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短編

    ニンゲン
―――ここは
  とある洞窟―――

「春日・・・本当にここでいいのか?“外”への道は」
「いいに決まってんじゃない!!私が1時間かけて探した情報に狂いはない!!」
「・・・もういい・・・・・・。」
二人のニンゲンの声が響く。暗く水音以外は静寂が支配する世界。
ニンゲン・・・太古の昔、外に住んでいた種族。でも、今は“内”と呼ばれる地下世界に住む種族。地下の環境はいい。12時間ごとに明滅を繰り返す光量の強いヒカリゴケ、これにより耕作ができる。空気は比較的乾燥していてジメジメしていない。そして、天敵がいない。そんなニンゲンは何故か“外”を目指す。理由?あるのか?ただ、古より伝わる文献に書かれたものの中にいくつか興味深いキーワードがある。
   曰く、『空に浮かぶ巨大な炎の玉、太陽』
   曰く、『夜に黒い空に穿たれる痕、月』
   曰く、『蒼天に散ばる宝石の群、星』
そして―――
   曰く、『果ての見えぬ巨大な湖、海』
同時に命が生まれし場所とある。
この二人もまた、“外”を目指す者。
でも、いつまでも続く何故か苔の生えない洞窟―――ここを通らねば外へは行けないらしい―――が絶えない。
そして、『帰って来れた者はいない』というありがちな話も二人の心を締め付ける。
「ああんっ!え〜とつべこべ言わずついて来やがれ!!夏夜!!」
「わかったって・・・。どうせ一本道だし・・・。」
そうして二人は歩き出した。
こっこっと響く二人の足音はまるで・・・そう・・・・・・破滅へのカウントダウンだった。
「ねぇ、夏夜。」
「なんだ?」
「楽しみだね。」
「ん?ああ、そうだな。でもはしゃいでる場合じゃない。これでだめだったら俺達・・・」
「解かってるよ・・・解かってるけどさ・・・。もう・・・あそこには戻れないし・・・。」
 少女の方の表情が僅かに曇る。それに気づいた少年はそれ以上に微かに眉根を寄せて言う。
「しかし、なんで“外”にでたらいけないんだろうな・・・」
「わかんない。長老ってモーロクしてたからさ。本当にそうということももう、わかんなくなっちゃったけどね。」
「だな。村がなく・・・」
「それ以上言わないで!!」
 少女は突然叫んだ。音が岩壁になんども反響した。
「もう・・・いいよ。これからは・・・2人で頑張るって・・・」
「判ってるよ。」
 少年は少女を抱きしめる。
「もう・・・俺達にはこれしかないって事も・・・・・・。」
 少年は少女を放し、手を少女の肩に置いた。
「生きようぜ・・・“外”で・・・な。」
「うん・・・。」
 2人は顔を見合わせ笑顔になり頷きあう。
「んじゃ、行きますか。風の地上へ。」
「そうしますか。海が広がる地上へ。」

そうして3時間後―――
「夏夜!!あれ!!」
「おお!!光!?“外”か!?」
黒い世界の向こうに光が一条。
「“外”に決まってんじゃない!走るわよ!!」
「オーケイ!!」
規則的に響く急ぎの旋律が絶え間なく。道を進む。
「夢にまで見た“外”よォ!!」
光がだんだん大きくなる。そして―――
「あははァ!!空気の流れ!?これが風!?眩しい!!太陽!?」
「ひれぇ・・・青くて、果ての見えない・・・う、海か!!これが・・・!!」
二人にあたるは風。二人が見下ろすは海。そして二人の頭上に輝くは太陽。
「・・・・・・・・・」
二人は声を出さなかった―――いや、出せなかったというべきか。
(なに・・・これ・・・・・・?)
(身体が・・・動かない?
二人の身体は放射能によって蝕まれていた。
二人はだんだんと悲痛な表情になり、なんとか首を動かし、見詰め合う。
(なつ・・・やぁ・・・・・・)
(か・・・すがぁ・・・・・・)
そのまま二人は動かなくなっていた。

人類は、核戦争を起こしていた。
そして、放射能を除去する装置を作り出していた。
大半の人々は地下へと逃げ延びていた。
装置のある所は絶対に核を投下してはいけないという暗黙の了解もあった。
ではなぜ人は地上へと帰れなかったのか?
それは、装置のタイマーが狂ってしまい、放射能が除去されなかった。

二人のいた地域は装置があった。
装置は二人が動かなくなって、3分後、動き出した。
そしてさらに10分後、地球上全ての放射能が除去された。
皮肉なことに、装置の影響で
“内”と“外”を繋ぐ通路は全てなくなった。
つまり、“外”でたニンゲンは一人もいなくなった。
 この三日前、一つの集落が落盤によって消えた。他の集落の救助隊は生存者無しと中央に報告した。

ニンゲン―――人が進化して地下生活に適した姿。そして大量の紫外線を浴びると・・・・・・その全ての活動が停止してしまう生物。

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