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Power of a pupil【大石Ver.】
By 大貫ユエ |
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「おーいしっ!」
と、俺を呼ぶ声がして振り返る。 しかし、呼んだ張本人は何を言う訳でも無く、黙ったまま俺をまっすぐに見ているだけ。 それがゲームの始まりの合図。 先週の日曜日。英二と出掛ける約束をした。でも、その日はあいにくと雨で、出掛ける予定はお流れ。それで、英二は俺の家に遊びに来たのだけど、その時からこのゲームはずっと続いている。 『至って簡単! 俺が何考えてるか当ててみー』 とか言って。 俺たちペアの意思の疎通度を確かめるようなことを理由に、持ちかけられたゲーム。 普通の人間なら、他人が何を考えているかなんて、解る筈が無い。 俺だって、最初は今までの付き合いから得た記憶を頼りに英二の仕草や表情で、たまたま当てただけ。 本当に、たまたまだったんだ。 英二が最後に出した問題(?)は、さっぱり解らなかった。 その癖、英二の瞳は思い切り何かを訴えていて。 当ててみろなんて……。 大きめの瞳で、必死に何かを訴える君。 ねえ、英二。 そんな目で見られたら、自惚れてしまいそうだよ。 自分がそんな表情してるって、気付かないの? だから、俺は『他の人に……そんな顔しちゃダメだよ』 と、思わず口から出してしまったんだぞ。 で、それから英二はちょくちょくその表情で俺を見るから、まいってしまう。 降参しても、ぜったいに教えてくれない。珍しく頑なまでに教えてくれない。 弱ったなぁ。 いつまで続くんだろうか? そんなに必死に俺を見ないでくれないか? こっちも、必死に心の奥に隠してる気持ちが、あるんだ。 部活が終わって帰る前に終わらせなくてはいけない雑用をしている間、英二は黙って俺を待っている。 一言も喋らない。 こんなことも珍しい。まさか、寝てるとか? さすがに気になって顔を上げると、俺の向かい側に座った英二は数学の教科書を開いていたので、これには驚いた。 「何かわからないところがあるのか?」 と、声を掛けると英二はパッと顔を上げた。 「明日、小テストあるんだけど、ちっと解らなくて」 はいはい。 「もう少しだから、待ってて」 「うん、サンキュー」 そんなやりとりをして、俺は書き掛けの日誌の続きを急いで書きながら、気付いた。 俺、こんなことならすぐに解るのにな。 日誌を書き上げて閉じて、改めて顔を上げると英二が俺を見ててバッチリ目が合う。 あ、まただ……。 また、あの瞳で俺を見てる。 ドキッとした。 「英二」 名前を呼んで、一呼吸間をおく。 「何?」 「もう、そのゲームは終わりにしないか?」 きっと、いつまでも解らない筈の答え。 「何で?」 英二は首を傾げて、教科書を閉じてしまう。 「だって、答えが解らない」 俺の言葉に、英二の表情が変わった。 悲しそうな表情に。 「あのさ……言いにくいんだけど……その目で他の人を見たら誤解されるよ」 「誤解?」 「そうだよ。英二が自分に気があるんじゃないかって」 英二の瞳はそんな瞳。だから、俺も困る。 このまま続けたら、マズイ事情がある。 英二は黙り込んでうつむいた。 「英二……あのさ」 言い掛けてやめた。自分が言おうとした言葉を飲み込む。 「大石……解ったよ。もう止める」 小さく呟く声は、掠れていて胸が苦しくなった。 「でも……でもさ、大石」 英二は顔を上げる。 今にも泣きそうな瞳。 俺は、君をそんなに悲しませるようなことを言ったのか? 「俺は、大石以外にはこんな風に見てないから……」 えっ? 「誤解じゃなくて……俺、他の人はこんな風に見ないかんな!」 いきなり語調を強くして、俺に爆弾を投げつけた英二は立ち上がると勢いのままに立ち上がって走り出そうとした。 「英二っ!!」 立ち上がり、慌てて腕を掴む。 「…………」 「…………」 無言で英二の腕を掴んだままの俺。 腕を掴まれたまま立ち尽くす英二。 英二、自分が何を言ったか解ってるのか? 俺は緊張してふるえそうな足に力を入れた。顔が熱くなって来る。 英二、俺は言っても良いのか? 今まで、何度も言い出しそうになって、慌てて胸の奥にしまいこんだ言葉を。 君が好きなんだ…………。 「この前も言ったけど……これからも、俺の前だけにしてくれるか?」 ハッと顔を上げて振り向いた英二の瞳から、涙がこぼれ落ちた。 思わず、涙が伝う頬に指先を伸ばして触れてしまい、そして涙の冷たさに我に返った。 こうやって触れることよりも前に、言うべきことがあるだろう? 落ち着け、俺!!
END
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