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TAKO
By 鹿島麻美 |
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声にならない叫び声を上げて、リョーマは既に何度目か分からなくなった熱を吐き出した。
弛緩した身体を柔らかなベッドに沈めて、過ぎた快感の余韻に足の爪先をピクピクと震わせる。 シンと静まりかえった部屋の中に、ゴクリと液体を嚥下する音と1人分の荒い息が響いていた。 「ひ、あっ……!」 怠い身体を跳ね上げて声を出したのは、未だ自分の足の間に顔を埋めている手塚に、放ったばかりで過敏になっている場所を、ちゅる……というイヤラシイ音と共に吸い上げられたせいだ。 「や、っ!」 慌てて手塚の頭を両手で掴み自分から引き剥がそうとしたリョーマだったが、今度は長い指先にそろりと撫で上げられ、努力は徒労に終わってしまった。刺激に思わずギュッと瞑った瞼から、パタパタと透明な滴が手塚の顔に降り注ぐ。 「リョーマ……」 普段の冷静な声音からは想像もつかない甘く欲情した声で名を呼ばれ、リョーマはそっと瞼を開く。ぼやけた視界が目だけで愉しそうに笑う手塚の顔を捕らえた途端、悔しくて唇を噛んだ。 「……もう、いい加減にしてよねっ、俺ばっか……!」 更に刺激を加えようと動き始めた指先を、手の甲を軽く抓ることで阻止したリョーマにそう言われると、手塚は反対側の手をリョーマの頬に伸ばし、流れ続けている涙を指先で優しく拭った。 「気持ち良かっただろう?」 「……限度がっ、あるじゃ……んんっ!」 言い終わる前に指先の動きが再開されて、リョーマはたまらずに手塚の髪を軽く掴んだ。それでも手塚は指を動かすことを止めず、幼い快楽を引き出そうと愛撫をより深いものへと変えていく。 「……くにみ……や、あっ、あっ、あっ」 指先での愛撫に加えて大きく開かされたままの太腿の内側に強く吸い付かれ、手塚の髪を掴んだリョーマの指の力が緩む。それを待っていたかのように薄目の唇に再び幼い自身を含まれ、変声期前の喉が甲高い啼き声を上げた。 「お前は本当に可愛いな……」 手塚は一度リョーマ自身から唇を離すと、そう言って小刻みに震える身体を慰めるように、太腿から腰を優しく撫でた。 その刺激にさえ声を詰まらせるというのに、負けん気が強過ぎるリョーマは、反抗の意志を伝えるために猫のような大きな瞳で手塚を睨み付ける。 「……かわい、って言うな!」 「いや、お前は可愛い……」 「るっ……さいってば! 言わないでよ!」 「可愛い物は可愛い。真実を言ってるまでだ。お前は本当に可愛い……そうだ、可愛い、可愛いぞ」 「………………」 殆ど聞いたことのない、いや、初めてだろう言葉を何度も反芻する手塚の反応に、リョーマは思わず言い返しそびれてしまった。 何事かと少し呆然としてしまっているリョーマを余所に、手塚の視線はリョーマのそれから逸らされ、目の前にある一点へと移動する。 「お前は可愛い……何処もかしこも、そしてココは特にだ」 「!!」 ココと言われた場所に軽くキスをされて、ダイレクトな刺激は確かに脳に伝わったが、言われた事に対する怒りの方が快感を凌駕した。 「なっ、何言ってんのアンタ! バカにしてんの!?」 「馬鹿になどしていない。実際に可愛いんだから仕方ないだろう。小さいのに健気に震えて可愛いじゃないか」 「〜〜〜〜〜〜!!!」 その物言いが馬鹿にしていなくて何だろう。確かに大人に、いや、並の大人を蹴り殺す勢いで立派に成長している手塚自身に比べたら、年齢的にまだ成熟しているはずがない自分のモノは、サイズもお子様なら形状もまだお子様だ。 だからと言ってこうして裸で抱き合っている最中に、こんなデリカシーのない発言はあんまりではないか。しかも散々その可愛いココをいたぶってくれた後に。 怒りで二の句が継げないリョーマを無視して、手塚の勝手な発言は続く。 「可愛いな……。俺の人差し指より短いぞ。