SRの会 例会報告

2006年 関東例会
1月例会報告(1月15日)
 1月の例会は1月15日(日)に「ニューヨークカフェ」渋谷パルコ横店の地下会議室「マイスペース」6号室で開催された。出席者は8名であった。
 この日に「マンスリー」11月号が完成しておれば、発送例会となったのだろうが、印刷所に入稿したのが年明けとなってしまったため、残念ながらこの日には間に合わなかった。
 最終的に発送作業は、編集長が自分一人で行うことになったようである(などと他人事のように書いているが作業したのは僕です)発送作業当日は大雪であった。投函できるかどうか心配だったが、夜になって雪がやんだため近くのポストに赴いた。夜間にポストに大量の郵便物を突っ込んでいる様子というのは、ちょっと不審だったかもしれない。
 さて、1月例会だがこの日は例会後に船堀に移動して推理劇を見るという企画であったため13時から16時という変則な時間での開催であった。
 船堀、という馴染のない地名に戸惑いつつ、例会員で見に行くことになった劇とは、劇団フーダニットが上演する「真理試験―江戸川乱歩に捧げる」であった。
 劇団フーダニットは、1997年7月に設立、江戸川区という地域に根ざしたミステリ劇専門劇団として、江戸川区に特化して公演を行っている。プレ・旗揚げ公演の『回転扉』以来数々のミステリ劇を上演しているが、その中には若竹七海のオリジナル脚本による「毒を入れないで」(01年8月)、「死がいちばんの贈り物」(03年7月)などもある。
 今回の作品「真理試験―江戸川乱歩に捧げる」もそうしたオリジナル作品の一つで、脚本は『アリスの国の殺人』や『合本・青春殺人事件』などを生み出した辻真先である。辻脚本は、03年の新春公演の「ご霊前」に続く2回目の登場、また「真理試験」は昨年11月に江戸川乱歩生誕の地、名張での上演に続く2度目の公演となる。
 会場の「タワーホール船堀」は都営新宿線の船堀の駅前。受付では、劇団フーダニットの広報担当の松坂健氏の出迎えを受ける(松坂氏は、SRの会員でもある)
 パンフレットとともに配られた、名張名物の「二銭銅貨煎餅」を食べながら待つうちに舞台の幕があがる(他の会員の名誉のために述べておくと、そうした無作法な真似をしていたのは私だけであった)
          *
 飛行機の爆音のような効果音
 戦争中、という時代設定なのだろうか?
 取調室を思わせる場面に女性が一人入ってくる。
 そこに警官が女性被疑者を連れて入場。警官のセリフからすると、最初の女性は「蕗谷真理予審判事」らしい。
(蕗谷――は乱歩の「心理試験」の犯人の名前だ。それにしても、戦前には女性の予審判事はいなかったはずだが……)
 と、いった筆者の疑念をよそに舞台上で蕗谷判事は乱歩の作品を援用しながらズバズバと事件を解決していくのだが、彼女がとりあげる事件が発生したのは、全て「十月十日」いったいこの日に何があったというのだろうか……。
          *
 まぁ、推理劇なのでこれ以上ストーリーを紹介することはネタバレになって、再演されたときの興を削いでしまうので、ここまで。ただ、乱歩が得意としたあるトリックを織り込んだもので「江戸川乱歩に捧げる」というサブタイトルに偽りなしの作品だったことは述べておこう。また、閉演後には、当日来場していた辻真先氏が舞台挨拶するという嬉しいハプニングもあった。
 なお、劇団フーダニットの次回公演は8月11日(金)〜13日(日)取り上げるのはJ・B・プリーストリーの『危険な曲がり角』会場は今回と同じタワーホール船堀小ホールである。
 次回の例会は2月12日(日)。会場は会員の沢田安史氏の自宅。沢田家の膨大な蔵書を愛で、鍋をつついて、徳島で行われた紀田順一郎講演会のビデオを見ようというものである。        (文責:廣澤吉泰)
 

2月例会報告(2月12日)
 2月の例会は、横浜にある会員の沢田安史氏の自宅で開催することになった。沢田家の蔵書を鑑賞し、鍋をつつきながら紀田順一郎氏の講演会ビデオを楽しもう、というものだ。
 2月12日(日)13時に最寄駅に集合して、という予定だったのが、参加者10名が全員集合したのは13時15分頃か。久しぶりに参加した上野氏が、病気療養中のため長距離の歩行が困難ということもありタクシー組と徒歩での買い出し組に分かれて沢田家に集結することとなった。
筆者の所属した買い出し組は、バレンタイン商戦真っ盛りの駅前のスーパーで、そうした風潮に背を向けて、ひたすら鍋の食材やらお酒を調達した(その後、沢田家に着いたら、阿部さんから当日の出席者にチョコレートが配られたのは嬉しかった。阿部さんの気遣いには感謝である)
 駅前から徒歩で約二十分。坂道を上ったり、下がったり、また上ったり……という感じでようやく沢田家に到着する。
ここから鍋の準備をするもの(ひき肉を買って、つみれを手作りするという気合の入ったもの)、沢田家の蔵書を調査するもの、いきなり買ってきたビールを飲みだすもの、と各自各様の行動を開始。筆者は「いきなり飲みだす」派であったのだが、途中から鍋づくりに従事することに。そのきっかけは、
  「春菊は最初から鍋に入れるんですよね」
  「なにぃ! 最初から入れたら、春菊がクタクタになってしまうじゃないかぁ!」
 てな問答があって、急遽なべ奉行と化してしまったのである。市販のちゃんこ鍋のスープを使用するので、味付けは気にする必要はないのだが、そうはいっても食材を入れる順番には注意が必要である。誰しもシナシナになった春菊やら、スの入った豆腐なんぞは食べたくないだろうから。
 そんなこんなで手作りつみれ入りのちゃんこ鍋はめでたく完成。明るいうちからお酒を飲みつつ鍋をつつくという、楽しい時間を過ごした。ここでいろいろと興味深い遣り取りがあったのだが、筆者は酔っ払っていたため全く記憶にないのは残念なことである(なんか関西の例会報告変わらないなぁ……)
 そして、いよいよメインイベントの紀田順一郎氏の講演会ビデオの上映となる。
 2005年10月30日に徳島県北島町の北島町立図書館創生ホールで行われた「幻想書林に分け入って?ミステリー&イマジネーションの六〇年」と題した講演の模様を収録したものを入手したものである。
 ここで筆者は時間切れとなって、残念ながら帰宅せざるを得なくなってしまった。そのため詳細な内容をご報告できないのは残念だが、概要に関しては主催した北島町のホームページに掲載されているので、そちらをご参照願うことで、筆者の報告に代えたい。
 講演会の模様を記したサイトのURLは以下のとおり。
  http://www.town.kitajima.lg.jp/hole/bunka/200511.html

