黄昏の怪人たち

(ネタバレ注意!)

「贋作館事件」(原書房1900円)というアンソロジーが出版された。ホームズ、ミス・マープルといったいわゆる「名探偵」のパロディ・パスティッシュ短編集である。そのほか収められている探偵達は、ブラウン神父、黒後家蜘蛛の会、ルパン、法水麟太郎、顎十郎、退職刑事、そして明智小五郎と二十面相が登場する「黄昏の怪人たち」である。

ものがたりは黄昏にみる幻想談としてはじまり、二十面相と明智小五郎がかたる事件を記録してあるという体裁である。最初の出だしはよく雰囲気をつかまえているといえるが、だんだんそれがだれてくるのは仕方があるまい。特に中村警部と明智の会話がまるで学生同士の暇つぶしの会話のようなぞんざいなものになってしまっているのは惜しまれる。真犯人として人間豹の恩田を出してきたところもかなり原作を読み込んでいる作者の優れたところがでていると思う。しかしどうせやるのなら明智にピストルの弾の抜取をやらせておけばおおいに受けたのに、とは思っている。

明智文代が実は高原療養所にはいっていなくて、小林義雄に変装しており、小林はさらに花崎マユミになっていたというのもなかなか秀逸なアイデアである。ちょうど文代といれかわりにマユミは登場することになっていたからだ。とはいっても入院は1949年、マユミの初登場は1952年だからこの三年間のブランクはどう説明したらいいのだろうか?もっとあいだがあいていなければすっきり説明できたのに残念である。マユミの引退は1953年の秋ごろであるから、この「黄昏の怪人たち」事件はそのころに起こったのだろう。「人間豹」は1931年の事件だからその22年前、恩田は当時二十台だったとしたらもう四十半ばを過ぎているとおもわれる。

しかし全般的に見て、このパロディは乱歩の雰囲気をよくつかんだ、ほかにあまり見ることのないよくできた作品だといえよう。

(99/9/4)