井沢元彦

「ダビデの星の暗号」 講談社ノベルス S60

P59 「ええ、コナン・ドイルも好きです」 (平井太郎、すなわち江戸川乱歩の発言

石上是介

「江戸川乱歩氏を繞りて」 「江戸川乱歩  評論と研究」中島河太郎編所収 講談社 S55

P20 明智小五郎はどの点から見てもフランスのデュパンの弟子ではない。もっとシャロック・ホルムズの血をひいた人間である。然しホルムズには立派に人物が出来上がっているが明智はまだ未完成である。(中略)デュパンにしても、ホルムズにしても立派な倫理観を有しているが、明智は只犯罪捜査に異常な興味を持つだけでその行為を裏付ける倫理に欠陥がある。

P21 作者への注文は明智にもちっと詩を読ませてやってほしい、そしてデュパンやホルムスゃルパン位のゆとりが出来たら探偵界の一大類型ともなり得よう。

井上ひさし

「三味一体」(池内紀、中野記偉との対談) 「『ブラウン神父』ブック」 井上ひさし編 春秋社 S61

P27 「ブラウン神父」物の系統というのは、あまりその後ないと思うんです。シャーロック・ホームズふうの、いかにして解いたかとか、犯人の動機を理解するとかで。

  (中略

 シャーロッキアンと論争するつもりはありませんが、人間存在のおもしろさ、謎、それから、隠された、平凡だけれども、実はたいへんな真理というものを扱う推理小説というのは、恐らく「ブラウン神父」物が最初で最後だというぐらい、そのぐらい難しい仕事をしていると思います。

P43 シャーロック・ホームズを好きな人には申し訳ないんですけれど、シャーロック・ホームズというのは、彼がある事件をどんな小さなことを積み重ねて解決していったかという、その方法論のおもしろさなんですけど、「ブラウン神父」がすごくいいというのは読者が違う人間になってしまうというところです。

P64 僕は小さいころ、偕成社とかなんとかのシャーロック・ホームズの「まだらの紐」なんていうのを、いっしょけんめいに読んだんですね。それはそれで、すごくおもしろかったんですけれど、あのころ「ブラウン神父」を読んでも、退屈だ、という気がちょっとするんですね。

井上良夫

「陰獣吟味」 「江戸川乱歩  評論と研究」中島河太郎編所収 講談社 S55

P45 本格探偵小説に於ける「真相の説明」という条は、多く無味乾燥に記されているものである。ヴァン・ダインの「グリーン・マーダー・ケース」然り、ドイルの「バスカービル家の犬」また然りで、本来は興味深き筈の箇処が、その心ない書き方のため、却って作の価値をさえ瑕つけているのは、本格探偵小説の通弊である。

I  I  I い I  I  I   I  I  I 補追 I

どこにでもいるシャーロック・ホームズ