 次回の例会は3月5日(日)。会場はニューヨークカフェ渋谷パルコ横店「マイスペース」の6号会議室。時間は14:00〜17:00。当日はSRベスト5の発表と、SR大賞の選出を行います。     (文責:廣澤吉泰)

3月例会報告(3月5日)
 3月の例会は3月5日(日)に開催された。会場はニューヨークカフェ渋谷パルコ横店「マイスペース」の6号会議室。出席者は12名である。
 開始時間は14:00といっても出足が遅いのが通例なのだが、結果を早く知りたいのか、この日は定刻を30分過ぎたくらいで、出席者の顔が揃った。なかには、定刻の1時間前に来ていた会員もいたほどだ(開始時間が従来の13:00から1時間繰り下がっていることに気づかなかっただけだったのだが)
 出席者は、まず集計結果の確認を行う。
 投票結果は、横堀さんが集計を行っているのだが(横堀さん、毎年ありがとうございます)集計と、実際の投票内容に齟齬がないか、両方を見比べるのである。例会での作業は横堀さんの仕事ぶりの緻密さを再確認するだけに終わることが多いのだが、ごくまれに入力ミスが発見されることがある。そんな場合でも全てのデータが横堀さんの電子手帳(正確にはPDA(personal digital assistant)と呼ばれる機器)に入っているので、その場でちょこちょこっと修正できてしまい、発表には支障をきたさない。IT革命、万歳である。
 今回は入力ミスも発見されず、横堀さんの集計どおりでベストテンの発表となった。ホームページでは5位までを発表することにする。詳しい結果や、各投票者の投票結果・コメント等は「SRマンスリー345号」をご参照願いたい(今、入会手続をすれば、最新号である345号が送られてくるはずですよ)

翻訳ミステリ
1 M・スレイド 斬首人の復讐      7.50(6)
2 P・クェンティン 悪女パズル     7.45(22)
3 M・イネス アプルビイズ・エンド  7.32(19)
4 H・セシル 判事とペテン師        7.22(9)
5 H・ウォー 愚か者の祈り      7.08(12)
国内ミステリ
1 石持浅海 扉は閉ざされたまま    7.54(24)
2 天城 一 島崎警部のアリバイ事件簿 7.53(19)
3 米澤穂信 クドリャフカの順番    7.50(10)
4 東野圭吾 容疑者Xの献身      7.41(29)
5 島田荘司 摩天楼の怪人       7.38(16)
評論・周辺書
1 メフィストの漫画 喜国雅彦、国樹由香 7.29(7)
2 ミステリーファンのための古書店ガイド 野村宏平      7.25(12)
3 ジョン・ディクスン・カーの世界 S・T・ジョシ 7.22(9)
4 ミステリオーソ 原 寮                7.00(4)
5 NHK知るを楽しむ 私のこだわり人物伝/江戸川乱歩・山田風太郎 大槻ケンヂ6.40(5)

 作品名の後ろの数字は点数、カッコ内の数字は投票者数。例えば、翻訳ミステリ一位の『斬首人の復讐』は6名が投票し、得点が7.5点であったということである。
 ここで少しSRのベストテンの投票のやり方を説明しておこう。
 作品の数を絞って投票するのが通常のベストテンのやり方だが、SRでは会員が自分の読んだ本を十点満点で採点するやり方。多い人は百冊近く投票するし、数冊しか投票しない人もいる。同じ作品に十点をつける人もいれば、一点という厳しい評価を下す人もいる。そうした投票結果を単純に加点するのではなく、平均点を出して順位を決めるというがSRのベストテンの特徴といえる。
 ベストテン結果の発表の後は「SR大賞」の選出を行った。これは例会出席メンバーが、昨年度に出た作品を対象に【主演男優賞】とか【解説・あとがき賞】など勝手にノミネートして、賞を与えるというもの(ただし、大賞だけでなく、ワーストも選んだりする。えてしてワースト選びの方が盛り上がる)
 出席者はかなり好き勝手な発言をしているので、その内容をネット上にさらすことは大変危険なので、こちらは「SRマンスリー345号」をご参照下さい、と述べるに留めておく(ただし、マンスリーでも表現を和らげたりしているので、その真骨頂を味わうには、例会に足を運んでいただき、実際に参加していただくのが一番良いと思う)
 次回の例会は4月9日(日)。会場はニューヨークカフェ渋谷パルコ横店「マイスペース」の5号会議室。時間は13:00〜17:00。当日は「SRマンスリー」345号の発送作業と犯人当てドラマ「安楽椅子探偵(第6弾)」の上映会を行います。 (文責:廣澤吉泰)
 

