項と、全国大会のこと等をご報告することとする。
まずは発行が遅れている「SRマンスリー」1月号(326号)について。本来であれば会員の手元に届いていなければならない時季なのだが、これまでお願いしていた印刷所が廃業した等のトラブルが発生したため発行が遅れてしまったのである。その後、関係各位の努力により2月下旬には発送できることとなったので、今しばらくお待ち願えればと思う。なお、それにともない「SRベストテン」を発表する関東例会も、当初予定していた3月2日から16日に変更したのでご注意願いたい。また集計の投票(及びコメントの投稿)〆切も3月14日まで延長することとしたので1作でも多くの作品を読んで投票していただければと思う。
続いて今年は関東地区が幹事となる「全国大会」についてだが、こちらは次のような概要が固まった。
開催日 9月6日(土)〜7日(日)
場 所 群馬県薮塚温泉
薮塚温泉には“木枯し紋次郎”の記念館があることから、昨年亡くなった笹沢左保の追悼の意も込めてこの地で大会を開催することとした。その後幹事役の佐竹裕之氏は早手回しに薮塚本町の「ホテルふせじま」を一泊二食付1万3千円という条件で仮予約(30名分)したとのこと。詳細は決まり次第、このホームページや「SRマンスリー」誌上で連絡していくので注目していただきたい。
ところで、1月に関東例会が「ミステリカドカワ」から取材を受けたことはご存知かと思うが、早くも今月発売された「ミステリカドカワ」3月号にその記事が掲載されている。「ミステリな人々」と題した2頁の記事なので、書店で見掛けたらパラパラと読んでいただければ幸いである。この記事を通じて「SRの会」に興味を持ってくれる人が増えればと思う次第である。
あと2月の話題としては2月16日(日)に開催された「お江戸両国亭」での講談師・旭堂南湖氏の独演会であろうか。以前関東例会で講談会を開いた縁で、SR会員も何名か参加した。今回の演目は海野十三の『蝿男』。約45分で発端から大団円まで語り終えた。原作よりも笑えた。『蝿男』のような多少荒唐無稽な要素のある作品の方が講談には向いているのかもしれない。8月にも第2弾の講演会を企画しているとのことで楽しみである。
次回の例会は、先に述べたように3月16日(日)。いよいよ2002年度分のベストテン作品の発表である。 (文責:広沢吉泰)
3月例会報告(3月16日)
3月の関東例会は、3月16日(日)に「ニューヨークカフェ」渋谷パルコ横店の地下会議室「マイスペース」6号室で開催された。
今回の例会のメインは2002年度分のベストテン作品の発表である。2002年が終わってはや2ヶ月半が経過しての「ベストテン」である。一部会員から「SR遅すぎ!」と苦言を呈されたりもしたが、前回にも述べた印刷所の廃業という事情でリストを掲載した「マンスリー326号」の発行が遅れたための措置である。ご理解を願えればと思う。また、326号は誤植が多く、こちらも何人かの会員の方からお叱りをいただいた。原稿執筆者をはじめ会員各位にはお詫びを申し上げます。
さて、「ベストテン」であるが、今年も投票結果の集計は会員の横堀正敏氏にお願いした。むかしに比べれば表計算ソフトを使用することで楽になっているとはいえ、かなり大変な、しかも神経を使う作業である。また、その結果を例会の会場に持参するために、わざわざ熊谷から渋谷まで足を運んでいただいた。ほんとうにありがとうございました。
横堀氏の集計した内容を、東京例会の出席者が確認し、間違いがなければ「確定結果」として発表する、というのが例年の流れである。前日に開催された“MYSCON”から徹夜明けで流れてきた会員が多く眠い目をこすりながらの確認作業となったが、特段のミスも発見されず、無事結果発表のはこびとなった。その際に、リスト上は「短編集」に分類されていたものの、「連作短編集」とみなしたほうが適切と思われる作品があったため、「東京例会」出席者の判断で変更を行った。その作品が何なのか、そしてその変更の結果「ベストテン」の結果がどう変わったかについては4月に発行される「マンスリー327号」に掲載されるので、そちらを楽しみにお待ちいただきたい。
その後「SR大賞」の選考を経て(その結果も、次号マンスリーに掲載予定)古本オークションに。今回の出品は麻耶雄嵩の『まほろ市の殺人―秋』(祥伝社文庫)のみ。「『ベストテン』で高い人気を得れば高値をよぶのでは」という思惑で出品されたのだが、同作品はベスト20位にも入らなかったため、最低価格での落札となった(ちなみに『まほろ市の殺人』の4作の中では「秋」が最上位であった)
また、1月例会時に日時・場所が発表された「全国大会」について、幹事役の佐竹裕之氏より周辺の状況や交通の便などの説明があった。それによれば最寄り駅は東武桐生線の「藪塚」。特急停車駅なのでそちらを利用するもよし、各駅停車でのんびり行くもよしである(のんびりすぎるかもしれないが)。今回は周辺に古本屋はないので、古書収集を目的とされる向きには、周辺を渉猟してからの会場入りをお薦めしておく。
そういえば、先月の例会報告で「ミステリカドカワ」3月号に「SRの会」の記事が掲載されていることを述べたかと思うが、この記事を見て「SRの会」に入会を希望したいという方が現れた。雑誌の広告効果もすごいものだというのを実感した。
次回の例会は、4月20日(日)。「ベストテン」の結果と総評、「SR大賞」の先行結果が掲載された「マンスリー327号」の発送作業を行う。
(文責:広沢吉泰)
4月例会報告(4月20日)
4月の関東例会は、4月20日(日)に「ニューヨークカフェ」渋谷パルコ横店の地下会議室「マイスペース」6号室で開催された。
今回の例会では「2002年のベストテン」が掲載された「マンスリー327号」の発送作業を行った。実は、今回も編集作業が押しに押して、印刷所から「マンスリー」が届いたのが当日の午前中であった。例会に間に合わなければ、発送作業を一人で行わなければならなくなるので、戦々恐々としていたのだがギリギリのところでセーフだった。次回こそは余裕のあるスケジュールで編集作業をしたいものだと思う(と、これも毎回思うこと……)
発送作業を終えた後は、今年の全国大会の幹事を務める佐竹裕之氏から会場下見の報告があった。佐竹氏は貴重な休みを割いて、日帰りで薮塚温泉まで足を運んでくれたのだ。しかも、費用は自腹である。幹事の鏡である。会場の「ホテルふせじま」や笹沢左保記念館が併設されているテーマパーク「三日月村」のパンフレットや写真が回覧された。また、既に「三日月村」に行った経験のある会員もいたこともあって、そのあたりの話題に花が咲いた。そのため出席者は大会に行った気持ちになってしまったのだが、実際の開催は9月6〜7日である。申込等の詳しい要項は次号の「マンスリー328号」や、このホームページに掲載する予定なので、ご注目いただきたい(くれぐれも申込〆切に遅れないようにお願いします)
