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新・アジア考

Vol.31
「越境放送の力
      〜アジア都市表象文化のなかで」

台湾のテレビは、ケーブルテレビを中心に、スターチャンネルをはじめ、日本語専門・英語専門など国際性にあふれる。
*新たなアジア・ライフスタイルの共通項

 現在、東・東南アジア地域は、経済的にも政治的にも注目を浴びているが、さらに文化の面においても近年新たな現象がみられつつあるようだ。じつはそれは放送を始めとするマスメデイ アの影響によるところが少なくない。以下ではこの新たな現象を考察したい。

 従来のアジアは、地域全体を一貫する要素を欠いていたといわれている。欧州の旧ローマ帝国に比較されるような全域を支配した国家を持たず、宗教も欧州のキリスト教に対して仏教・儒教・ヒンズー・イスラムを有し、言語的にも欧州の印欧語族に対して印欧に加えセム=ハム・ウラル=アルタイ・シナ=チベット・オーストロネシアを内包している。そのためアジアたりえるひとつの共通項ゆえにアジアと名づけられたのではなく、単に“非ヨーロッパなるもの”として地理的な便宜上、くくられたにすぎなかった。

 ところが近年、経済発展が東・東南アジアにおいて達成され、各国に中間層とよばれる新たな階層がうまれた結果、都市部で半欧米風半地元風のある程度豊かな文化−“都市民俗リミックス文化”−なるものが現れた。これは形式的・つまりハード面では欧米先進国の文化形態を引き継いでいるが、内容的・ソフト面にはアジア現地の伝統要素が生き残っている、というものである。一例として伝統料理(中華料理など)のファストフードや欧米の音楽形式にのっとったアジアポップスなどがあげられるだろう。こうした文化は、従来の国家・民族・宗教・言語といった枠組みを越えて、アジア各国で観察されている。しかも半欧米風であることを共通項として、各国の都市表象文化それぞれが互いに類似する結果となった。


*マスメディアのつくる消費社会、その発信力

 このような文化が形成される過程で、じつはマスメディアははかりしれない役割をはたしているのではないだろうか。衛星放送、さらにその影響を受けて地上波として制作される番組が、消費文化へ憧れを喚起し、消費ブームをひきおこし、さらにアジアの経済成長の助けを得て、現実の生活様式のうえに実現されている。しかも単に欧米文化の影響を受けるだけにとどまらない。最近ではアジア内でもマスメデイ アを介して同様の文化交流が行われるようになった。

 その重要な1アクターが、国境を越えた越境放送ではないだろうか。ここ10年、アジア発の越境放送は飛躍的に拡大してきた。例えば香港は95年から、アジア太平洋の全中華人をターゲットに、世界初の中国語による24時間放送の衛星ニューステレビ(CTN) を始めた。さらには香港が拠点のTVBS、ギャラクシー・チャンネル、CETV、中国のCCTVなど、アジアをカバーする放送はここ10年のうちに急増している。香港のみならず、アジア全体でも情報発信が拡大しており、現在、約15の国際放送が存在する。

 しかし最も話題となったのは、やはり元香港発の“スターTV”だろう。91年秋に極東から中東の53ヵ国をカバーする広域衛星サービスを開始した。直接の受信だけでなく、アジア各国のケーブルTVで再送信されて人気を集め、視聴可能な世帯数は6000万世帯に及ぶと言われている。創業開始当時は英語を解する上流階層(全人口の5%)をターゲットにしていたため、放送量の8割を英語で実施していた(残りは中国語とヒンデイー語)。しかし消費社会の登場と共に一般市民もテレビを保有するようになったため、スターTVの使用言語も次第に現地語へと移りつつあり、放送後5年の時点で、開始当時と逆転して現地語(主に北京語)8割となった。その後、オーストラリアのメディア王に買収され、スタート当時の純粋性は失われがちであるものの、アジア放送業界に与えた影響ははかりしれない。(つづく)

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・参考文献 ;サイト「東アジアのマス・メディア」 鈴木雄雅


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