4月例会報告(4月9日)
 4月の例会は4月9日(日)。会場はニューヨークカフェ渋谷パルコ横店「マイスペース」の5号会議室。時間は13:00〜17:00の予定だったが、内容が盛り沢山のため時間を17:30まで延長した。
 例会の冒頭、会員の飯城勇三氏から白ワインのボトルが一本振る舞われた。天城一先生から送られたものとのこと。「本格ミステリ大賞」等を受賞したことをSRの会員で一緒に祝って欲しい、という主旨から送られたものだった。会議室は(注文したもの以外は)飲食禁止なのだが、そこはそれである。会議室の備品のコップでの乾杯であったが、会員一同非常においしくいただきました。
 天城先生ありがとうございました。
 その後、発送作業となったが、こちらもサクサクと終了し、予定時間の14:00には「安楽椅子探偵」の上映会が行える体制になった……のだがプロジェクターを持参する予定の小林さんが現れない。「安楽椅子探偵」シリーズは画面のすみっこに重要な手掛かりが隠れていることがあるので、大画面で観るのがベストなので、小林氏をしばらく待つ。
 古本オークションを行ったりして待ったものの、それでもやってこないのでやむなく会議室のテレビモニターでの上映を決断する。上映開始から約十分、ようやく小林さんが現れる。外出の直前に家の用事を頼まれて遅れてしまったとのこと。そうした話を聞きつつ、ビデオとプロジェクターを接続しようとしたのだが、ここで重大な問題が発覚した。
 会議室のビデオはテレビと一体型のものだった。そのため入力端子はあるのだが、プロジェクターに映像を出すための出力端子がなかったのである。
 せっかくのプロジェクターは接続することができず、宝の持ち腐れとなってしまった。わざわざ機材を抱えてきた小林氏は、用事があるということで、「安楽椅子探偵」を見ることもなく、退場することとなってしまった。
 小林さん、大変お疲れ様でした。
 次回は、ちゃんとプロジェクターが活用できるビデオを手配しておきますので、これに懲りずよろしくお願いします。
 さて、そうした騒動もあって、安楽椅子探偵第6弾「安楽椅子探偵 ON AIR」の上映は予定よりも少し遅れて開始された。
 内容等に関しては公式サイトをご覧いただくとして(http://www.asahi.co.jp/anraku/)、当日の会員諸氏の感想はといえば「気持ちよく騙された」というものであった。また、テレビというメディアの特徴を生かした巧みな犯人の隠し方にはうならされた。
 犯人を特定するためのポイント(ノートと電話の会話)は気づいた人が多かったようだ。しかし、そこから推理を展開するにあたって、作者が仕掛けた「地雷」に引っかかってしまった。やはり、映像を1回しか見ていない点がネックとなったようだ。
 今回の正解率は6.5%。この数字自体は過去最低のもので、それだけ今回の問題編が難かしかったことをうかがわせる。ただし、逆に言えば、あのわかりにくい犯人を推理した人が、全体回答者の中の6.5%(応募総数が19,566通なので、1271名いる勘定になる)ということの方に驚かされた。
 今回の犯人はあてずっぽうで指摘することができない。つまり、この1271名は、綾辻・有栖川の用意した伏線を適切に拾い上げて、推理を組み立てたわけだ。
 安楽椅子探偵シリーズが継続していることが、こうした推理に長けた視聴者が生み出してきたといえるだろう。
 成長する回答者に対して、その想定を上回る謎を提供し続けることは、なかなか至難の技だと思うが、ぜひとも第7弾でも見事な騙しのテクニックを披露して欲しいものである。
 次回の例会は5月21日(日)。狭山市立博物館で開催されている横溝正史展を見にゆきます。       (文責:廣澤吉泰)

狭山市立博物館のサイトはこちらです。より詳しい情報を得たい方はご参照下さい。
http://www.city.sayama.saitama.jp/kakuka/kyoiku/museum/

5月例会報告(5月21日)

5月の例会は5月21日(日)。毎月の例会は渋谷の貸し会議室で開催しているが、5月は気候が良いこともあって、埼玉県狭山市まで足を伸ばして、同市で開催されている横溝正史展を見にゆくという例会を企画した。
と、計画を立てたまでは良かったのだが、何を勘違いしたのか「5月の例会は20日土曜日」と思い込んでいて、21日に別の予定を入れてしまったため、例会に出席できなかった。それでも例会報告は書かないといけないので、出席者から聞いた感想を織り交ぜつつ、別の機会に訪れた印象をもとに「横溝正史展」のレポートといった体裁で「例会報告」をとりまとめたいと思う。

「金田一さん! 出番です。」と題された、横溝正史展の会場となった狭山市立博物館はアケボノゾウの骨格標本や縄文土器などが常設展示されており、入間川を中心に発達してきた狭山市の歴史の流れが見てとれるような構成となっている。
狭山市の歴史と横溝正史との関連……といっても全く思いつかなかったのだが、それは思いつかない方が正解で、職員に横溝正史のファンがいた、というのが真相であった。
狭山市立博物館は、西武池袋線の「稲荷山公園」駅から徒歩3分。駅名にもなっている稲荷山公園は飛行場跡地の一部を整備したもので、16.5haの面積を誇る。ちなみに、例会時には会員諸氏は博物館に隣接するここで昼食をとったそうだが、そんなことをやってみたくなるような立派な公園なのである。
さて、館内の展示だが、角川文庫の表紙絵のパネルや書簡・生原稿といった定番のものに加え、マネキン人形などを用いて作品の一場面を再現した試みが「博物館」っぽいといえば言えるかもしれない。私が実際に横溝展に赴いたのは、4月22日(土)だったが、このときのジオラマは『獄門島』の釣鐘の中から振袖の端が飛び出している場面だったが、5月に博物館に行った会員諸氏によれば、そのときは釣鐘が持ち上げられた死体発見の場面だったそうだ。横溝展は3月18日から6月11日の長期にわたるものだったが、時期により展示を変える工夫を行っていたようだ。
22日には角川文庫の横溝作品の表紙を飾った杉本一文氏のサイン会が催された。
杉本画伯のサイン会は、開始時間の午前10時に会場に着くようにと出かけたら、その時点で既に50名余りの人がサイン開始を待って並んでいた。しかも、私が待つ間にも列はどんどんと延びていく……。最終的には100名に及んだようで、終了予定時刻を超過しそうになったため、途中からサインしてもらえるのが2冊から1冊になってしまったのは、なんとも不運なことであった(幸いにも私は2冊サインをしていただけたが)
ところで、サイン会にあたり、博物館側からは「角川文庫版をご持参下さい」との案内があった。「なぜ角川文庫版に限定するのか?」と不思議に思っていたのだが、サインしてもらって疑問は氷解した。ご記憶であろうか、角川文庫版の横溝作品のカバーは裏表紙がほぼ白紙の状態になっている。杉本氏はこの空白部分サインをされたのである。
本そのものにサインすれば良さそうにも思うが、杉本氏によれば「本の中身は自分の仕事ではなく、横溝さんの仕事」ということで、カバーへの署名に拘ったようである。
横溝正史の長男・亮一氏の講演会が開催されたのも同じ日の13時からであった。参加するには事前に電話予約が必要だったのだが、こちらも申し込み開始当日に予定人数に達する過熱ぶりだったようである。