太さは微妙な所だな……いや、可愛らしい太さに変わりはないが」 「……っ、そんな細いわけあるかぁっ!!」 やっとの思いで怒りの声を上げながら、リョーマはふと頭の片隅で思う。この人って、こんな下品なことを言うような人だっただろうか……? 「いや、これはぴったりな太さだ。立派なタコさんになれる」 「へ?」 「俺としてはカニさんも捨てがたいのだが、王道はやはりタコさんだろう。そうは思わないか?」 「…………」 何を言っているんだろう、この人。アタマおかしくなった!? っつーか俺の幻聴!? 大混乱に陥り始めたリョーマのソコは、何やらブツブツ呟いている手塚の指先で続けていじくられまくっていたが、もうとても反応を返す余裕はなくて。 「俺としてはポークビッツじゃ物足りない。これぐらいが丁度いいサイズだ。一番可愛らしく見えるし美味そうだ」 「……く、く、く、く」 「鳩の物真似ならポッポーの方が分かり易いぞ」 「鳩じゃないよ! 国光何言ってんの!?」 「タコさんかカニさんか、重要な話だ」 そう言うと手塚はリョーマに、四隅が丸くなっている長方形のプラスチックケースのような物を数個差し出した。 パステルカラーのそれは、蓋になっているらしい部分の表面に、手塚が今言っていたタコさんやカニさんの、コミカルなイラストがプリントされている。 タコさんイラストの物を手に取った手塚がパコッと蓋を開けると、内部はそこに何かを挟めば、タコの形に切り込みが入るだろうと予想される溝がデザインされていた。 「何ソレ? それよりこんなのどっから出して……」 「見れば分かるだろう。型抜きだ。可愛いお前のココがもっと可愛くなるぞ」 ニコッと笑った手塚(ギャア)が片手に蓋、片手に型を持ち、嬉しそうにそれをリョーマ自身に近づけ、両側から挟み込もうとする。 「ち、ちょっと待ってよ! アンタおかしいよ! どうしちゃったの!?」 「タコさんはおかしいか? お前の好みではなかったか……。アメリカではデビル・フィッシュと称される生き物だからな。仕方ないか」 いや、そうじゃなくて、アンタがおかしいんだ! と、リョーマは言いたかったが、いつもと違いすぎる手塚の思考回路に付いて行けず、ポカンと口を開けているのが精一杯だった。 「ならばカニさんでいいか? カニならアメリカでも食べるだろう。すまないがチューリップは許して欲しい。お前には海の幸の方が絶対に似合うと思う。海はいいぞ……うん」 一人納得し、そう言って今度はカニさんの型抜きを手ににじり寄る手塚から、ハッと我に返ったリョーマはなけなしの力で後ずさることで逃れようとするが、少し下がっただけで背中に壁が当たってしまい、逃げ道を失ってしまった。 「イ、イヤダー! くるなっ!!」 「怖くないぞ。可愛くなるんだからな。逃げないで大人しくしていろ」 「誰がするか! 側にくんなーっ!」 近づく笑顔の手塚の恐怖に、思わずリョーマは足を振り上げる。だが簡単に足首を掴まれ、逆に強い力で膝を押し曲げられてしまった。 立てた両膝の間には手塚の身体が、背中には部屋の壁が。もうしっかりと固定されてしまった小さな身体はビクとも動かせない。 「ギャーッ、離せ、このヘンタイ! 彩菜さーん!! 助けてー!!」 「睦み合いの最中に相手の母親を呼ぶとは、何を考えている」 「何だよムツミアイって表現!! アンタやっぱり何時の人!? 明治? 江戸? 水戸藩?」 「いいから、落ち着けリョーマ」 「これが落ち着いていられるかー!!」 先程とは違う意味で本泣きになっているリョーマを余所目に、手塚は手にした型を恐怖ですっかり縮み上がったリョーマ自身に再び近づける。 まさか、本気でこのままグイッと挟んで、自分のソコをカニさんにしてしまうつもりなのだろうか? リョーマの頭からザッと血の気が下がる。 「イヤー! やめてよ!! 無理だよ、そんなのに入りきらないよ!!」 「大丈夫だ。今、かなり可愛く縮んでいるから、ジャストサイズだと思うぞ」 「無理! イヤダ! やめてよ、国光っ!!」 無情にも自身の左右に固いプラスチックがあてがわれる。 「ヒッ!」 「ちょっと押せば可愛いカニさんリョーマの出来上がりだ。