恒例の古本オークションには、1冊しか出品されなかった先月とは異なり数冊が出品された。しかもかなりの割合で新刊書が含まれている。こうなると相場は過熱する。一番の高値となったのは山田風太郎『十三の階段』(出版芸術社)である。落札価格は1000円であるが、定価を考えればこれでも安いものだろう。北森鴻『桜宵』(講談社)に400円の値がつくなど新刊書は概ね順当にさばけていった。また、全国大会で縁のある笹沢左保の作品も出品された。『真夜中の詩人』(中公文庫)である。誘拐物の傑作である。こちらもきちんと落札されていったのはうれしい限りであった。
最後に、例会初参加となった崎田さんが自己紹介をして例会はお開きとなった。崎田さんとは旭堂南湖氏の探偵講談の会等で顔を会わせていたため「新入会員」という意識がなく、最後にバタバタと紹介するような形になってしまったのは申し訳なかった(言い訳するわけではないが、それだけ崎田さんがメンバーの中に自然に溶け込んでいたのである)それで思い出したが、旭堂南湖氏の次回の東京公演は8月10日の予定である。8月例会はそれを外してセットするので、なるべくたくさんの会員が探偵講談会に足を向けていただければと思う。
次回の例会は5月11日(日)。会場は今月と同じ「ニューヨークカフェ」渋谷パルコ横店の地下会議室「マイスペース」6号室である。たくさんの会員の参加を期待する。
(文責:広沢吉泰)
5月例会報告(5月11日)
5月の関東例会は、5月11日(日)に「ニューヨークカフェ」渋谷パルコ横店の地下会議室「マイスペース」6号室で開催された。出席者は11名といつもに比べて少なかった。会員のテンションが低かったのも、GWの連休疲れのせいなのか、それとも前回の発送例会で燃え尽きてしまったのだろうか(まさか)全国大会の幹事・会場が例年になく早々と決まってしまったため、特に検討することがなかったのも原因であろうか。なににしても、とてもまったりとした雰囲気の例会であった。
そうはいいながらも、あれこれミステリの話はしていたのだが、筆者の脳髄が一番まったりだったようで、全く記憶に残っていない。唯一、記憶に残っているのは村上祐徳氏の話題である。ベテラン会員村上氏が例会に顔を見せなくなって何年もたつ。その村上氏が今月の17日に開催される「横溝正史シンポジウム」に登場するそうである。懐かしく思われた方は専修大学神田校舎(千代田区神田神保町3―8)まで足を運んでいただければと思う。会場は207号教室、時間は13時から17時である。
あとは古本オークションの結果だろうか。これは落札価格を記録したメモが残っていたのでなんとかここに書くことができる。これがなければと思うと誠にぞっとする。ちなみに、同じメモに会員が注文した飲物が残っている。アイスレモンティ 1つ、ソーダ水 2つ、ガラナジュース 2つ……(はっ、オレは一体何を書いているんだ……)
それはともかく、メモを見ると『二人の妻を持つ男』と『ハマースミスのうじ虫』が収録された『世界名作推理小説大系23』(東京創元社)が500円で落札されている。何かの間違いではないだろうか。恐ろしいことである。また、筆者をはじめ何名かのSR会員が参加している『越境する本格ミステリ』(扶桑社)が早速出品されたようだ。4月末に刊行されたムックである。この早さは驚きである。最低価格の100円での落札ではなかったようだ。まったりしたなかでも競ってくれた会員の優しさを感じる。
次回の例会は6月15日(日)。会場は今月と同じ「ニューヨークカフェ」渋谷パルコ横店の地下会議室「マイスペース」6号室である。次回は出席した人がまったりとしないような企画を考えなければ、と思う。
(文責:広沢吉泰)
6月例会報告(6月15日)
今月は例会を欠席したため、例会員の大川さんにレポートをお願いしました。急なお願いにもかかわらず御快諾いただいた大川さんには感謝の念にたえません。なお、「マンスリー328号」は現在鋭意編集中です。6月中には各会員のお手元に届くかと思いますのでよろしくお願いします。 (廣澤吉泰)
※
昨年入会した大川と申します。以後お見知りおきを。6月の関東例会は6月15日(日)、「ニューヨークカフェ」渋谷パルコ横店の地下会議室「マイスペース」6号室で開催されました。出席者は11名、会員の山本さんが久しぶりの(沢田さんの記憶では十年以上ぶりとの由)参加。
今回私が例会報告を書いているのは関東編集長の廣澤さんが欠席されたからなのですが先月の例会報告にある「次回は出席した人がまったりとしないような企画を考えなければ」の言に反して、古本オークションの出品もなく実にまったりとした例会となりました。とはいえミステリ話は途切れることもなく、東京創元社近日刊行の新雑誌の話題などなど。私は佐竹さん石井さんとミステリでない話ばかりしていたのですが。
その石井さんは佐竹さんが持参していたサントラ「黒猫/黒い足音」(黒い足音は、香山・啓助らの小説世界をイメージしたもの。昭和30年代に発売されていたレコードの復刻版)を見て例会そっちのけで渋谷の街に探しに行かれましたが、とうとう見つけられずに帰ってくるという一幕も。ご本人の報告を待ちたいところです。かくいう私も2次会からの帰り道にCDショップに寄って探してみたものの在庫しておらず、仕方ないので「火星の女」と「吸血鬼ゴケミドロ」のDVDを買って帰りました。
次回の例会は7月6日(日)、「ニュー(略)スペース」5号室。例会終了後には場所を改めて会員の山前譲さんの協会賞受賞記念会も開催されます。 (文責 大川正人)
7月例会報告(7月6日)
「マンスリー328号」は、そろそろ皆さんのお手元に届いている頃かと思う。関西編集号はここ2号ほど御難続きで、今回も印刷所絡みのトラブルで遅れてしまった。
本来の企画であった「パロディ特集」の原稿が集まらず、急遽「創元推理文庫 40周年記念特集」と銘打って、時宜を得ずして陽の目を見なかった原稿を世に出すこになった。創元推理文庫ファンの方々に、少し遅れてだが「40周年記念」を楽しんでいただければ幸いである。
さて、7月の関東例会は、7月6日(日)に「ニューヨークカフェ」渋谷パルコ横店の地下会議室「マイスペース」5号室で開催された。
今回は「安楽椅子探偵と笛吹家の一族」のビデオ上映会である。綾辻行人と有栖川有栖が原作者となる犯人当てTVドラマ「安楽椅子探偵シリーズ」もこれで第5弾を数えるに至った。第3作が全国ネットでの放映となった以外は、基本的には関西ローカルの放送(朝日放送・制作)であるため、番組の録画ビデオを入手するには関西在住の方々の手を煩わせることとなった。野村恒彦様、木越勝治様の心遣いに感謝をしたい。