それにしても、なぜ今横溝正史なのか?
そうした問いに対しては展示会の小冊子に寄せられた浜田知明氏の文章を引用して答えにかえたいと思う。
「過熱気味だったブームが去り、原作に即した映像化もされるようになった今こそが、再評価の本当に機会なのです。この展示会をきっかけに、じっくりと腰を落ちつけて、作品を味読してくださることを願ってやみません」
 皆様も、改めて(初めての人もいるか?)この機会に横溝作品を手にとってみてはいかがでしょうか?     (文責:廣澤吉泰)

6月例会報告(6月4日)

 6月の例会は6月4日(日)に「ニューヨークカフェ」渋谷パルコ横店の地下会議室「マイスペース」5号室で開催された。出席者は8名であった。
今月の企画は「紳士探偵キャンピオン」のビデオ上映会である。マージェリー・アリンガムの『幽霊の死』(ハヤカワポケットミステリ)を原作としたイギリスのテレビ映画である(1989年製作:放送時間82分)
キャンピオンはピーター・ディビソン、執事のラッグはブライアン・グローバー、オーツ警部はアンドリュー・バートが演じている。日本未公開の作品だが、「字幕スーパー」付きのソフトだったので、以前に上映された未公開作品「黄色い部屋の謎」「緑は危険」ときのように「何が起こったかわからない」ということはなかった。
上映にあたっては、ソフトの提供、プロジェクターの持参という点で「SRの会のホームページ(仮)」の管理人である小林晋さんにご尽力をいただいた。特に、プロジェクターが使用できたのは、小林さんの交渉による点が大きかったのである。
ご記憶であろうか? 今年4月例会での「安楽椅子探偵」の上映にあたり、会議室のビデオに外部入力端子がなかったために、プロジェクターが使用できなかったことを。
そんなことがあったので「名探偵キャンピオン」の上映では画面で鑑賞できるように、と会議室を予約するときに「外部入力端子のあるビデオ」を依頼したのだが、予約センターの回答は「渋谷パルコ横店にあるビデオは全てテレビ一体型のもので、外部端子はありません」だった。これには頭を抱えたのだが、それ以上に重大な問題があった。それは、そのことを小林さんに伝えることをすっかり忘れていた点であった。
そのことに気付いたのが、例会の2日前くらいで、慌ててメールをしたものの伝わらず、結局小林さんは会場にプロジェクターを持参することになってしまった(申し訳ない)
ところが、小林さんは執念でこの局面を打開する。店の人をつかまえて、出力端子のあるビデオデッキがないかどうかを確認。すると、他の会議室に希望通りのデッキがあることが判明したのである。こうして我々は大画面で「紳士探偵キャンピオン」を観ることができたのであった。本当に小林さんありがとうございました。
「紳士探偵キャンピオン」は、主演の俳優が落ち着いた雰囲気でキャンピオンを好演。執事役のラッグとの掛け合いも絶妙で、まさに「紳士探偵」という趣きである。ただし、ちょっとのんびりしすぎの部分もある。あからさまに怪しい犯人に、あからさまに飲み物に薬を盛られて、地下鉄のホームから突き落とされそうになってしまうのであるから。
 事件の犯人は、顎鬚のとんがった、いかにも悪事を働いています、という風貌の男。あまりに怪しすぎるのでレッドヘリングかと思ったら、ド本命の犯人だったのには驚いた。英国でも、日本の二時間ドラマと同様「分かりやすさ」が求められているのであろうか?
上映後は、恒例の古本オークションを行い、それでも時間があったので、「SRの10冊」を選ぶことにした。
 今回選ぶものは、11月号掲載なので「秋に相応しいものにしよう」となり、「芸術の秋」という言葉からの連想で「絵画ミステリの10冊」で10冊を選ぶこととなった。
絵、というテーマに落ち着いたのは、美術界を舞台にした「紳士探偵キャンピオン」を観ていたことが多分に影響していると思う。「紳士探偵〜」の原作『幽霊の死』や、コロンボの「二枚のドガの絵」などが挙がってくる。古典に新作、メジャー作品に雑誌に翻訳されたきりの作品など様々あがるなかで、ある有名作品だけが出てこない。映画が最近公開されたばかりなのに……。
「●ン・ブラウン『●・ヴィンチ・コード』」
 と、言ったとたん「それだけはだめ」と厳しい拒絶。皆さん、頭には浮かんでいたけど口には出さなかったのですね。
 果たして、どんな作品が登場するかは12月発送の11月号のお楽しみ……あ、12月に「絵画」じゃ季節が合わないか。季が違っているが、もういまさら仕方ないでしょう。            (文責:廣澤吉泰)

7月例会報告(7月8日)

