ウィルソン、イアン

「トリノの聖骸布」 木原武一訳 文芸春秋 1985

P103 現在、チューリッヒの南数マイル、タルウィルの小ぎれいな郊外に住み、六十四歳になるがかくしゃくとしたフライは、聖骸布のシャーロック・ホームズといってよかろう。サー・アーサー・コナン・ドイルのホームズは、容疑者の靴や服についたほこりを分析して犯罪の謎を解いたが、ちょうどそれと同じように、フライも顕微鏡的物質の分析によって国際的な名声を確立している。

ウィルソン、コリン

「現代殺人百科」 ドナルド・シーマン共著 関口篤訳 青土社 1988

P32 マクドゥーガルトが発見したのは、人間の精神のもっとも基本的で重要な原理の一つだった。私はかつてこの原理を寓話の形にまとめたことがある。次のようなものだ。霧の深いある十一月の朝、シャーロック・ホームズとワトスン博士がベーカー街の家で暖炉の両側に坐っている。ワトソンは新聞はすみずみまで読みつくした。退屈であくびを始める。口を開くのも大儀のように彼は言う。「マンクロフト卿が亡くなったようだな、ホームズ。あの人には会ったことがあるのかね?」。ホームズは答える。「ああ、会ったことがある、ワトソン君。現実問題として、マンクロフト卿に会ったのが私の探偵稼業でもっとも奇怪な事件の一つの始まりだったよ。この事件のこと、聞きたいかね?」。ここでワトソンは突然大きく目を見ひらく。ところで、なにがワトソンをそうさせたのか? 最初は、この答えはホームズのように考えられる。しかし、そうではない。ワトソンがホームズの言葉に反応したのは事実である。しかし、熱意をもって期待するという態度をその身に集中しているのは「彼」である。自分の感覚を刺激する一種の内部ボタンを押したのはワトソン自身だ。理論的には、ホームズの言葉がなくても、彼はそうする可能性はあったのである。

ウィン、ディリス

「ミステリの母たち」 HMM1986,6月号、「マーダレス・インク第十七章 女性の手になるミステリ」所収 ディリス・ウィン編 長野きよみ役

P101 彼にとってのワトスン役、ポリー・バートンが手がかりを持ってくるのを待つあいだ、老人ひもに複雑な結び目を作っては、注意深くほどき、そしてまた結びはじめる。

P102 読者は、目もくらむばかりの風変わりな探偵たち(たとえばシャーロック・ホームズなど)のなかから一人を選んでもいいし、

植草甚一

「ミステリの原稿は夜中に徹夜で書こう」 早川書房 S53

P53 いい題だなあと思った。「裸が一番の変装術」ですね。おもしろい本だよ。シャーロック・ホームズの話。

P70 デイビッドのほうは「バスカービル家の犬」を、まだちいさいときに読んだせいか、犬にたいする恐怖感があった。

P102 けれどポーが発見した素晴らしい推理のやりかたやコナン・ドイルのやりかたは、まだ知らなかったのである。

P172 (フットレルの)その短編はシャーロック・ホームズ物についで有名になったが、日本では作品がほとんど紹介されていない。

P182 これは六番目のエリック・ラウトリーの「探偵小説のピュリタン的楽しみ」(中略)で、これもわりあい新しいもので一九七二年の発行で副題が「シャーロック・ホームズからファン・デル・ファルクへ」となっています。

P183 十一番目はニューヨークの本屋で見つけたサミュエル・ローゼンバーグによるシャーロック・ホームズの研究書です。コナン・ドイルの研究家は大勢いますが、そのいちばん新しいもので、「裸が一番いい変装だ」(中略)という題が魅力的なので読みたくなって買いました。

P200 このポーの後で出てくる代表的な作家としてはやっぱりコナン・ドイルになるんだろうと言ったあとで、

P217 それからこんどはシャーロック・ホームズの時代になってきますが、この赤いのが「ストランド・マガジン」(図23)と申しまして、これは赤になっておりますが、じつはこれは色々な色を使った表紙で、絵柄はいつも同じでした。(中略)コナン・ドイルがシャーロック・ホームズの短編をこの雑誌に書いて、この雑誌そのものが非常に有名になったわけです。

P239 シャーロック・ホームズとかルコックとかファーザー・ブラウンとか、そういった架空の人物が出てきましたが、それが非常に一般的な人気を得たために、実在の人物のように受け取られるようになります。そういった意味で神話的存在になるというわけですね。シャーロック・ホームズにしろ、ブラウン神父にしろ、探偵作家が頭からひねくり出した人物が、当時は非常に人気があった。