ところで関東例会は通常、午後一時から開始されるのだが、その定刻に人が集まることは少ない。しかし、今回「午後一時三十分から上映開始」とうたったところ、上映開始時刻には出席者のうちのほとんどが集まっていたのはさすがであった。
ここで本来であれば「安楽椅子探偵と笛吹家の一族」を観た関東例会員がどのような論理を展開し、その推理が的中していたか否かを記するのが適当なのだろうが、なにぶんまだ当該ビデオを見ていない人も多かろうし、ネタバレ的な分析の記事をホームページ上で公開するのもどうかと思うので、推理のポイント(花瓶の指紋、死体がトランクにつめられていた理由)は鋭く突いていたものの、真犯人の指摘には至らなかったという結果を述べるに止めておこう。
また、例会終了後には「山前譲氏の推理作家協会賞受賞を祝う会」が開催された。
既にご案内のとおり、SRの会の会員で「マンスリー」誌上では「国内ミステリ」の新刊リストを担当されている山前譲氏が「評論その他の部門」で第56回日本推理作家協会賞を受賞した。受賞作は新保博久氏との共編著である『幻影の蔵』(東京書籍)である。今回は古くからの「SRの会」会員である有栖川有栖氏も『マレー鉄道の謎』(講談社ノベルス)で「長編及び連作短編集部門」受賞しており、SRの会としては非常にうれしい出来事となった。二人の受賞を祝う会は7月下旬にも開催されるのであるが、今回の宴はそれに先立って関東例会有志の発起により行われたものである。
午後六時から渋谷の中華料理店「井門」で開催された祝賀会には、山前氏とは縁の深い鮎川哲也未亡人をはじめ20名もの出席者が集まった。花束贈呈、記念品贈呈(『乱歩の世界』の60頁に掲載された山前さんの扮装写真を転写したペーパーウェイト)といったセレモニーが終わった後は、単なる飲み会となったのはいつもどおりのことである。
次回の例会は8月3日(日)、「ニューヨークカフェ」渋谷パルコ横店の地下会議室「マイスペース」5号室で午後1時から開催します。「SRマンスリー」発送例会の予定ですが、編集が間に合わず普通の例会になる可能性もあります(弱気……)
(文責 廣澤吉泰)
8月例会報告(8月3日)
「マンスリー329号」はお手元に届いただろうか? 328号が届いたすぐ翌月に329号が届いたので「マンスリーついに月刊化か?」と誤解された方もいるかもしれないがご心配なく(?)きちんと年6冊のペースは守っていきます(力説するようなことではないが)
その329号の表紙で告知したとおり「全国大会」は申込が8月25日(金)〆切となっている。参加希望者は遅れることのないようにお願いしたい。「マンスリー」の告知には間に合わなかったが「全国大会」のイベントとして「犯人当て推理小説」の朗読が加わった。作者は会員で現在北海道在住の小貫風樹氏。『本格推理03』に応募した短編3作が一挙掲載されたミステリ界期待の俊英である。過去の全国大会にも「犯人当てミステリ」を何度か提供しているので実績は充分である。
作者からのコメントに曰く、
「一応、読者に挑戦、というよりも、○○氏より面白いものを書くつもりでネタを練ってはいるところです」(○○には犯人当てミステリの名手の名が入ります。私信での引用なので伏字にしています)
とのことなので期待していただきたい。
さて、8月の関東例会は3日(日)に「ニューヨークカフェ」渋谷パルコ横店の地下会議室「マイスペース」5号室で開催された。
今回は先に述べた「マンスリー329号」の発送作業を行った。7月の例会報告を書いた時点ではこの日に発送作業ができるか不安だったのだが、各執筆者の努力により無事発行することができたのは慶賀の至りである。毎回毎回修羅場を潜り抜けて発行している自分をほめてやりたい気分になっていたのだが、そんな浮かれ気分は有栖川有栖の『マレー鉄道の謎』を読んで吹き飛んでしまった。こんな文章があったからだ。
崖っぷちに追い込まれると強さを発揮
するタフな俺、とでも自賛したいのか?
しょっちゅう崖っぷちに立たなきゃなら
ないのは、愚かだからさ。
火村が次々と犯行を重ねた犯人に突きつけたのがこの言葉なのだが、なんとなく自分のことを言われたような気がした。次こそは余裕を持って編集に臨みたいものだ(と、繰り言のように述べているのも「愚か」さゆえか)
それはともかくとして、発送作業を終えてからは「全国大会」の詳細を幹事の佐竹氏を中心に詰めました。申込者には詳しいスケジュールが佐竹氏から送られるのでお楽しみに。
その後は恒例の古本オークション。今回は新刊書を中心に出品がたくさんあり、非常に盛り上がった。筆者も競り役をやりながら2冊を落札(職権濫用?)そのうちの1冊は『学校殺人事件』の漫画である。ヒルトンの古典的なミステリを手塚プロが漫画化したもの。(手塚治虫ではなく「手塚プロ」というのがミソ。作画者は、はっとりかずおという人)十蘭研究家(?)のS氏と評論家のN氏が競っているところに、筆者が割り込んで最後はS氏と筆者の一騎打ちになったのだが、値段が七百円まであがったところで、いきなりS氏から「ちょっと本の状態を見せて」との申し入れが。そして、カバーを外し鋭い視線を浴びせると一言「おりた」。理由を聞いたら「貸本あがりだったから」とのことだった。貸本屋の本に特有な綴りの穴を嫌ったようで、改めて古本道の奥深さを痛感させられた。
次回の例会は9月14日(日)「ニューヨークカフェ」渋谷パルコ横店の地下会議室「マイスペース」5号室で午後1時から開催の予定。大会に来られなかった方も、例会にきていただければ、どんな模様だったかいろいろ聞けると思うので奮ってご参加願いたい。また、例会終了後に会員の深堀氏の著書刊行を祝う会を行う予定なので、深堀ファンの方々は著書を手に参加しましょう(詳細は別途連絡予定) (文責 廣澤吉泰)
9月例会報告(9月14日)
9月の関東例会は、9月14日(日)に「ニューヨークカフェ」渋谷パルコ横店の地下会議室「マイスペース」5号室で開催された。この日は会員の深堀骨氏の初著作である『アマチャ・ズルチャ 柴刈天神前風土記』(早川書房)が話題の中心となった。例会の場で行った深堀氏へのインタビューを掲載する。
次回の例会は、10月5日(日)。鮎川哲也先生を偲んで鎌倉で例会を開催する。
(ここまで文責:広沢吉泰)
*
『アマチャ・ズルチャ 柴刈天神前風土記』(早川書房)刊行記念
深堀 骨インタビュー
「不二家のネクターって、時々無性に飲みたくなるじゃん?」
インタビュアー ヘレン・ケラ一
――最近、何かいいことあった?