 7月の例会は7月8日(土)に開催された。今回も5月に続いての野外活動である。
 駒込駅に集合して、旧古河庭園を見学し、浅見光彦シリーズにも登場する和菓子屋「平塚亭」で団子をパクつき、赤羽近辺の古書店を渉猟する、という工程だったようである。
「ようである」というのは、5月に続いて不参加となってしまったためである。
          ※
 ある日の廣澤家の会話。
「今度の土曜日はSRの例会だからね」
「え――っ、SRは日曜日じゃないの?」
「今月は土曜日なの」
「でも、8日は平塚の七夕に行く予定でしょ」
「なに――っ!」
 と、いうわけで見事にダブルブッキング。そのため8日は平塚の七夕を見た後に散策を終えた会員諸氏と合流するという強行軍となったわけである(自業自得なのだが)
          ※
 そもそも今回の駒込散策は「SRマンスリー」の特集用にと佐竹裕之氏が企画してくれたものだった。「マンスリー」では、ここ2年ほど7月号で「ミステリの舞台を歩く」という特集をしているが、その中心になるのは、東京例会で実施した街歩きの報告記事である。今年も5月に埼玉県は狭山市まで出かけて、「横溝正史展」を見てきたのだが、それは「ミステリの舞台を歩く」という特集にはそぐわないだろう、と佐竹氏が気を配ってくれて、今回の街歩きを企画した下さったわけである。
 “街歩き”の企画で最初に頭に浮かんだのは北区の西ヶ原にある「平塚亭」であった。
「平塚亭」は、先に述べたとおり、作者の内田康男の地元であることもあり、浅見光彦シリーズにしばしば登場するお店である。このお店が、東京ローカルのTV番組「ぶらり途中下車の旅」(NTV)で紹介されたのである。しかも、TVカメラが店に入っていくと、そこでは「浅見光彦ファンクラブ」の例会が開かれており、その中にはSR会員であるY氏の姿もあった。しかも、Y氏はただ映っているだけでなく、カメラを前にファンクラブの活動などについて語り始めたのである。
 放送をみていた筆者は、きっと「推理小説研究家 Y」とかスーパーが入るのか、と思っていたら何も出ない。単なる一ファンとしての登場。Y氏、奥ゆかしすぎである。
 その放送が私と佐竹氏の頭に残っていて、「平塚亭」ははずせない、という感じになってきた。それに元々あった駒込や王子近辺を歩こう、という構想が結びついて、今回の駒込発のツアーとなったわけである。
しかし、駒込近辺というのはミステリ関係のスポットが少なかった。浜尾四郎の墓、というのもあったのだが、それは駒込→旧古河庭園→平塚亭というルートから大きく外れているため訪問は断念せざるを得なかった。
 しかし、二次会の席で聞いた様子だと、旧古河庭園で薔薇に囲まれて、お茶をするのが非常に好評だったようで、そう考えれば必ずしも推理小説に直接関係のある場所、にこだわらなくても大丈夫なのかもしれない。
 結局、筆者は「平塚亭」の団子は味わえずに平塚の七夕飾りを見てきたわけだが、それはそれで楽しかった。そして、平塚から東京に戻り、家族とは上野駅で分かれ、一路赤羽駅へと向かった。
 駒込〜西ヶ原〜赤羽と歩いてきたメンバーと赤羽駅で合流。駅前の居酒屋で二次会となる。そこでは旧古河庭園散策などの感想戦に加えて「SRの10冊」の選定作業が始まる。先月の例会で「絵画ミステリの10冊」を選んだにもかかわらず「音楽ミステリの10冊」そこから派生して「楽器ミステリの10冊」へと派生していく……。「楽器ミステリ」ではこれはネタバレではないか、という作品まで挙がってきてしまったのは、酔いがなせるわざであろうか。
 こうしたベストテン選びは、マニアにとっては楽しい作業である。それゆえに、例会で集まるたびに10冊を選び始めたくなる気持ちはわからなくもないが、ちょっと“中毒”に近い感じである。作品を選ぶのと同じ熱心さで選んだ作品のレビューを書いてくれれば、「マンスリー」の編集も楽になるのであるが、いざ書くとなるとそうはいかないのが難しいところである。    (文責:廣澤吉泰)

8月例会報告(8月6日)

 8月の例会は、8月6日(日)14:00〜17:00、会場はニューヨークカフェ渋谷パルコ横店「マイスペース」の5号会議室で開催され、10名の会員が参加した。今回は「SRマンスリー」の7月号(通算347号)の発送作業を行う発送例会である。
 8月例会も発送作業を終える16時頃までの参加であった。その理由は7月に引き続いてのダブルブッキングである。
          ※
 ある日の廣澤家の会話。
「今度の日曜日はSRの例会だからね」
「え――っ、6日は娘の幼稚園の夏祭りでしょ」
「なに――っ!」
  歴史は繰り返す、である。
 夏祭りに出席するには17時30分には自宅に帰らなければならず、そのためには例会場を16時には出なければならない――その日の筆者は、あたかもアリバイ物の犯人のように、時刻表に縛られての行動と相成った。
          ※
 さて、発送例会の際に、一番つらいのは300冊近い「マンスリー」を会場に運搬することである。関西例会の様子を聞くと、会場近くの会員宅に「マンスリー」が届き、それを自転車で運び込む、というものらしい。実に羨ましい。
東京では会場近くに住む会員がおらず、筆者も自転車は乗れるが、自動車の運転はできないため(ペーパードライバーである)人力による搬送となる。
 しかも、運ぶのは「マンスリー」だけではない。封筒。封筒を閉じるためのセロハンテープを切るためのテープカッター(3台)。大量の切手を貼るためのスポンジ(2台)。といった発送用グッズも同時に運ぶ。かなりの重量である。
 これだけの重量物を抱えて約一時間の道中である(しかも乗り換えあり)。
 今回のような真夏にやると汗がダクダクと出て、しっかり体が絞れます。
 どうです、誰かやってみませんか?
 と、まぁ冗談はさておき発送作業は滞りなく終了し、引き続いてSR東京支部が主催する「55周年記念大会」に関して議論を行った。
  2007年3月17日(土)前夜祭
          18日(日)本大会
 という日程を固めて、会場・企画内容を詰めていくこととなった。この日程は動かすつもりはないので、参加を希望される方は、今から予定を入れておいて下さい。
 前夜祭の企画案としては、犯人当て小説朗読、古本オークション、本大会の企画案としては講演会、立食パーティーが検討されている。他にこうした企画があれば、というものがあれば筆者宛にご連絡(※)をいただければ幸いである。
 記念大会の議論がまとまったところでだいたい16時となり、「マンスリー」の満載された紙袋を抱えて、あわただしく会議室を退出。会場近くの郵便ポストに300通近い封筒を一挙に投函する。空っぽに近いポストが、最後には口まで封筒が詰まった状態になる(過去には、一つのポストでは入り切らなくなり、別の投函場所を探し、右往左往したこともあった)
 ちなみに、投函作業は例会に遅れてきて発送作業ができなかった者が行うのだが、時には先に述べたような最悪の事態に遭遇することもあるため例会員の間では“投函の刑”と呼ばれ懼れられている。
 今回は一つのポストで収まって、投函作業も何事もなく終了し、予定時刻どおりに渋谷を後にすることができた。幸いにも、ダイヤが乱れることもなく、夏祭りには間に合って、父親としての面目は施せた。
 それにしても、自分で例会の日程調整をしているのだから、こうしたダブルブッキングがないようにできないものだろうか。自分自身のスケジュール管理能力の欠如にあきれ果てる今日この頃である。          (文責:廣澤吉泰)
※ 連絡先は「SRマンスリー」をご参照下さい。本当はこちらにメールアドレスを記載しておくのが親切なのでしょうが、そうするとスパムメールがさらに増えそうなので……。