P234 それからまたシャーロック・ホームズになるわけなんですが、この「シャーロック・ホームズ・コンパニオン」が面白い本なんです。ついでにこれもあとでゆっくり説明することにしましょう。

P239 このまえはシャーロック・ホームズあたりで終わりましたが、これからお話しする「探偵小説の黄金時代」が、この本の六〇ページ目あたりから書いてあります。

 (中略)シャーロック・ホームズの短編集が当時からとても売れたものですから、その影響を受けて、(中略)短編小説の傑作二十篇を挙げるとどうしても六編はホームズになっていると、(後略

 (中略)ホームズの影響を受けて探偵小説を書いた人たちは、その当時から大勢いますが、(中略)そのパズルと推理の面白さですが、かりにホームズのが二十四カラットの純金だとすると、ほかのみんなは九カラットぐらいの腕前しかなかったと考えていい。

P240 この(ヴァン・ドゥーセン)教授はホームズのように何でも解決できる教授だけれど、そこには馬鹿馬鹿しくなるような解決もある。

P244 シャーロック・ホームズが毎号でたのが「ストランド・マガジン」でして、フリーマンもそこに出てきたんで自然に日本で紹介されたという経緯があります。

P247 シャーロック・ホームズのリバイバル

 さてこんどはこの「シャーロック・ホームズ・コンパニオン」です。(以下約三ページにわたり、「コンパニオン」について

P252 シャーロック・ホームズの仲間たち

 (以下3ページにわたってハジェットの插し絵

P255 このまえの講義では、シャーロック・ホームズのあとで、いろんなタイプの短編作家が出てきて、その短編小説が黄金時代に先だつ最初の段階であったことを、

P256 短編小説の時代は、ポー、ドイルに始まって、だいたい三十年間が短編形式の探偵小説が流行した時代でした。

P259 シャーロック・ホームズに反撥したE・C・ベントリー

P260 ベントリーは、ユーモアの要素が多い人なんで、シャーロック・ホームズが、自己主義であると同時に、いつもまじめくさって調査をしていたのが大嫌いだったそうであります。

P263 だいたいこのメースンというのは、コナン・ドイルと同じように、歴史小説を書きたかったと同時に探偵小説へ向かった。この場合は通俗歴史小説で冒険ですから、暗い面がなかった。ところが、コナン・ドイルのほうは非常に暗い面を書きたい気持ちがあった。

P271 (A・E・マーチの「探偵小説の発展」の)第十章が「シャーロック・ホームズ」になりまして、(後略

 (中略)シャーロック・ホームズの前の第九章ですが、

P294 ちょうどコナン・ドイルが歴史小説のほうで有名になりたかったのに、ついシャーロック・ホームズを書くのが本職になってしまった。

P325 そのころはシャーロック・ホームズが登場したころにブッかっていて、

P333 アーチー・グッドウィンというのがワトスン役、

P357 それは三十年以上も前のことですが、ジョン・バリモアのシャーロック・ホームズがありました。もちろんサイレント時代ですけれど、ジョン・バリモアはルドルフ・バレンチノとならんで当時の映画界きっての二枚目俳優でした。そのジョン・バリモアがシャーロック・ホームズに扮したんですが、いまはもう誰も知らないし、覚えていないのは、場面が夜で緑色なんですね。その頃はフィルムに染色して、全体が赤になったり、青になったりするんですが、悪漢の巣窟の地下室にシャーロック・ホームズが入っていきます。そのとたんに電気が消える。するとホームズは葉巻を喫っているんですね。真暗なところにその葉巻の火だけが赤く染めてあるわけです。それがこんなふうに真暗な中を右から左へと移動するんです。するとこの左のすみのところでボコンと赤いのが停ってしまうんです。と思うとパッと電気がついて明るくなるんですが、そのとき悪漢がみんなやられて倒れているという場面になったので、うまいなあと思ったのが忘れられません。

ウォーレス、アーヴィング

「「新聖書」発行作戦」 宇野利泰訳 SB S56

P436 「(前略)追求したくても、行先が見当たらない。ぼくのシャーロック・ホームズには隠退してもらわねばなるまい。

「第七の機密」 中田耕治訳 二見文庫 S61

P4 現場に残されたものからあり得ないものを消去していってみたまえ。およそ考えられないことでも、それこそが真実なんだよ。

                        コナン・ドイル

海野十三

「地球を狙う者」 「十八時の音楽浴」所収 HB S51

P239 「ふーん」と僕は探偵きどりで呻った。そして本気でもって、これまで愛読したシャーロック・ホームズ探偵の活躍する小説の一つ一つを思いだして、その中からこの場の参考になるものはないかと首をひねった。

I  I  I  I う I  I   I  I  I 補追 I

どこにでもいるシャーロック・ホームズ