10.弁護側の証人
ようやく仕事が終わる。もっと早く終わる予定だったのだが、結局遅くなっている。最終の新幹線に間に合うのか危ない時間だった。
横浜駅で片道の切符を買う。銀行に行くひまもなくて、ポケットの中が心細い。これを買っただけで、あとは新幹線の中で飲むビールしか買うことが出来ないだろう。しかし大阪までついてしまえばなんとかなることになっている。
新幹線は横浜駅から出るわけではない。横浜線に乗って新横浜まで行く必要がある。だから横浜駅では30分後以降の新幹線の切符しか買えないことになっている。しかし最終ののぞみの時間まで30分を切っていた。切符を買う窓口で少し交渉が必要だった。
「出てしまったら特急券の払い戻しはできませんけどよろしいですか?」
「今からだと間に合いませんか?」
「わかりません。」
電車の接続によっては微妙な時間になっていたのだ。
新横浜に電車が到着するなり走らなければいけなかった。階段を駆けあがって新幹線の改札を通過する。プラットホームへのエスカレーターを駆けあがる途中で発車の音楽が流れ出す。扉の手前の柵を全速力で駆けぬけて、列車に飛び乗った瞬間に背中で扉が閉まる。大きく肩で息をしながら可愛い奴隷の顔を思い浮かべる。
(間に合ったぞ。よかったな。逢えるぞ。逢ってたくさん可愛がってやれるぞ。)
ゆっくり自分の席を探して、タバコを吸った。疲れていたのだろう。すぐに眠りに落ちた。
列車が新大阪につく。プラットホームに降りて携帯に電話する。
「ついたぞ。今新大阪だ。」
「わかった〜 とりあえずミナミまできぃやぁ」
こいつ。。つく時間がわかってるはずなのにまだミナミで飲んでやがる。
「はいはい」
思えば、この時点でちょっとむかついていた。
地下鉄で難波に到着。どこになにがあるのかさっぱりわからない。とにかく地上に出て電話することにした。
「ついたぞ。どこ行けばいいんだ?
「どこにいるん〜?」
「ここにきぃやぁ これこれこーの、これだかの店にいるからー」
「そんなんわかるか。ばかたれ。大阪人じゃねーんだぞ。」
「え〜だからーどこにいるん〜?」
こ、こいつすでに酔っ払ってるくせー
「わかるかそんなもん。なんかNANKAIとかってかいてあるわ!」
「え〜? ちょっと替わるわ〜」
「あーもしもし、せーやくんです〜」
なに〜この女、主様迎えにもこんとせーやとデートしてたんか。しかもべろべろ。
「近くに何見える?」
「なんか、松屋とか、ミスドとか、なんちゃら銀行とかの看板見える」
「あぁあぁ、なるほどー そこからだとー とりあえず右斜め前に行ったってー。」
はぁ〜? どっちなんだよ。それ。
「はぁ右斜め前・・・って、あの道かな? なんちゃらって看板がある辺りの道?」
「うーん、多分それ」
だめだ・・なんとかなるかもしれん。もう面倒だから動いてみよ。
・・・迷った・・・・・
中学生のとき一人旅で大阪に来た事がありました。夜は駅で寝るような貧乏旅行です。しかし大阪は当時の自分にはほかの土地よりはるかにおっかなく感じました。みんなおっきい声でしゃべってます。みんな大阪弁です。東京弁でしゃべった瞬間にフクロ叩きにされるような気さえしてました。自分がエイリアンであることを隠して歩いているような心細さ。そんな不安を抱えて大阪の夜を歩いたものです。
そうそう・・・ちょうどこんな感じ・・・
俺金持ってねーじゃんかよ! 帰る電車はない! 知り合いもいない! 右も左もわからない! クソ奴隷はデートして酒飲んだ挙句べろべろになってる! どーすんだよ。 地べたに寝るのか?
「しゃーないなぁ 迎えにいったるわ。そこ動かんといてや。」
何回も電話しなおして、ようやくその言葉が聞けました。。。てーか、なんかおかしくねーか? まぁいいやとりあえずなんとかなるかもしれん。
そして待つこと十数分・・・ その後は・・・ 検察側の証人の言葉(「一月ぶりに・・・」参照)をご覧下さい。