9月例会報告(9月3日)

 9月の例会は9月3日(日)14:00〜17:00。会場はニューヨークカフェ渋谷パルコ横店「マイスペース」の5号会議室。13名の会員が参加した。

 11月号の「SRの10冊」の選定作業を開始する。6月の時点でテーマは「絵画ミステリの10冊」と固まっており、候補作もまとまっていたのだが、〆切も近いことであり(10月末日)10作を確定させて、執筆担当者も固めるという作業である。
そこで出席者が挙げる作品を、私がホワイトボードに書いてことになったのだが、これが苦行であった。
なかなか漢字が出てこないのである。
アリンガムの『幽霊の死』、エルキンズの『偽りの名画』などは順調に書けたわけだが、三つ目に挙がった泡坂妻夫の亜愛一郎ものの短編「わらのねこ」で躓いてしまう。
わら、の字が出てこない。仕方がないので、
わらの猫
と書く。
なんとも変な感じである。アルレーの作品みたいだ。見かねた会員の一人が「クサかんむりに高いに、木ですよ」と教えてくれる。さすがは教師、教え方が上手である。
言い訳をするわけではないが、昔はちゃんと書けたのである。大学生だったころに、亜愛一郎シリーズでベストを選ぶとすれば「黒い霧」か「藁の猫」かで論争したことがある。しかも、手紙で(相手は遠方の人間だったのである)。私は「藁の猫」派だったので、何度も何度も手紙に「藁の猫」と書いたものだったのだが、そのときの記憶も薄れてしまったということだ。認めたくはないが。
さて、「藁の猫」はクリアしたのだが、次なる候補作が厳しいものだった。飛鳥部勝則の『殉教カテリナ車輪』どういうわけか「殉」の字が出てこない。しょうがないから、
じゅん教カテリナ車輪
と書いたが、これまた間抜けな感じである。「殉教」の重々しさが全く伝わらない。
 じゅん教
へんてこりんな新興宗教みたいである。まるでダメである。これも会員各位から「『死』の左側に、上旬中旬の『旬』」と教えられて板書することができた。しかし、それまでの間の恥ずかしさたるや、何ともいえないものがある。
「殉教」が書けて安心していると、さらに会員諸氏から厳しい出題がなされる。
柄澤ひとしの『ロンド』
セイヤーズの『五匹の赤いにしん』
大阪圭吉の「ちん入者」
 それぞれ回答は「齊」「鰊」「闖」である。「闖」の字については、会員のF氏が
「門から馬がビャーッと入ってきて驚いたのが語源だ」
 と説明してくれた。語源かどうかは怪しいところだが、分かりやすい説明である。「闖」の字は、きっと忘れないだろう。たぶん。
そんな羞恥プレイのような一幕もあったが、執筆担当者も含めた選定作業は終了した。どんな作品が登場するかは「SRマンスリー」をお楽しみに。
選定作業の後は、古本オークションに。
最近の本に混じって、デュ・モオリア『情炎の海』が出品される。東京創元社の世界大ロマン全集である。裏表紙のあらすじが凄い。
「虚飾と享楽に満ちた貴族生活に倦怠した美貌の人妻ドーナが、ふとしたことから海賊船“かもめ号”の般長と知り合い、数奇な恋と冒険の運命に身をゆだねる(以下 略)」
 海賊船の名前が“かもめ号”である。
 なんとものどかな名前である。
 しかも「般長」。あきらかに「船長」の誤植である。誤植に関しては、目立ちやすいところほど見逃されやすいとはいうが、実例を目の当たりにしたのは初めてである。
 あまりの面白さに落札してしまった。勢いで、もう一冊出ていたデュ・モオリアも買ってしまった……。
オークション終了後は、とあるテーマの十冊を選定。10作のレビューを掲載して、「さて、この10作に共通するテーマは何でしょう?」というのをやってみようかと考えています。果たしてうまくいきますかどうか。       (文責:廣澤吉泰)

10月例会報告(10月15日)

 10月15日日曜日。晴天。場所はいつもの渋谷のニューヨーカーズ・カフェ地階の個室です。参加者は11名で、お馴染みのメンバーばかり。この日は編集長の廣澤氏欠席のため、特段に差し迫った話題もなく、いつにも増して、まったりした例会となりました。
 まずはバウチャー・コン帰りの沢田氏持参のカタログを見ながら、今年のバウチャー・コンの様子を聞かせてもらいました。今年は日本からの参加はとうとう沢田氏一人になってしまったそうです。まさに日本代表! 
 さらに話題は、浅羽莢子氏の早すぎる死を悼む話から、翻訳者繋がりということで、今評判の『マンアライヴ』の悪訳の話に移りました。参加者の中で、唯一読み終えていた森脇氏は、読み通すのに相当苦労したにもかかわらず、「チェスタトンの文章はもともと難解だから。」と、ことさら翻訳者を責めるでもない様子。さすがポケミス初期の悪訳で苦労した者は肝がすわっている。過去の悪訳の代表として『ローラ殺人事件』や『雪の上の血』(こちらは東京創元社)などが、ひとしきり話題にのぼりました。
 恒例のオークションでは、珍しいものは出なかったかわりに、創元の古典名作ばかり7冊まとめて、森脇氏が出品されました。「今更誰が買うか」との疑問の声が上がる中、吉田氏がどれも読んだことがないということで、まとめて100円で落札されました。そこで早速、おせっかいな会員たちが、読む順番を手ほどき。とりあえず最初は『黄色い部屋』で、続いて『毒入りチョコレート』『グリーン家』『ベンスン』『赤い館』…と読み進めればよいのでは、ということになりました。これらの名作をすべてこれから楽しめるとは、なんともうらやましい限りですが、ヴァン=ダインなど今の人が読んで面白いと思えるのかと、心配にもなります。そこで筆者からは、「とりあえず雰囲気を楽しむくらいのつもりで、読まれるといいですよ。」とアドバイスさせていただきました。(文責・大村拓)

