2000年代以降の山中峯太郎関連文献



『心霊写真』 小池壮彦、宝島新書、2000年2月24日 p94〜97に、峯太郎が三條信子名義で書いた「霊界放送」の内幕が述べられている。石川雅章が企画した記事だと本人が著作で暴露していると述べている。
『雑本展覧会』 横田順弥、日本経済新聞社、2000年3月6日 p98〜99に「『敵中横断三百里』の謎」と題して、『騎兵斥候 露軍横断記』(明治45年)がその「ネタ本」のひとつであり、「さらに『騎兵斥候 露軍横断記』も『敵中横断三百里』も、いくつかの別人のエピソードを織りまぜているらしいことも判ってきた。その根拠といえそうな書は、以前に買ってあったのだが、このほど再読してみて、よりその感を強くした」と述べられている。
「山中峯太郎」 尾崎秀樹、『逝く人の声』、北溟社、2000年10月20日所収。p.68-70 『俳句界』に平成九年から「逝く人の声」の題で連載していたものを一冊にまとめたもの。峯太郎との初めての出会い、峯太郎の経歴、中国革命時代の回想をまとめるようにすすめたことなどがかかれている。
「亜細亜の決断」 秋月達郎、矢矧零士、学習研究社、2001年1月〜2002年8月 架空戦記。峯太郎とは直接関係ないが、新聞記者として「本郷義昭」という登場人物がいる。また乱歩の「怪人二十面相」の登場人物と同じ名前の「羽柴壮一郎」という実業家も登場する。
「山中峯太郎著作年表抄」 秋山憲司、「文学と教育の会会報」第40号、平成13年3月 峯太郎の作品目録。尾崎秀樹の年表にも記載のない作品もある。
『ぜんぶ余禄』 山田風太郎、角川春樹事務所、2001年6月8日

<戦前は講談社から出ていた『少年倶楽部』が大成功だったんですよ。『少年倶楽部』には少年向きの読み物として、吉川英治の『神州天馬侠』、山中峯太郎の『敵中横断三千里』などが連載されて、ものすごく人気を博していたね。僕は『神州天馬侠』の挿絵を画いた山口将吉郎や、『敵中横断三千里』の挿絵を画いた樺島勝一に夢中になったんですよ。>(52〜53ページ)

(掲示板に法水さんからの情報)

「満州国の遺産」 黄文雄、光文社、2001年7/30 p192に「しかし、山中峯太郎の回想録によれば、孫文は彼の紹介で、王統一の私邸において上原勇作元帥と秘密会談をしたとき、日本の予備将兵と兵器三個師団分の支援と引き換えに、満州の特殊権益を譲渡するという交換条件を提示している(『夢いまだ成らず−評伝山中峯太郎』尾崎秀樹著、中央公論社、一六七−一七八ページ)」という記述がある。

「解説」

北原尚彦、「ジキル博士とハイド氏」所収、ロバート・ルイス・スティーヴンスン、夏来建次訳、東京創元社、2001年8月31日

この本の解説中で「山中峯太郎の研究家でもあるシャーロッキアンから、彼の持っていない山中峯太郎の本と物々交換で譲ってもらったもの」とあるのは、不肖このHP解説者のこと。

「本棚探偵の冒険」

喜国雅彦、双葉社、2001年12月10日

p373-374の対談で、学校図書館にあったポプラ社のホームズ、ルパン、乱歩についてふれて、

彩古◆ホームズは内容に問題があるので出ていない。復刊しようという動きもあるみたいだけど、難しいんじゃないかな。

石井◆問題って何ですか。

日下◆中身が原文と違うんですよ。ジュニア向けのダイジェストという範囲を大きく超えて、内容を改竄している。

喜国◆当時だから、翻案に近い感覚でやってたんだな。でも面白かったんだから、素直に復刻すりゃいいと思うけどな。

「明治時代は謎だらけ」

横田順弥、平凡社、2002年2月6日

「日本古書通信」に1997年に掲載された「漱石の弟子を希望した山中峯太郎」「もうひとつの『敵中横断三百里』」「海にも出てきた薄井秀一」を掲載している。

「回想の乱歩・洋一郎・峯太郎」

秋山憲司、「少年探偵王」鮎川哲也監修、芦辺拓編、光文社文庫、2002年4月20日

山中峯太郎研究協会顧問の秋山氏による、ポプラ社の少年もの乱歩、ホームズ、ルパン出版秘話。峯太郎のホームズにかける情熱がよくわかる。

「熱砂の旭日旗 パレスチナ挺身作戦」

林信吾、清谷信一、経済界、2002年5月29日 架空戦記ものの一冊で、日露戦争で奉天、鉄嶺を挺身探索した井坂大尉らが、大一次世界大戦でアラビアに派遣されてロレンスとともにトルコ軍とたたかうという話。「井坂挺身隊の行動は…後年、この冒険的な偵察行動をもとに、『敵中横断三百里』という物語が創作され、大きな人気を博すことになる」とあるように、建川挺身隊をモデルにしている。

「熱砂の旭日旗 2イラク打通作戦」

林信吾、清谷信一、経済界、2002年8月30日 上記の作品の第二巻で、あまり好評ではなかったのか最終巻である。最終的には井坂大尉以外は全滅、大尉はアイルランド独立運動に参加するらしい。

「「スパイ王者」について」

佐竹剛 「ホームズの世界25」日本シャーロック・ホームズ・クラブ、2002年12月

山中ホームズの「スパイ王者」のスパイの背後にはモリアーティがいた?

