マンテル事件







1948年1月9日、アメリカ・ケンタッキー州のゴッドマン空軍基地に、ある奇妙な知らせが届いた。  基地の北東のメイスビルやアービントン等で、朝から上空を舞う不審な飛行物体の目撃が相次いでいるという。

目撃した一般人や警察官らの証言によると、物体は80〜90メートルもの大きさの巨大な円盤で、 極めて高い速度を保ちつつ、西へと飛び去ったという。







  それからまもなくして、物体は基地付近の上空にも姿を現した。  基地の管制塔内から目撃した人々によると、物体は円錐を2つ重ね合わせたような形で、直径約100メートル。   それぞれの頂点に赤い光が灯され、一定周期で明滅を繰り返していた。

また、表面は全体的に光沢の無い銀色、乃至灰色だが、縁の部分は赤く、高速回転しているようだったという。

事態を重く見た基地司令官は急遽、付近を飛行していた部隊に連絡を取り、物体への近接確認を命じた。  命令を受けたのは、ベテランパイロット、トーマス・F・マンテル大尉率いる4機のP51戦闘機隊であった。







  発令から約一時間が経過した頃、物体を追跡中のマンテル大尉から、ようやく最初の無線連絡が入った。  「物体は本機の正面上方にあり。 さらに上昇し、追跡します。」 

さらに20分後には、「物体は依然、正面上方にあり。 本機のほぼ半分に等しい、時速290kmの速度で上昇中。  物体は金属製と思われる。 途方も無く巨大です。」との連絡が入った。

この時点で他の3機は、航空における酸素不足から追跡を断念、付近の飛行場に着陸していたが、 マンテル機のみは、なおも物体の追跡を続け、上昇していた。

10分後、再びマンテル機から無線連絡が入った。  「現在、高度4500メートル。 物体は依然として正面上方にあり。  本機とほぼ同じ、時速470キロメートルの速度で上昇中。」







だが、この連絡を最後にマンテル機からの通信は途絶え、レーダー画面上からも機影が消失してしまった。  直ちに捜索が開始され、墜落したマンテル機の残骸は、基地から約150km離れた地点で発見された。  残骸は大小様々なおびただしい数の破片となり、1キロ四方にも渡って散乱していたという。 

後日、軍当局はマスコミに、同事件に対する公式見解を発表した。 それは要約すると以下のような内容。 

「事件当日、一般人を含む多くの人々により目撃された物体は、 金星の見誤りと思われる。 墜死したマンテル大尉もやはり金星を追って高空に昇り、 酸欠状態に陥って意識を失い、墜落したものと考えられる。」

だが、それから1年後、軍は前の発表を撤回、物体は当時、秘密裏に運用していたスカイフックと呼ばれる大型気球であるとした...







以上が、マンテル大尉事件の一部始終である。
この事件は当時、アメリカ中の新聞が「空軍機、空飛ぶ円盤を追跡中に謎の墜落!!」などと、 センセーショナルな見出しをつけて報じた為に、多くの誤解が生じてしまったという。 現在では、軍の気球誤認説を支持する者が多い。

だがその影で、同事件には未だに不審な点が数多いとの見方もある。
とりわけ多くの人々により指摘されてきたのは、空に関する知識に富むパイロットが、 金星或いは気球を未知の金属物体と見誤ることなどあろうか? という点である。







そもそも、物体に最後まで追いすがったマンテル大尉は第二次大戦中、ヨーロッパ戦線で数多くの戦果を挙げ、 勲章も授かったベテランパイロットなのである。 非公然とはいえ、気球との区別さえ付かなかったというのだろうか?

また、マンテル機の最期に関して、軍の発表は、事実とはまるで異なるデタラメと評した者もいる。
事件から数年後、当時、基地の管制塔内にいた元空軍関係者らによると、 公表された記録では最後とされていた無線通信の後にも、彼は再び報告を行っていたという。

彼は酷く取り乱した様子で、 「これは一体どういう事だ!? 物体の中に人間がいる......何人も!!」 と叫んだそうだ。







彼が死の間際に、無線を通じて語った「人間」とは一体何か?   軍がひた隠す秘密兵器の搭乗員達か、それとも、地球外生命体の姿か?  或いは、高空における酸素不足がもたらした幻覚に過ぎなかったのだろうか? 

さらに、残骸の中から発見されたマンテル大尉の遺体は、 「バーベキューのよう....」 と形容されるほど、無残に焼け焦げていたという。 

これは同機が、墜落後に激しく炎上した事を物語るに過ぎないのだろうか?   「残骸が広範囲に渡り、散乱していたのは、マンテル機が空中で大破したからだ。」  そう語った者もいるのだ。
こういった憶測を裏付けるかのように、事件後、軍は彼の遺体の検死報告書の公開を、頑なに拒み続けたという。 

事件から半世紀以上を経てもなお、真相は謎に包まれたままである。   




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