11月例会報告(11月5日)

 11月の例会は11月5日(日)14:00〜17:00、ニューヨークカフェ渋谷パルコ横店「マイスペース」の5号会議室で開催され、10名の会員が参加した。

 この日は、会員の松坂健さんから「ニューヨークミステリ古書店事情」と題して、3月に旅行したNYに関する報告があった。同行した小山正氏のレポートは、既に「ミステリマガジン」2006年6月号に「地下鉄で巡るNYミステリ書店ガイド」として掲載されているが、松坂さんの話はまた違った切り口のもので、小山氏の記事を読んでいる人にも楽しめる内容であった。
 まず、NYレポートに入る前に自己紹介を、ということで松坂さんの「ミステリ遍歴」が語られたのだが、これが「日本ミステリファンジン史」ともいうべき貴重な内容であった。
松坂健さんは、1949(昭和24)年東京は浅草に生まれた。6歳年長のお兄さんが「探偵小説好き」だったこともあり、ポプラ社の〈少年探偵団シリーズ〉でミステリに親しみ、小学校5、6年生の頃には創元推理文庫を手にとっていたとのこと。そして、中学に入ると神田神保町の書店街に通いはじめる(東京で少年期を過ごした人のこうした体験を聞くと本当に羨ましい)
 当時はまだ都電が走っていたので「浅草橋」で乗り換え「駿河台下」で下車、という経路で通いつめていたようで、最初は三省堂や東京堂といった新刊書店が目当てだったのが、徐々に古書店にも足が向くようになる。
 このころの印象深い挿話としては、中学生の松坂少年が「地球堂」という古書店でミステリの棚の前にいるところに、見ず知らずのサラリーマンが近寄ってきて、
「ミステリは『ユダの窓』だよ」
とだけ告げて立ち去ったこと。ちなみに、その方の素性は分からないままだそうだ。
 その後、受験期を迎えた松坂さんは「推理小説同好会があるから」という理由だけで、慶應義塾大学を目指して、見事合格する(当時は、慶應以外では早稲田と青山学院にしかミステリクラブはなく、その中で慶應を選んだのは、ご兄姉が全員慶應に進学しておられたから、とのこと)
 慶應大学推理小説同好会(以下KSD)は、1952年に創立され、2007年に55周年を迎えるとのこと(SRの会と同じだ)松坂さんは、KDSの第17代代表を務めている。
 KSD時代には、他の大学のミステリの鬼(話の内容からして「ファン」というより「鬼」と表現した方がしっくりくる方々である)との交流が印象深かったようである。
 ちなみに、なかなかNYに行かないのであるが、当日もNYに旅立つまではかなり時間がかかったのでお付き合いいただきたい。
 さて「ミステリの鬼」の中で最初に出てきたのは、ワセダ・ミステリ・クラブ(以下WMC)のK氏であった。アメリカン・ハードボイルドが好きな方で、松坂さんはK氏が書いた「ゼロストリート東京」という作品が忘れがたいと話しておられた。
 東京を狙う宇宙人と青山墓地から甦った乱歩の幽霊が対決する、という奇想天外なストーリーを『黒死館殺人事件』の文体(総ルビ)で書きあげた、というのだから、なんとも凄そうな作品である。
 K氏は、松坂さんにとって“恩人”ともいうべき人だったのだが、ある日突然、今後一切ミステリとの縁を切る、と宣言し蔵書を全て売り払い関西に帰ってしまったとのことで、非常に残念である(それゆえ本稿でも松坂さんと相談のうえ、お名前はイニシャルとした)
 その他にも瀬戸川猛資氏、中野登氏、宮田雪氏、浅羽莢子氏、そして松坂さんと「SRの会」との縁を取り持った戸川安宣さんといった名前が続々と出てきたのだが、そろそろNYに話を転じなければ紙幅がなくなってしまうため、断腸の思いで割愛することにする。
 ちなみに、このホームページの例会報告は「SRの会」の会誌である「SRマンスリー」の1頁分(20字×30行×3段)を目安にして作成しているのだが、ちょうどこの辺りで1頁分である。ここで終わらせてしまうと、読者諸氏は欲求不満が溜まるだけだろうから、今回は拡大版でお送りすることとする。
 