「麺ロード遥かなり」

新保博久、「本の雑誌」2003年3月号、本の雑誌社 研究協会顧問の新保先生によるエッセイ。「ポプラ社の山中峯太郎による名探偵ホームズ全集で、おそろしく大食いに翻案されているホームズとワトソンが旺盛な食欲を発揮するのは、読んでいて小気味よかった」と、麺には直接関係ないが、山中ホームズの健啖ぶりが紹介されている。

「誰も書かなかった日本陸軍」

浦田耕作、PHP研究所、2003年8月11日

元陸軍特別幹部候補生による、陸軍の機構の解説と思い出。

p1 単行本では、山中峯太郎さんが建川美次陸軍中尉(後に陸軍中将)と六勇士の、日露戦争の冒険と武勲を書いた『敵中横断三百里』をはじめ、『亜細亜の曙』は愛国心と勇気を、南洋一郎さんが書いた『ルックネル艦長』は、冒険心をかき立てた。

p182 山中峯太郎さんの書いた『陸軍反逆児』にも、陸軍予科士官学校での「ディ」と「カディ」の問題が書かれているから、大正時代にもあった確執なのだろう。

「陸大物語」

甲斐克彦 光人社NF文庫、2003年11月13日 陸軍大学校を卒業した軍人たちの評伝。初出単行本は『人物陸大物語』(光人社、昭和六十三年三月)。
208-212ページに陸大二十五期である峯太郎と、『敵中横断三百里』について述べられている。『敵中』の映画化は評価しているが、『亜細亜の曙』のテレビ版は「笑いながら見る以外にない」という評価である。
「なみの早熟度ではない。きっと同級生も上級生も、あるいは教官までが、幼く見えたころだろう」と峯太郎の天才ぶりを評価しているが、中国革命に参加した彼が「もともと、こんな性格だから、夢が去るのも早い。革命の内実もさりながら、同じ人間とはいうものの、国民性のちがいは、理屈では分かっていても、生理の方がどうしても拒絶的に反応する。見えない壁、こせない川だ」として峯太郎の革命の挫折を解釈している。
「戦後はさしたる文筆活動も聞かぬまま、昭和四十一年四月二十八日、死去」というのは、「名探偵ホームズ」ファンにはなっとくがいかないだろう。

「海洋アジアと連帯する新生台湾と日本の出番」

鈴木満男、「正論」、2004年6月号 p272

 「山中峯太郎の“武侠小説”が、戦中派までの世代の日本人に感銘を与えたことは非常なものだった。『少年倶楽部』に載った彼の小説の中には、たしか「亜細亜の曙」という題名のものがあった。その題目自体が大アジア主義の神髄を物語る。それらの少年小説から当時の日本の子供らが学んだものは何だったか。それは素朴ながら大局的なアジア認識であり、その裏打ちとしての強い愛国心だった。ちなみに、山中自身が陸軍大学を中退して大陸に渡り、大活躍した人物である。彼の筆力が少年達を感動させたのも道理だった。」

「黒澤明「敵中横断三百里」を見る」

山本一力、「文芸春秋」2004年6月号

 峯太郎についての記述はないが、黒澤脚本の映画についての感想が記されている。この映画は日活の石原裕次郎主演「嵐を呼ぶ男」と同日公開であったそうだ。

「黒澤が描こうとした映像は、すでにスケールが大きく、美景である。なかでも雪原を駆ける騎馬シーンは、デジタル映像全盛のいまだからこそ、実景の美しさに胸を打たれた。」

「『黄金仮面』カーチェイス事始」 

原克 『江戸川乱歩と大衆の二十世紀』国文学解釈と観賞別冊、2004年8月、p101-108 冒頭が『亜細亜の曙』の冒頭部分の引用から始まり、「小説『亜細亜の曙』が、特急列車の速度感覚を表象の出発点にしているのは、象徴的な出来事である」として、昭和初期の速度革命について論じている。