楽しみだな……」 フッ、と笑った手塚の指先に、グッと力が込められた。 『いやぁぁぁあああああぁあぁぁ――――――!!!』 耳を劈く悲鳴にその場にいたレギュラーの全員が、発生源であるリョーマの方を見た。 確か彼は休憩時間に入った途端木陰で横になり、1人でグースカ眠っていたはずだ。 いつもクールなあの越前リョーマとは思えない悲鳴に、よほど恐ろしい悪夢を見たのだろうと全員が思った。 起き上がっても目は一点を捕らえたまま(だが視覚としては機能していない)微動だにせず、少し離れた場所にいた手塚にまで荒い息遣いが聞こえてくる。 「越前の悲鳴なんて、初めて聞いたな……。乾汁を飲んだ時でさえ、あんな声は出さなかったのに」 「……ああ」 悲鳴に似た声なら何度も聞いたことのある手塚は、隣に立つ副部長に相槌を打つ。 「ふふ、よっぽど怖かったんだろうけど、可愛い声だったね……あれ? しかも越前泣いちゃってる?」 同じく隣に立っていた不二の言葉に内心ギョッとした手塚は、リョーマへと再び視線を戻した。しきりに手の甲で瞼をこすっている姿が目に入る。 流石に心配になって側に行こうとした手塚だったが、リョーマの一番近くにいた桃城に先を越されてしまった。桃城は半笑いの顔で「おいおい、ダイジョーブかぁ?」と言いつつ、リョーマの肩を叩いている。 その桃城に肩を叩かれたリョーマは、何かに目覚めたようにキッと顔を上げ、辺りをキョロキョロと見回した。そして見つけた手塚と視線があった途端憤怒の形相となり、スックと立ち上がるともの凄い勢いで手塚の目の前までダッシュして来る。桃城は視界に入らなかったらしい。 「越前……」 「俺のをカニさんにしようなんて、このヘンタイサド!!」 何だ? と尋ねる前に呆気にとられる内容を叫ばれて、思わず手塚は目を見開いてしまった。 小さな恋人は怒りまくって我を忘れているらしく、真っ赤な顔と真っ赤な目をして涙をポロポロ流しながら、地団駄まで踏んでいる。ただ事ではない。 「タコさんもカニさんも冗談じゃないよ! 何が王道だよ! 大体あんなのに挟まれたら千切れちゃうじゃんか!! 国光、俺の無くなってもいいと思ってんの!? あんなに舐めまくってたくせにぃぃっ!! しかも自分のがデカくて太くて立派だからって、俺のを可愛い小さい可愛い小さい可愛い小さいって、余計なお世話!! 誉め言葉になると思ってんのっ!? 海の幸フェチの武士のくせにっ!!」 リョーマの言葉に手塚を含むその場の人間全てが絶句し、不二はすっかり開眼モードに入っていた。 殆どの人間がエサに群がる鯉のごとく、阿呆な顔で口をあんぐり開けている。滅多に見られない青学レギュラー陣の姿だ。 しかしそんなレギュラー陣は端から眼中にないリョーマは、ただひたすら石像のように固まってしまった手塚を睨み付けていたが、突如「にゃろうっっ!!」と悔しそうに叫び、ベンチの上に置いてあったテニスボール缶を指さした。 「いつかあの缶より太くでっかくなって、国光の口に入りきらないようになってやる! 二度とタコさんやカニさんにするなんて言わせないからねっっ!!」 トドメにそう叫ぶと満足したらしく、意気揚々とラケットを振り回しながら(持っていたらしい)、リョーマはテニスコートの方へスタスタと歩いて行ってしまった。 残されたレギュラー陣の視線が、痛いほど手塚へと集中する。 「……キミ、越前が悪夢に魘されちゃうような、どんなオイタをいつも彼にしてるわけ?」 いち早く衝撃から復活していたらしい不二に上目遣いで問い掛けられ、手塚の額から一筋の汗が流れた。 「……………………妄想気味な夢を、見ただけだろう」 たっぷり二十秒は経った後ようやく手塚が口にした返事は、しかしその場にいる誰もが信じることはなかった。 夢を見ただけで、タメ口でしかも先輩の名前を呼び捨てにするような後輩は普通はいない。 リョーマが白昼夢だったという現実に気が付くまで、あと十歩。
END♪
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