ぼくたちの甲子園 高校野球名勝負列伝・選手権大会編
No8 2003.7.24
準々決勝で散った背番号1
(平成12年 第82回選手権大会 準々決勝 柳川対智弁和歌山)
今でも忘れることのできない試合がある。11回裏、ある投手の最後の夏が終わった。一度も笑顔を見ることなく・・・。
2000年夏の甲子園、準々決勝智弁和歌山と柳川の試合である。この両校は春の選抜でも対戦しておりその時は1-0で智弁和歌山が勝利している。柳川のエース香月がインタビューで
「夏に必ず甲子園に戻ってきて、借りはかえします。」
と言ったのをおぼろげながら覚えている。この言葉どおり、柳川は夏の予選も難なく突破し、甲子園へと駒を進めた。当然のことながら好投手香月を擁する柳川は優勝候補の筆頭でした。そして、智弁和歌山との春の対戦から約半年、準々決勝で因縁の智弁和歌山と対戦することになりました。
試合は7回までに相手のエラーやヒットで着実に得点して投げては香月が好投し、柳川が6-2とリードしていました。この日の香月の調子からして間違いなくこのゲームは柳川が勝ったも当然でした。
しかし、8回好投していた香月に異変が起きます、あきらかに7回までのピッチングとはまったく違うピッチングになっていたのです。球速は急激に落ちボールが荒れ、誰が見ても香月に異変が起きたこと分かるくらいおかしなピッチングになっていました。原因は手にできていた豆が潰れてしまって、ろくにボールが投げれる状態じゃなかったのです。そしてこの回ついに香月が智弁打線につかまります。3番・武内がライトスタンドにホームランを放ち、3点差になり、そのあと6番・山野がレフトへ3ランを放ち同点に追いつきます。並の投手なら間違いなくこの回で逆転もしくは9回にさよなら負けをしていたでしょう。おそらく手を傷めた後の香月の球は智弁和歌山の選手にとっては打ちごろどころか、遅すぎる位の球だったと思います。
しかし、さすがは香月です、9回、10回と再三のピンチをコナーをつくピッチングと気迫、野手の好プレーで切り抜けます。味方も香月を援護しようとしますがなかなか得点に結びつかず、ついに11回裏、香月の手が限界を超えます。もうこの時の香月は気合だけで投げていたと思います。四球でたまったランナーを智弁和歌山の後藤にライト線を破るサヨナラヒットを打たれます。こうして香月のリベンジは果たされることなく最後の夏が終りを告げました。
もちろんこの試合の主役は香月良太投手でした。この試合で香月が手を傷めることなくこの試合に勝っていれば、この夏の大会の優勝は香月良太率いる柳川高校だったでしょう。本当に準々決勝で敗れるには惜しいチームでした。
(2003.7.24 written by toshi)