「敬体の探偵たち」 

宮川健郎、『江戸川乱歩と大衆の二十世紀』国文学解釈と観賞別冊、2004年8月、p200-207

『少年倶楽部』にのった「大衆児童文学」は敬体ではなく常体のものがおおいとして、そのひとつとして『敵中横断三百里』冒頭部分を引用している。

「怪人二十面相の魅力」 

河原和枝『江戸川乱歩と大衆の二十世紀』国文学解釈と観賞別冊、2004年8月、p233-240

『少年倶楽部』の代表作の一つとして『敵中横断三百里』に言及。

『シャーロック・ホームズの失われた事件簿』

ケン・グリーンウッド編、日暮雅道訳、原書房、2004年11月

「訳者あとがき」で、

 あえて乱暴な言い方をするなら、ラズボーンの位置は日本における山中峯太郎訳のホームズに近いのではないだろうか。児童向けの翻訳(というより翻案)である山中訳ホームズは、原作離れと「派手さ」で批判の対象になったが、最近になってその面白さを再評価する動きがある(「山中峯太郎研究協会」なる団体まであるのだ)。山中訳ホームズは、読みようによってはホームズ・パスティーシュととることもできる。

『近代日本奇想小説史』第三十回「戦後仙花紙本の奇想小説1」

横田順弥、『SFマガジン』2004年10月号

 峯太郎の『見えない飛行機』『世界無敵弾』『絶海の黒星博士』に言及あり。最後の本は書影ものせられている。

『日露戦争日記』 多門二郎、芙蓉書房、2004年11月15日 本書は『余ノ参加シタル日露戦役』(高橋書店、1910)として発表され、『多門二郎 日露戦争日記』(芙蓉書房、1970)として復刻され、さらにあらためて復刻出版されたもの。峯太郎の親しい先輩であり、本書は峯太郎の日露戦争関係本の重要な参考書となったとおもわれる。同じ著者の『弾雨を潜りて』(昭和2年)も参考のこと。
『中村屋のボース』 中島岳志、白水社、2005年6月20日 インド独立の志士ボースは日本に亡命し、孫文を通じて当時東京朝日新聞の記者山中峯太郎と知りあう。   p70〜75「東京朝日新聞社・山中峯太郎」で、その様子が記述されている。またこのことについては外務省記録にも残っていると著者は述べている。
『占領下の文壇作家と児童文学』 根本正義、高文堂出版社、平成17年7月11日 昭和二十年代に発行された児童文学を網羅しており、コレクターにとっては欠かすことのできない文献といえよう。
『原田実の日本霊能史講座』 原田実、楽工社、2006年10月20日 p388〜389に、「山中峯太郎の連載「霊界通信」」という章がもうけられていて、峯太郎が「主婦の友」に三條信子名義で連載した心霊ものの記事について言及している。この作品は純粋にエンターテイメントととして書かれたにもかかわらず、結果として霊界通信という概念の定着につながっていくと、原田は述べている。

『やんちゃな宮様総理 東久邇宮稔彦王」

鹿島茂、『宮家の時代』2006年10月30日p112-13 以下のような言及が見られる。
「士官学校では『敵中横断三百里』で人気を呼ぶ小説家・山中峯太郎が一級上にいて、その影響から内田魯庵訳のトルストイ『復活』を読ん
で物議をかもす。明治天皇の御耳に達してしまい、臣籍降下まで検討された」

「原作よりも面白い? ポプラ社版『名探偵ホームズ』」

 

北原尚彦、『発掘! 子どもの古本』ちくま文庫2007年1月10日p30-39

ポプラ社版ホームズシリーズの紹介。本来あるべき順番が一覧表でまとめられているのが便利。

また「シャーロック・ホームズボン」や南洋一郎翻案の「ルパンシリーズ」についてもまとめられてある。。

「ミステリ・ファンのはかなくも楽しい夢」 森英俊、「マイナー街道一直線」、「本の雑誌」2007年10月号p60 峯太郎の翻案「黒猫」について。
「怪犯人の行方」 山中まね太郎(新保博久)、『日本版 シャーロック・ホームズの災難』(北原尚彦編、論創社、2007年12月25日)所収。 ミステリ評論家で峯太郎研究協会顧問の新保博久氏の幻のパロディの初商業出版化。初出は同人誌「帝王」9号(1978年3月)で、2001年に新保氏が限定十部で復刻し、さらに2002年には「山中峰太郎研究協会報」に分載された。
これはドイルの遺品から発見された「指名手配の男」という短編を峯太郎風にリライトしたものである。残念ながらこの作品は後にファンがドイルにおくりつけたパスティッシュであることが判明している。
「お気に入りミステリー」 新保博久、讀賣新聞2008年6月29日、18面 「お気に入りキャラクター」のなかに「シャーロック・ホームズ in 『名探偵ホームズ全集』(山中峯太郎翻案)」を挙げている。「キャラクターは大食い探偵を3人。だからホームズはポプラ社版の翻案にかぎるが、これも絶版。『日本版シャーロック・ホームズの災難』(論創社)収録の拙作イミテーションでしのんでもらうしかない」と、上の書籍を紹介している。