骨 何もない。あ、でも昨夜、仲間由紀恵とつきあってる夢見た。
――いいじゃん、仲間由紀恵だったら。
骨 そりゃね、もうお互いに気があるのに、会うと意地張ってケンカしてるとかいう、ベタベタのラブコメでさ。
――羨ましいじゃん。
骨 でも夢だからね。楽しい夢ほど醒めた時は索漠とした気分になるよ。だってさ、実際に仲間由紀恵とつきあえる訳ないじゃん。がっくり来るよもう。かえって、悪夢から醒めた時の安堵感ったらないもんね。
――そりゃそうだ。
骨 フェリーニの「カビリアの夜」って映画あるじゃん。あの中で、年中男にだまされてばかりの主人公の娼婦が寄席で催眠術にかけられるシーンがあってさ。楽しい夢を見せられて客の笑いものにさせられるのよ。夢から醒めたらみんな笑っててさ。それまで楽しい夢を見てたのがいきなりぶちこわされる。あれは残酷だよな。
――じゃあ、他には何か?
骨 そうねー。あ、DVDプレイヤー買ったな。去年の夏頃さ、「淋しいのはお前だけじゃない」ってドラマのDVDが出てるのを知って買ったのよ。俺、あのドラマ大好きでさ。市川森一が脚本書いてて、西田敏行がサラ金の取り立て屋やったやつ。あれだけはどうしてもまた見たくて買ったのが去年の夏。で、プレイヤー買ったのが今年の夏。
――随分遅いじゃん。
骨 一事が万事そうなのよ、俺は。あと持ってるDVDソフトは「盲目ガンマン」と「荒野のドラゴン」と…
――何それ。
骨 マカロニ・ウェスタンだよ。まだ見てないけど。それからこの前、「極道恐怖大劇場・牛頭」を買った。三池崇史の新作。もうスゲエ面白い。石橋蓮司がスゲエ面白い顔して、それから火野正平が顔半分白く塗って…
――ハイハイ。もういいから。
骨 あと「すいか」のDVDボックスが出るらしいから、これは買うことが決まってる。ヴィデオで全部録画したけど、でも買う。そういう宿命になってる。視聴率的にはどうだったか知らんが、近来稀に見る面白いドラマだったな。あれを書いた木皿泉って脚本家はどういうひとか知らないけど、本当に才能があるね。ひょっとしたら、テレビドラマの脚本家としては主演してた小林聡美の旦那よりも上かも知れない。
――言いたいことはそれで終わりか。よし。じゃ、とってつけたようだけど、初の著書刊行おめでとさん。
骨 ありがとさん。
――これも最初の小説が活字になってから…
骨 丁度丸11年かかってる。でも1年に1作書くか書かないかってペースだからな。本が出ただけでもめっけもんだと思ってますよ。
――この本が捧げられてる榎本って、どういうひと?
骨 大学以来の友人。初対面は互いに凄く印象が悪くて。こっちはあいつのことを態度のデカイ奴だと思ってたし、向うは後で聞いたら俺のことホモだと思ってたらしい。
――何でまた。
骨 俺さ、何か他人をじっと見る癖があるらしいのな。で、向うがこっちに気づくと目を逸らすっていう。典型的な挙動不審な奴だったってこと。
――過去形じゃなくて、今でも挙動不審だろ。
骨 でも、偶然に両方ともモンティ・パイソンが好きだってことが分かって、以来今までずっと友達付き合いが続いてる。今回も本は送ったんだけど、他に自分で金払って買ったり、友人に勧めたりしてくれてるみたい。男気だよね。「大脱走」に出てくる奴らみたく、男気がある、そんな男。でも榎本は最後チャッカリ逃げちゃうジェームズ・コバーンが好きなんだって言ってたな。俺は当然ジェームズ・ガーナーの調達屋とドナルド・プレザンスの偽造屋のコンビが好きさ。でも、チャールズ・ブロンソンが81歳だったてのはちょっと驚いたけどな。
――ブロンソンもいいけど、本に話を戻して。土橋とし子さんのイラストがいいね。
骨 いいよねー。土橋さんは最初に俺の小説が活字になった時からずっと挿し絵を描いてもらってます。いつか、いざ小説が出来て、土橋さんに挿絵を頼もうとしたら、引越しちゃってて住所不明になって、危うく載らないことになりそうなことがあったけど、その時も間一髪で間に合ったことがあった。だから、本の装丁も当然土橋さんに頼みました。マッチ箱を想定したあのカバーは、土橋さんがああいう古いマッチのコレクターだったからなのね。あと、町を行く登場人物達の絵を現代と昔の両方描いてもらったのは塩澤編集長のアイデアで、中のカットは最初は雑誌の絵をそのまま使おうか、というのを、土橋さんの方から描き下ろしにしようって言ってくれたそうで。「イカったネ」の絵は嬉しかったね。
――塩澤編集長にも「後書き、の、ようなもの」で謝辞が捧げられてたけど。
骨 そりゃそうだよ。今回初めて本を出して分かったけど、実際に本を作り上げるのは作家じゃなくて編集者だよ。
――お前さんにしちゃ珍しく謙虚じゃん。
骨 だってさ、黒子に徹して本を出すための作業をこなしていく編集者の「力」というものは本当に凄いんだぜ。俺にはあんなしんどいこと出来ない。しかも表に顔が出る訳でもないんだし。感服しましたね。本作りの際にも色々とアイデアを出してくるしね。ひとつひとつの作品に小見出しをつけようって言ったのも編集長。どういう小見出しにするかは俺が決めたけどね。あと、ゲラを再読して「ここがおかしい」とか「こうした方がいい」とかそりゃもうくどいほど言ってくるのよ。こっちは、いい加減くたびれて「もういいよ」って感じなんだけど。あれこれとチェックしてくるので納得できる部分は直し、そのままにして欲しい部分は残してという感じだったね。最終的にはお互いに何だか分からなくなっちゃったところもあってさ、「闇鍋奉行」の中で右手に持った箸で右耳を刺す、という描写があるんだけど、これがおかしい、と。右手に持った箸では右耳は刺せない、と。いや、違うよ、こっちが右手に持った箸で刺すんだから当然刺される耳は右だろう、いや左じゃないか、とか延々と1時間ほど電話で押し問答した。いや、右か左かだけで1時間喋った訳じゃないんだけど。あれ、こう言ってる内にも何だか分からなくなってきたぞ。
