ぼくたちの甲子園 高校野球名勝負列伝・地方大会編
No.3 2003.5.11



福井の野球を見せつけろ! 
(平成12年 第82回夏の選手権・福井県大会決勝 福井商業高校対敦賀気比高校 )

 福井商業・北野監督が涙を流した。敦賀気比の最後の打者を打ち取ったときだった。公式戦での敦賀気比戦の連敗を10で止めたときだった。そして,4年ぶりの甲子園出場を決めたときだった。
 
 福井商VS敦賀気比。県内を代表する両雄の決勝戦は20世紀最後の夏・福井県大会に相応しい内容となった。大会前の評判からも本命・敦賀気比、対抗・福井商の図式ができあがっていた.だが,意外にも勝ち上がってくるのに苦戦したのは本命・敦賀気比の方だった.2回戦の相手・福井高校は今大会のダークホースに挙げられ、敦賀気比が全国4強入りを果たしたときの渡辺監督が率いていた。ちょっとした運命のイタズラ、そう思うと何が起きても不思議ではなかった。試合は9回2死まで5−4、福井がリードしていた。敦賀気比のバッターは4番の李。気比ナインはベンチで泣いていた者も多かった。主戦・内海も負けを覚悟していたと言う。こんな状況で打席にたった李は初球を場外に叩き込む同点ホームラン。試合も10回裏にサヨナラ勝ちした。まさに漫画のような終わり方。本命VSダークホース。勝負を決めたのは本命の執念だった。
 敦賀気比は準決勝でも若狭相手に苦戦した。1−2と9回までリードされていた。しかしあの2回戦を経験したナインにもはや敗戦の言葉は無かった。土壇場に追いつくと、その後今大会一と称される主戦・内海が熱投。延長13回についに4−2と勝ち越した。春・目の前から逃げていった甲子園の切符を手に入れるまであと1勝とした。

 対する福井商は終始安定した勝ち方で決勝まで上がってきた。今まで怪我に泣かされてきた左右両エース山岸・吉田が夏に間に合ったことは大きかった。後に北野監督はこう語った。さらに大会中に北野監督は山岸・吉田が入学したとき「この投手力なら甲子園に何度かいけると思った」と語った。しかし、両エースは故障、最後の夏にようやく完全体を見せつけた。準決勝の足羽戦でも右の山岸が16奪三振の完投。18年連続で福井県大会の決勝に進んだ。相手はライバル・敦賀気比。これまで公式戦10連敗。両エースを武器に敦賀気比・内海と李に挑む。

 7月31日月曜日、快晴。福井県営球場で甲子園を賭けた戦いの幕は開けた。先制したのは福井商。2回表、1年生・渡辺の内野安打で内海から先制した。3回裏、敦賀気比の反撃が開始。スクイズと内海のセンター前ヒットで逆転に成功した。5回表、今度は福井商が2死2塁からライト前に運び同点に追いついた。その後は福井商は吉田から山岸に繋ぎ、敦賀気比は内海が踏ん張る。試合は延長戦にもつれ込んだ.10回表2死2塁,バッターの福井商主将・尾崎は疲れの見える内海の高め球を捕まえ右中間に3塁打を放ち3−2と勝ち越した。10回裏、最後のバッターを山岸がショートゴロに打ち取ると、審判のコールも待たずして一斉にマウンドに福井商ナインが駆け出した。

 20世紀最後の福井県大会は終わった。福井商・吉田−山岸、敦賀気比・内海が織り成した素晴らしき投手戦を記憶に残して。北野監督が「ヒーローはいなくても選手全員を誉めてやりたい」と語れば、敦賀気比・古谷監督も「みんなよく頑張ってくれた。胸を張って欲しい」と語った。また福井商・尾崎主将は「敦賀気比に勝ったチームという誇りを持って甲子園に行く」と語り、敦賀気比・林主将は「僕たちの分も頑張って欲しい」と語った。

 がんばれ.福井商、そして感動をありがとう,敦賀気比。
 
 福井商は大会四日目の第一試合で静岡代表の浜松商と対戦する。22年前1978年の春の選抜大会決勝で対戦した両校。このときは浜松商が勝ち優勝を果たしている。
 20世紀最後の夏、甲子園の魔物は福井商にリベンジの場を与えた。

(2003.4.21 written by せいち)

 


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