 と、いうわけでNYである。
 3月19日に日本を出発し、23日までNYという旅程(同行の小山氏はもう少し長く滞在していたとのこと)
 今回は「お金制限なし、冊数制限なし」で臨んだとのこと。古書マニアならば、一度は夢見る旅行を現実のものにしたわけである。松坂さんは、手元のメモを見ながら、詳細にレポートをしてくださった。
 松坂さんは「劇団フーダニット」というミステリ劇を公演する劇団の広報担当であり、また大学卒業後は柴田書店という、料理の専門誌を出す出版社に勤務していたこともあり、ホテルや飲食店に関して造詣が深い。したがって、そのレポートは古書店だけにとどまらず、演劇やホテル、レストランなど多岐にわたった非常に興味深いものであった。
 報告に先立って「古本屋回りとNY遊覧は両立しない」とおっしゃっていたのだが、旅行記としても楽しめたのは、古書店から古書店への道程に、自分たちの楽しめるものを見出すことのできる集中力と広範な知識ゆえであろうか。見習いたいところである。
では、ここからは日付順に。
3月19日
日本出発。日付変更線を越えるので、19日の午前10時にJFK空港に到着。入国手続に3時間近く要したため、この日は「ストランド・ブックストア」に行っただけで終わってしまう。ミステリ専門店ではないが、本はたくさんあったとのこと。宿泊先は、タイムズスクエアにある「ウェスティンホテル」。NYは全般的に宿泊料金が高く、このホテルも一泊400$(約4万円)とのこと。
3月20日
ミステリ専門店「ブラック・オーキッド」に行ったら休みで空振りだったものの、ダシール・ハメットが息を引き取った「レノックスヒル病院」や『ギリシア棺の謎』の舞台となる「ハスキル家」の場所を訪れる(実際にはセントレジスというホテルが建っている)
また、西78th St.ではポオの碑を偶然発見。ポオが「大鴉」を執筆した所ということだ。
「ゼイバーズ」「マンジャ」といったデリカテッセン、「ゴッサム・バー&グリル」というアメリカン・キュイジーヌのお店も話題に。気になった方は検索システムで調べてみられては? いずれもそそられる店である。
3月21日
 この日は、グリニッジ・ヴィレッジにあるミステリ専門書店「パートナーズ&クライム」へ。ここでは2時間を費やしたとのこと。その後、ソーホーのはずれにある「ハウジング・ワークス・ユーズドブックカフェ」に。こちらはHIV感染者やホームレスの救済を目的とする「ハウジング・ワークス」という非営利団体によって経営されている古書店。店の奥にカフェがあり、買った本を読みながらくつろぐことができる。松坂さんは、ここで映画関係の本を12、3冊「しとめた」とのこと。
3月22日
「NYPD(ニューヨーク警察)ミュージアム」を見学。1800年代の市警取調室を再現した部屋や、拳銃、制服といった装備が展示されている。9.11関連の展示もあったとのこと。
「ミステリアス・ブックショップ」では、早川書房のアレンジで、店主のオットー・ペンズラーと会う。日本映画「新幹線大爆破」の話題で盛り上がったとのこと。
 夜は、Duffy Theater という劇場で「パーフェクト・クライム」というミステリ劇を観覧。ブロードウェイで10年以上のロングランとなっている作品とのことである。
3月23日
 本をテーマにした「ライブラリーホテル」を訪問。同じブロックにNY「ブックオフ」があり、こちらもかなりの品揃えであった。「ブラック・オーキッド」をようやく訪問。ペーパーバックの量が半端ではなく、壁一面にレックス・スタウトが並んでいた。店主からは「来週、Jiro Kimuraがやってくる」と言われたとのこと。
 この23日をもって松坂さんのNY旅行は最終となった次第。当日の話は、この1.5倍はあったのだが、今回はこれぐらいに。機会があれば「SRマンスリー」誌上で紹介したい。また、当日は記念大会の話し合いも行ったが、そちらに関しては、より詰まった議論を行った12月の例会報告をご参照願いたい。
           (文責:廣澤吉泰)

12月例会報告

 12月例会は12月10日(日)14:00〜17:00で、ニューヨークカフェ渋谷パルコ横店「マイスペース」の5号会議室で開催された。

 当日は「SRマンスリー」11月号(通巻349号)の発送例会の予定だったが、マンスリーの表紙に記載する「記念大会」告知記事の関係で入稿が予定より遅れたため、発送作業は会員宛の封筒に切手を貼る、というものだけにとどまった(でも、それが済んでいるだけでも、かなり楽なのである)
なお、発送作業自体は、その翌週に行ったので「SRマンスリー」は2006年のうちに会員のお手元に届いたことかと思う。

 さて、発送作業が切手貼りだけで終わったので、残った時間で「SRの会 55周年記念大会」に関して話し合いを行った。
「記念大会」は、阿部・佐竹・沢田・森脇夫妻に筆者というメンバーで、会場選定や記念大会ブログの立ち上げ、記念Tシャツの制作など準備を進めている。全員が予定の合う時間がなかなか取れないので、例会の前に集まって、あれやこれやの検討作業をしている。気がつくと、例会開始の午後2時になっていて、それでも中身はまとめないといけないので、遅刻覚悟で話しあっていることもある。
 その実行委員メンバーで、記念大会の会場となる「フォーラム8」の下見を行ったところ、
 ・受付に人が必要
 ・Tシャツ等の物販スペース担当者が必要 
 ・参加者を迷わせないための誘導員が必要
 ・大会の模様の撮影する記録係が必要
などと、具体的な人の配置も見えてきた……というわけで、当日例会に出席していたメンバーに呼びかけて、それぞれ役割分担をしていただくことになった。
 ちなみに、下見をしたうえで会場の告知をしよう、ということで「SRマンスリー」の入稿時期も延ばすことにしたのだが、実地検分をしてみて「この会場は、ちょっと……」という結果になっていたら、そこから新たに会場探しが必要だったわけで「フォーラム8」が各人の意を満たした会議室であったのは幸いであった(レセプションが同じ建物内で開ける、というのも大きかった)
 ところで、東京で記念大会を開くのは「25周年記念大会」から実に30年ぶりのこととなる。前回の記念大会の際に準備に携わった人間は皆無であるため、まったく一からのスタートであるが、50周年大会の状況を関西に聞いたり、自分たちが参加した各種イベントの様子を思い起こしつつ進めている。
そうはいっても開催日(3月17日(土)〜18日(日))は着実に迫ってくるので、しっかり準備を進めていかなければと思う。

その後は、恒例の古本オークションとなった。いつもは10冊も出てくると「今日はたくさんだなぁ」という感じなのが、この日は30冊強の本が出品された。やはり、年末で本棚の大掃除でもしたのだろうか?
筆者はセオドア・ロスコー『死の相続』(原書房)を競り落とした。帯の言葉に惹かれて買ったのである。
「密室ミステリの歴史に燦然と輝く、おそるべき怪作」という森英俊氏の推薦文に加えて、「カーの大仕掛け、そしてクリスティのサスペンス/黄金時代の異端児、初登場」という煽り文句があれば、あまり海外作品には手を出さない筆者も、ついつい財布の紐が弛んでしまった。
他に購入したのは『緑のカプセルの謎』『ユダの窓』『火刑法廷』の文庫本。なんといっても2006年はジョン・ディクスン・カー 生誕100周年ですからね。
例会の後は忘年会となったが、筆者は別の会合と重なったため残念ながら欠席となった。

次回の例会は、1月14日(日)14:00〜17:00で、ニューヨークカフェ渋谷パルコ横店「マイスペース」の5号会議室で開催する。
(文責:廣澤吉泰)
 
 

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