――直接会って身振りで見せれば、すぐ済んだじゃないの。
骨 そんな訳にはいかない。だってその日は京橋のフィルムセンターに市川崑の映画を見に行く予定だったんだから。
――何だよ、それ。ひでえ理由だな。人がお前の本出すために頑張ってる時に、お前は市川崑かよ。
骨 じゃあ、この場を借りて謝っとこう。塩澤編集長、ごめんなさい。
――今更遅いって。
骨 結局、プロ意識がないってことなのかな。仕事で小説書いてる意識がないから。会社の仕事でパソコンを打ちまくってた時に、夢で巨大なパソコンが出てきてさ。パイプオルガンの奏者みたく、ちっぽけな俺がそれを地獄の苦行みたく打つの。ありゃマジで嫌な夢だったなー。
――仲間由紀恵とは違うもんな。で、何が言いたいのさ。
骨 だからさ、でも小説を書く悪夢は見ないってことさ。専業作家だったらそういう悪夢見るだろうけど。
――まあな。ところで、帯でスタージョンやラファティにたとえられてたけど。
骨 ありゃ驚いた。俺も編集長に最初の本だし「とにかくハッタリかましてください」って言ったら想像以上のハッタリだったんで正直ビビった。俺が文芸復興の最後の希望にされちまったよーん、って。でも編集長にはあれだけの大風呂敷を広げてくれた点でも感謝してる。ただ、俺とスタージョンやラファティとは何の共通点もないけどね。
――んなこと、言われなくたって分かってるよ。ただ、食えなさそうなところだけは似てるかも。
骨 大きなお世話だ。まあ、スタージョンもSFだけでは食えないからクイーンの『盤面の敵』の代作やったり、『原子力潜水艦シービュー号』のノベライズを書いたりしてたんだろうな。ラファティも後期の長編が出版できないとか色々苦労されておられたようだし。専業作家にはなるもんじゃないな。
――あと、どっかの評では夢野久作にたとえられてたよな。
骨 ありゃトンチンカンな文章だったな。俺のどこが夢野久作なのさ。あんなに顔長くないぜ。
――顔の問題じゃないだろ。確か「アマチャ・ズルチャ」って題名から「ドグラ・マグラ」を意識してるとかいう…
骨 そっからして全然違うもんな。あの題名は本を出す時のためにって前から考えてた題名でさ。昔、谷啓が出てた「ロートのあまちゃづる茶」のCMで…
――わかんねえよ。谷啓の「ロートのあまちゃづる茶」のCMなんて言われたって。
骨 だからさ、まず「アマチャ」って植物がある訳よ。
――花まつりの時に仏さんにかけるやつだろ。
骨 そう。「アマチャ」はアジサイの仲間で一応木なんだよな。ところが一方で「アマチャヅル」って植物がある訳よ。これは葉っぱから出来るお茶が甘茶に味が似てるからついた名前なんだけど、「アマチャ」とは全然別種の植物で「ツル」っていう名前でも分かるように草なんだよな。だから「アマチャヅル」から作ったお茶が「アマチャヅルチャ」になるのは当たり前って言えば当たり前なんだけど、谷啓がCMで「ロートのあまちゃづる茶」とか叫ぶと…
――叫んでたのか、谷啓は。「ガチョーン、ロートのあまちゃづる茶!」とか。
骨 いや、叫んではいなかったと思うけど。
――どっちだよ。
骨 まあとにかく、そう言うと俺のお袋が「キモイ」とか言って…
――嘘こけ。その年で「キモイ」とか言わねえって。
骨 つまりは「気持ち悪い」と言うんだよ。「アマチャヅルチャ」って語感が。「ズルズルしてる感じ」なんだってさ。つまり、「アマチャ」で一旦切れそうなのに、その後「ヅルチャ」って続く感じが変なんだろうな。それが俺の頭の中でずーっと引っかかってて。
――で、本のタイトルにしようと。
骨 最初、編集長は仮題で「柴刈天神前サーガ」っていうのを考えてたみたいで。あ、間違って書いてるヤツが多いから、この際言っとくけど、「芝刈」じゃなくて「柴刈」だからね。芝生じゃなくて、お爺さんが山へ刈りに行く方の柴だから。柴俊夫の柴だから。
――それで満足か。ほんじゃ、話を続けて。
骨 それを副題として、正式な題名をどうしようってことになって。で、俺が出した案が2つ。「フランケンシュタイン対組織暴力」と「アマチャ・ズルチャ」。
――「フランケンシュタイン対組織暴力」はないだろ。
骨 編集長も「ニュートラルじゃない」っていう理由でダメだと。
――「ニュートラル」とかいう以前の問題だと思うがな。
骨 で、「アマチャ・ズルチャ」になったんだけど、編集長は最初電話でしか聞いてないから、よく意味が分からなかったんじゃないかな。で、実際に打ち合わせをして、これこれこうですと「アマチャ・ズルチャ」って紙に書いてみせて、「ドグラ・マグラ」みたいな字面でしょうっていったら、編集長も「これでいきましょう」と。
――じゃあやっぱ「ドグラ・マグラ」意識してんじゃねえか。
骨 タイトルだけだよ。それっぽくっていいでしょってだけ。それと「アマチャ・ズルチャ」で「ス」に濁点ですから、「ツ」に濁点じゃないっすからと、その点も強調した。
――そういうトコにはお前さんこだわるよな。「寿司ゼリー」じゃなくちゃダメだ、「ゼリー寿司」じゃダメだとか。
骨 「寿司ゼリー」の方が響きがまずそうじゃない。それが実際には旨いってのがポイントなんだから。
――あ、そう。そりゃそうと「隠密行動」に三重渦状紋のような木目を持つ角材が出てくるけど、あれは乱歩の『悪魔の紋章』だっけ。
骨 そう。
――作中では「ポン羅博士」の「おせじ君」となってたけど、何故ポン羅博士で、おまけにおせじ君なのさ?
