時空のゆがみ




謎の霧 のイメージ



今回ご紹介するのは、60年代に南米アルゼンチンで起こった有名な怪事件。

1968年6月3日、アルゼンチンに住む弁護士のジェラルド・ビダル夫妻とその妹のローカム夫妻は、 親戚の家に向かって、深夜の国道を車でひた走っていた。

先導していたローカム夫妻は、ふと前方に霧の様なものが立ち込めていることに気が付いた。   だが、夜霧など左程珍しいことではなかったので、特に気にも留めずそのまま車を走らせたのである。  霧の中は視界が悪く、後方を走っていたビダル夫妻の車も視認出来なくなってしまった。 

数秒後、難なく霧を抜け出たローカム夫妻だったが、ビダル夫妻の車は中々姿を現さない。  『霧の中で迷っているのかもしれない』 そう思ったローカム夫妻は車を停め、彼らの到着を待つことにした。 だが、いくら待っても彼らは一向に姿を現そうとしない。

 次第に不安になってきたローカム夫妻は元来た道を引き返し、付近を探し回るなどしたが、 やはり彼らの姿は何処にも見当たらなかったのである。 すっかり霧の晴れた後に行われた警察の捜索活動も一向にはかどらず、 ビダル夫妻の行方は全くつかめぬまま、徒に時だけが過ぎていった。

事態が急変したのは、それから2日後の6月5日のことだった。  遠くメキシコシティのアルゼンチン領事館からビダル夫妻の元に一本の電話が入り、 失踪中のビダル夫妻を保護していると告げたのである。

夫妻の無事を知り、安堵しつつも、彼らは一つの大きな疑問を抱かずにはいられなかった。
『何故、そんな遠いところに...』

数日後、ブエノスアイレスの空港に降り立ったビダル夫妻が語ったところによると、 あの日、ローカム夫妻の車に続いて霧の中へと入った際、何故か突然気分が悪くなり、眼の前も真っ暗になって、 そのまま気を失ってしまったという。

再び意識を取り戻した時、彼らは見知らぬ土地を走行していた。 いつの間にか夜は明け、空には太陽が燦然と輝いていた。  だが、先導していたはずのローカム夫妻の車は何処にも見当たらない。  不審に思い、車を降りた彼らは、そこで思わず息を呑んだ。



 
焼け爛れた車 のイメージ(※ちょっと焼け過ぎ) 



なんと、彼らの車はあたかも高熱にでも晒されたかのように、ボディーの塗装が全て焼け落ちていたのである。  事態の異常さに気づいた彼らは、すぐさま道行く人々に助けを求めた。

そこでようやく彼らは、 ここがアルゼンチン国内ではなく、メキシコの首都メキシコシティである事や、 自分達が気を失ってから、既に丸二日が経過していることを知った。 捜査に当たっていた警察は、無論この話を信じなかったが、捜査を進めるに従い、彼らの証言を信じざるを得なくなったという。



以上が、60年代に起きたビダル夫妻失踪事件の一部始終です。
既にお気付きかもしれませんが、この事件は以前にご紹介した、フィンランドにおける医師の奇怪な体験(※事例7参照)に酷似しています。

いずれの場合も、車での走行中、奇妙な霧、或いは発光体に遭遇。 それらとの接触が元で、ごく短時間の内に、 尋常ならざる距離を移動という経過を辿っています。

彼らが遭遇した奇怪な霧や光の正体とは一体何だったのか? 現在までに様々な説が提示されてはいるようですが、 はっきりとした結論には至っていません。

だが、少なくとも彼らは幸運であったといえるかもしれません。 他の多くがそうであるように、時空を超越した亜空間の虜とならず、再びこの世界に戻ってこられたのだから。




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