山田詠美 著
角川書店(角川文庫)
『放課後の時間割』が
小学生のときに
出会ってよかったと思う本なら
この『放課後の音符』は、
高校生のころのちょうど放課後に
出会ってよかったと思う本です。
高校の図書室は
少しほこりっぽくて
書架と書架の間の通路も、
窓から少しの日の光が射すほかは
なんだか薄ぐらい印象がありました。
ここは、学校でいちばんゆっくり
時間が過ぎる場所だった気がします。
そんな学校の図書室で
あざやかな装丁のこの本
(当時は文庫ではなかった)
を手にとって開くと、
自分の年齢と同じ
高校生の主人公の身近な言葉で
だけどとても美しい文章が
語られていました。
たくさんの本が
静かに並ぶ中から、
自分の好きになりそうな
本を選びとることの
楽しさを知ったときでもあります。
主人公の「私」は
同級生や先輩の、
真剣で美しく
ときにはなまめかしくも
思える恋愛の話を聞いたり、
見守ったりする役割です。
彼女たちに起こるできごとは、
恋愛の経験がない「私」には
理解できなかったり、
自分には早すぎると感じることが
多いみたいです。
「私」は、自分に経験がないといっても、
他の人の恋を思いやったり、
そして、美しいものには素直に感動したりできる子です。
10代のころのわたしはこの「私」よりももっと幼く
他人の気持ちなんて理解することができず、
うわさ話が好きでひがみっぽくて
なんだか作品中で何度も否定されてる
「その他大勢の女の子たち」な感じだったので・・・
ちょっとだけ恥ずかしかったです。
(今読み返しても、
やっぱり自分はあのころよりたいして成長していない気がするし)
いちばん心に残る一編は「Crystal Silence」です。
美しくてだけど音のない南の島の風景が目に浮かび
音の代わりに眩しさや暑さや
きーん、と頭痛みたいなせつなさが伝わってきます。
こんな美しいお話が自分たちの年代のために書かれていて、
それを読んで自分も「とろりん」とできたのは
ちょっとした幸せであったと思います。