骨 あれは俺のオリジナルじゃなくてね。俺の友人で新田五郎って男から聞いた話なんだけど…
――ちょっと待て。皆まで言うな。新田が昔同級生と江戸川乱歩の話をしてたら、その同級生が乱歩の筆名の由来について「乱歩はエドガー・アラン・ポーのもじりだといわれているが違う。”ぽんら”を引っ繰り返して乱歩になったんだ」と言った。で「ぽんらって何だ?」と尋くと「それは謎だ」と。
骨 あれ、よく知ってるな。
――当たり前だ。それは前に俺が書いた文章だ。お前、パクったな。
骨 パクったも何も、どっちにしたってオリジナルじゃないんだし、一緒じゃん。
で、「おせじ君」も新田から聞いた話でさ。昔新田がテレビで映画の「駅前シリーズ」を見てたら、フランキー堺がマンガ家の役で、編集者から「新作を書いてくださいよ」って言われて「じゃあ、君はおせじばかり言ってるから新作は『おせじ君』にしよう」っていうシーンがあって、何ともいかがなものかって気がした、っていうのが由来。
――「駅前シリーズ」と乱歩とどういう関係があんのさ。
骨 関係なんかないよ。何となくだよ。関係ない「駅前シリーズ」と乱歩をドッキングさせるのが俺の流儀さ。ま、新田は凄い男ですよ。あいつの話のお陰で随分とインスピレーションが湧きましたよ。
――じゃあ「ポン羅博士」の著作で「じめじめ牧場」という作品も新田がらみなのか?
骨 あれは違う。戦前のプロレタリア系の作家で佐左木俊郎っていうのがいて、「恐怖城」という探偵小説を書いてるんだけど、題名が「恐怖城」だろ、ゴシック・ロマンスみたいなのを期待するじゃない。そしたらこれが牧場を舞台に陰湿な人間関係が展開されるだけの話でさ。俺は怒って「『恐怖』もないし『城』もない、こいつァ『恐怖城』じゃなくて『じめじめ牧場』だ」って言ったの。で、自分で言ってから「じめじめ牧場」は案外イケルかもと思って、あそこで使った。
――実に適当な創作態度が伺えるな。
骨 でも今の昼のドラマの原作に向いてるかも。
――「じめじめ牧場」がか?
骨 いや「恐怖城」が。「真珠夫人」がドラマになったんだったら「恐怖城」だってイケるべ。「嵐が丘」みたいな感じでさ。
――適当に言ってるだろ。
骨 もちろん。俺、テレビドラマのプロデューサーでも何でもないし。
――まあいいや。ちゃんとした質問をしてやる。ええと、乱歩のネタが多いのは好きだからか?
骨 いや、嫌いじゃないけど、別に特別好きな訳じゃない。ただ、乱歩の小説って良くも悪くも、バカバカしいところも含めていじりやすいんだよな。「飛び小母さん」も皆気づいてないかも知れないけど、「押絵と旅する男」が下敷きになってるし。
――じゃあ、いちばん好きな作家は?
骨 そんな、好きな作家なんていっぱいい過ぎてキリがないさ。ええと、日本では日影丈吉、山田風太郎、久生十蘭、吉田健一、戸川昌子、宇能鴻一郎等等、海外ではチェスタトン、グレアム・グリーン、イーヴリン・ウォー、ミュリエル・スパーク…
――みんなカトリックの作家じゃねえか。お前さん、カトリックか。
骨 な訳ないだろ。だからってプロテスタントでもないけどな。ヘヘ、「私はプロテスタントだ、イボ付きコンドームをくれ」ってか。
――何だそれ。
骨 お前、「ミーニング・オブ・ライフ」を見てないんだな。海外では他にもエーリッヒ・ケストナーとかカレル・チャペックとかいっぱい好きな作家がいるけど。あと、P・G・ウッドハウスなんて日本では少ししか読めないけど、英国では国民的な文豪なんだからもっといっぱい訳してほしい。ただ、この1冊ってことで言えば、漱石の『吾輩は猫である』だよね。俺にとってこれを超える小説はない。SF系のレビュアーで冬樹蛉さんて人がかなり俺の小説をちゃんと読んでくれてるんだけど、「文体が漱石そっくりだ」って書いてて、ああやっぱり分かってる人は分かってらっしゃるなーと思った。
――漱石の魅力とは何ぞや?
骨 漱石は何と言っても文章がいい。独特のリズムがある。ユーモアがある。そして言語感覚が突き抜けてるんだよね。あれだけの突き抜け方は今の作家でもそうはいないよ。だって『坊っちゃん』に野だいこって出てくるじゃない。あれ、実はちゃんと「野だいこ」って書かれてるのは最初の2回くらいで、後は「野だ」って略して書いてるんだよな。「野だいこ」を「野だ」って略すのは物凄いよ。『吾輩は猫である』
でもケット―毛布のことだけど―の毛が抜けて「ット」の状態になってる、なんて文章が出てくるし、苦沙弥先生の家の女中のおさんの顔を形容して「水気に悩む六角時計」とか「多角性のおさん」とか書いたり、とにかく凄い。だから俺の文章の師匠は漱石です。
――師匠だって言うのは勝手だからな。で、「バフ熱」から「闇鍋奉行」まで作品世界が「柴刈天神駅前」や周辺の「腰巻弁天」等で完結してて、登場人物も同じ人物が何度かで てくる等、それぞれの世界が重なってるけど、これは雑誌発表の時点から、そういう感じだったの?
骨 この本には収録されてないけど、デビュー作の「蚯蚓、赤ん坊、あるいは砂糖水の沼」の後に書いた「時雨蛤日記」っていう作品の頃から意識的にそういう方法はやってた。古いことろではバルザック、日本では手塚治虫が使う手法だけど、俺の場合、直接的な影響は泡坂妻夫ですね。
――ふん。じゃあ創作のヒントなんぞを教えて下さい。
骨 よくあるパターンは「まず題名ありき」というやつね。面白そうな題名を思いつくと、それに合わせて作品を考えていくケース。典型的なのが「トップレス獅子舞考」ね。「トップレス」と「獅子舞」を組み合わせたらどうなるかという素朴な疑問から始まって…。
――素朴じゃねえよ。んなこと考えねえよ普通。
骨 「闇鍋奉行」もそう。鍋奉行がどうしたこうしたという会話を皆でしてる時に、俺が何かを聞き間違えて「闇鍋奉行?」って言った訳。言ってから「あ、これいいじゃん」と。元々時代劇は好きだし、無責任シリーズでも釣りバカ日誌でもお遊びで必ず時代劇の回とかあるでしょ。それこそ泡坂妻夫にも「亜愛一郎シリーズ」の時代劇版で「亜智一郎の恐慌」があったりとか。時代劇はいいよね。この場合、時代小説というよりは時代劇。もうお約束の宝庫だからいろんなお遊びが出来る。元々「天下御免」とか「浮浪雲」とか、ああいう現代劇仕立ての時代劇が好きだから。勿論「必殺シリーズ」もね。
――他に創作の動機とかあるのかい。
骨 俺の場合、ストーリーから考えることはまずないね。こういう会話を書きたいとか、こういう言い回しを書きたいとか、こういうギャグを書きたいとか、そういうところから始まることが多い。普通のエンターテインメント系の人は違うらしいことに最近ようやく気がついたけど。まあ、ストーリー面が弱いからって負け惜しみで言う訳でもないけど、とにかく文章を面白く、テンポ良く書く、それが俺にとってはいちばん大事なことで、そこにギャグやら何やら思いついたアイデアをどんどんぶち込んでいく。そうすると、登場人物達が勝手に動き出してくるし、話も適当に転がっていく。それで、前にぶち込んであったギャグとかが後で伏線になったりして。
――それは伏線とは言わんだろ。無理やりに伏線みたくしちゃってんだろ。
骨 まあそうだけど。ただ、最初の小説を書いた時に思ったのが、日本のエンターテインメント系の小説って、下手するとどれもこれも文章が同じじゃないかっていう不満があったのよ。だから、ストーリーとかは二の次にして、俺なりの文章を作るというところから始めた訳。で、出来上がったものが「蚯蚓、赤ん坊、あるいは砂糖水の沼」だったんだけど、これが果して面白いのかつまらないのか、いやそれ以前に「これは一体何なのか」ってことが自分でも分からなかったのよ。まあ、都筑道夫先生の小説が大好きだったから、都筑先生が審査員をしてるって理由で、元々「ハヤカワ・ミステリ・コンテスト」に応募するつもりで書いた原稿なんだけどね。で、よく分からないけど応募したら都筑先生が結構面白がってくれて、小池真理子先生にも推してもらったから佳作になったんだけど、ならなかったらこんなこと続けてたかどうか。
結局、バブルが崩壊してスポンサーがつかなくなっちゃったってのが理由で、俺の代でこのコンテストも終わりになっちゃたし。今考えりゃ間一髪だったんだよな。
――はーん。で、自分でも何なのか分からない作風に自信をつけたと。
骨 そう。この調子でやっていきゃいいんだなって思った。そう言えば、このコンテストがあることを教えてくれた先輩、今どうしてるかなー。会いたいなー、後藤先輩。
――後藤先輩、こいつはこのように申しております。この文章を見たら連絡してやってください。ところで長編は書かないのか。
骨 俺に長編が書けるのかねー。
――質問してるのはこっちなんだよ。
骨 うーん、書いたことないから分からないんだけど、もし書くとしたら、それこそハメットの『血の収穫』みたいな、それこそ使い古されて1つの典型となったような、シンプルなストーリーをベースに書いてみたいなーって欲望はあるんだよね。ひとつの街に風来坊がやってきて、地元の2つの暴力組織をかみ合わせるというやつ。もうそれこそ、「用心棒」や『おれの血は他人の血』、それに『山猫の夏』とか例を挙げればキリがないでしょ。あ、山本周五郎の『町奉行日記』もそれに近いか。だから、そういった昔からの典型的なお話の中にどれだけ俺なりのプラス・アルファを盛り込めるか、細部でどれだけ凝れるか、そういうのはやってみたいんだよ。それはもう昔からの念願なんだ けど、何回も書こうとしては失敗してるんだよね。まあ、変に力まずにまた挑戦してみようかなーとは思ってるんだけどね。
――そんで、次の本はいつ頃になるの。
骨 『アマチャ・ズルチャ』っていう1冊の本を出すのが当座の目標だったからね。さっきの榎本にも本を出したら必ず献辞をするよって約束して、それで11年だからねー。何だか今、カラッポなのよ。
――弱いヤツだ。
骨 まあ、プロならここで奮起して次々と作品を物していくんだけれど、やっぱ俺はそこら辺がプロじゃないんだろうなー。今、小説なんて全然書いてないしね。活字デビューから『アマチャ・ズルチャ』が出るまで11年だから、次の本は22年先じゃないか。
――おいおい、お前幾つだよ。50過ぎだろうが。
骨 で、3冊目は更に33年先と。
――お前その頃は90過ぎだぜ。いや、とっくに死んでるかもな。
骨 でも、野上弥生子よりは若いぜ。可能性としてはない訳じゃないさ。そういうのがひとりくらいいたっていいじゃん。
――まあ勝手にしな。ところで、このインタビューの題名の「不二家のネクターって、時々無性に飲みたくなるじゃん?」て何なんだよ。ははあ、自分が書く小説が、不二家のネクターみたいに時々無性に読みたくなるような、そんな小説であってほしいって意味なんだな?
骨 いや、単純に不二家のネクターが今飲みたかっただけのこと。
――はい、お粗末。
骨 あとサッポロ一番みそラーメン、あれも時々無性に食いたくなるな。うん。
以上
10月例会報告(10月5日)
10月5日、気持ちよい秋晴れの鎌倉は観光客で賑わっている。
そんな人混みを離れたマンションの一室に、我々は故・鮎川哲也氏の奥様、古屋浩
子 さんを訪れた。
「あなた達、おつまみは買ってきたの、ビールは用意してあるけど」
とても気さくな古屋さんは、既にたくさんの椅子を並べて待って下さっていた。
明るいリビングには鮎川氏の写真が何葉も飾られており、その中にはポメラニアンらしき犬を抱いてほほえむ姿もあった。鮎川氏の遺した膨大な数の本、ビデオ、レコードは既に殆ど整理されており、その苦労話なども皆、頷きながら拝聴する。でも私、段ボール500箱って、本当のところは想像つきません。
ところで古屋さんはご存じのようにSRの古くからの同人であり、芦川澄子の筆名で「宝石」誌上にも探偵小説を発表しておられた。その事に触れられるとたいへん恥ずかしそうに、また謙遜された様子をされるのだが、受賞の頃の色々なエピソードはあっけらかんと、とても楽しそうに語ってくださるのだった。
ともすると普段の例会よろしく、我々のお喋りはもつれるように脱線しかけてゆくが、話はつれづれにまた、鮎川氏の思い出へと移ってゆく。晩年、本格ミステリの新人発掘に情熱を傾けておられたことは、よく知られるところだ。光文社の「本格推理」応募原稿には、身体の許す限りすべて必ずご自分で目を通されていたというが、
それは古屋さんの口から語られることでより一層心に迫るものがあった。
――あれは、とても一生懸命だったわねえ、ほんとうに。
また、ご自分からすすんで鮎川氏との長い年月を語ってくださる言葉は、明るいなかにも時折しんみりとした調子を帯びる。
――いい人だったのよ、ひとの悪口は決して言わない、いい人だった、私にはもったいないくらい――
現在お住まいの、この部屋で、お二人の時間を過ごされることはついになかったという。
マンションながら庭を備え、部屋からは山も眺められるここならば、きっと楽しく過ごしてもらえたと思うのにそれが残念で、と古屋さんは話された。ついで、何度かこう言われた。
――しょうがないわねえ、こればっかりは。
亡き人を惜しむ慨嘆の言葉でありながら、わたしは、遠い星から降るようなほんのりと暖かい光を受ける思いでそれを聞いた。
帰り道、昨年「鮎川先生お別れの会」も開かれた、ゆかりの中華料理店で夕食を摂った。
古屋さん、美しい楽しい時間をありがとうございました。心より御礼申し上げます。 (文責:阿部)
11月例会報告(11月2日)
もうほとんど12月、という状況だが、11月の例会報告を遅れ馳せながらアップする。
さて、11月の関東例会は2日(日)に「ニューヨークカフェ」渋谷パルコ横店の地下会議室「マイスペース」5号室で開催された。
今回は、会誌「SRマンスリー」での連載企画〈○○の10冊〉について議論を行った。出席者は9名というこじんまりとした集まりだったのだが、企画に関して、あれこれと突っ込んだ話し合いがなされて、かなり白熱したものとなった。〈○○の10冊〉という企画は、9月の全国大会会場にて、大会開催に先立って行なわれた「世話人会」席上で発案されたものである。最近、入会しても一年で退会する方が多いことから、会員が選定したブックガイドを「SRマンスリー」に連載して、会の雰囲気を理解して頂こう(そして定着してもらおう)というのがこの企画の狙いである。
その後、当方と田村会長・谷口関西編集長とで企画の骨格に関して打合せを行い、
(1) 10作を選定したベストテン形式を基本とする。
(2) 「SRマンスリー」の見開き2頁の分量とする。
(3) 04年新年号(関西編集号)から実施。
といった基本線が固まった。詳細は東西の例会で詰めることとなったため、関東地区では11月の例会で企画について議論することとなったのである。
例会では、主にどういったテーマで10冊を選ぶか、そして関東編集となる04年3月号のテーマを何にするか(谷口編集長は新年号用のテーマとして「誘拐」を希望)を検討した。
10冊を選ぶテーマ案として挙がったものは次のように分類された。
(1) ジャンル別
例:誘拐、密室、アリバイ崩し、歴史物(時代物)、警察小説、
スパイ小説、ユーモア物、捕物帖、法廷物 など
(2) 探偵のベストテン
例:エラリー・クイーン、キリオン・スレイ、
ホームズの贋作 など
(3)作家のベストテン
例:西村京太郎、A・クリスティ など
(4) 舞台別
例:孤島、嵐の山荘、鍾乳洞 など
(5) その他
例:処女作、合作、乱歩賞、乱歩賞落選作、
SRの過去のベストテン作の再評価など
そして、関東編集号でのテーマとしては、「鮎川哲也の10作」が選定された。鮎川哲也を選んだのは、今月の24日にSRの会の有志が鮎川未亡人宅を訪問するため、その記事も含めて小特集的な扱いができる、という理由からである。そして、その場で取り上げる10冊が選定され、担当者も例会出席者から決定された。どういった内容になるか、お楽しみである。
また当日、会員の沢田氏から第34回バウチャーコンの参加報告があった。同氏によると、米国にも日本のミステリを紹介しているファンジンがあるそうだ。欧米のミステリがどういった形で日本に受容されているか、あるいは日本ではどういったミステリが流行しているか、といった点を紹介している(沢田氏が「HMM」に発表したバウチャーコン・レポートを無断転載していたりして、その点はちょっと困ったちゃんだが……)。ちなみに、その人物が日本に興味をもったのは宮崎駿の「となりのトトロ」がきっかけだということで、改めて“ジャパニメーション”の影響力の大きさを感じさせられた。
次回は12月14日(日)「ニューヨークカフェ」渋谷パルコ横店の地下会議室「マイスペース」5号室で午後1時から開催。「SRマンスリー331号」の発送作業と連続企画についての打合せを行う予定。例会終了後、今年度最後ということで忘年会も企画している。既に阿部さんから案内が送られているので、参加者は早めに連絡を。(文責 廣澤吉泰)
12月例会報告(12月14日)
12月のSRの関東例会は12月14日(日)の13時から17時にかけて、「ルノワール」の渋谷パルコ横店の「マイスペース」5号会議室で開催された。「マンスリー331号」の発送が、今月の例会の主な目的であったのだが、11月27日に都筑道夫氏が亡くなったこともあり、はからずも同氏を偲ぶ会にもなった。
もちろん「毒舌のSR」なので「追悼」といってもありきたりの手向けの言葉など出てこない。いろいろと意見が出たが代表的なものとして、以下の言葉を挙げておく。
「『黄色い部屋−』以降は、パッコーンてのがなくなった」
若干補足をしておくと、『黄色い部屋はいかに改装されたか』は良い評論だったが、作家としての都筑がそれにしばられてしまい、初期作品(『誘拐作戦』『やぶにらみの時計』『三重露出』など)のような突き抜けたものが書けなくなってしまった、という意図の発言である。
ちなみに「パッコーン」云々を口にしたのは、今年著書を上梓した会員F氏である。同氏を世に送り出したのは、都筑道夫氏が審査員を務めた新人賞だったことを考えると、何か因縁めいたものを感じる。都筑氏も草葉の陰で苦笑しているのではあるまいか。
そんな議論をしながらも、手も動かして発送作業を済ませる例会員の手際のよさは、まさに手練の技である。作業に遅れてきた会員3名が、恒例の投函の刑と相成った。ちなみに、投函の刑とは約300通の封書を最寄のポストまで運んで投函する作業のこと。渋谷の人通りのなかで大量の郵便物をポストに突っ込む恥ずかしさは、実に辛い。できればやらずに済ませたいものである。
2004年1月の例会は12日(月)成人の日の休日である。関西の新年会が10日(土)開催ということもあって、希望者は両方に参加できるように、ということで日程を設定した。会場は「ルノワール」の渋谷パルコ横店の「マイスペース」5号会議室で、時間は13時からである。新年初の例会なので、ふるっての参加を期待します。
(文責・廣澤)