Vol.37
「共通アイデンティティーの獲得
〜汎アジア表象文化の萌芽4」
シンガポールの水上建築。東洋性と西洋性の融合
あらためて汎アジア的に観察され始めている「リミックス文化」の特徴をまとめておこう。@都市における消費社会を前提としている形式はA一見、近代的なようだが、内容は伝統的東洋である。B特に“表象文化”を中心に繰り広げられている。
特徴としてA内容が伝統的東洋である点が指摘されているが、これは消費文化という共通項を土台に、各国がてんでんばらばらに独自性を主張しているわけではない。むしろ独自性の優秀さゆえに、国境を越えて他のアジア地域へ影響を及ぼすことも多いのだ。
理解可能な程度の独自性・エスニック色は、相互作用の障害になりえず、むしろほのかな新珍さが魅力となり、海外の興味を引きつけ、より交流を促進するのである。さらにこれらの文化は特徴として・表象文化であることを併せ持つ。文化が国境を越える必須条件として、明快で万人に理解可能である点が述べられたように、表象文化は他地域に比較的受け入れられやすい。さらに消費文化という共通土壌も交流の助けとなるだろう。
このようなプロセスを通じて、「アジア各国がともに“共通の消費文化−西洋”と“適度にエスニックを帯びた表象文化−東洋”をリミックスして持ちつつある」現象は、極めて重要な意味を有している。歴史上前例のない、 汎アジア的な文化的共有が生まれようとしているからだ。
従来アジアには一貫した文化的要素が存在しなかった。アジアとひとくちに言っても、欧州の旧ローマ帝国に比較されえるような全域を支配した国家はいまだ存在しない。宗教も欧州のキリスト教に対して、アジアは仏教・儒教・ヒンズー・イスラムを有する。言語的にも欧州の印欧語族に対して、アジアは印欧に加えてセム=ハム・ウラル=アルタイ・シナ=チベット・オーストロネシアと多様である。もちろん伝統的な生活様式もアジア内でおおいに異なる。従ってアジアたりえるひとつの共通項ゆえにアジアと名づけられたわけではなく、単に“非ヨーロッパなるもの”として地理的にくくられたにすぎなかった。
しかし近年、経済発展が東・東南アジアで達成され、やがて南・西アジアへ波及しようとした結果、国家・民族・宗教・言語の枠組みを越えて、“都市表象リミックス文化”という新たな共通のアイデンティ
ティー をアジアが共有できるかもしれないのである。
岡倉天心先生も、100年前「アジアは一つ」と唱えている。ただし我々が追求すべきは、アジアの内発的な潜在力によって実現されつつあるアジアの一体性を、アジアの一構成員として積極的に援助し、協力することではないだろうか。
彼も本来は美または愛という立場からアジアを考えていた。我々もあらためて“文化”という立場にたって、ゆるやかな一体性をもちつつあるアジアを見守ってゆきたいと思う。
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バックナンバー
36「折衷≠ニいう才能〜汎アジア表象文化の萌芽3」
35;「タイムラグののち花開くもの〜汎アジア表象文化の萌2」
34「グローバル画一化とのせめぎあい〜汎アジア表象文化の萌芽1
33「受信から発信へ〜アジア都市表象文化のなかで3」
32「「国境を越えた、現代文化の相互作用〜アジア都市表象文化のなかで2」」
31「越境放送の力〜アジア都市表象文化のなかで1」
30「ネットワーク型の交流 〜アジアのリーダーシップとは」
29「共生・繁栄の試み 〜東アジア共同体1」
28「アジアのグラデーション 〜東アジア共同体1」
27「アジア文化のメジャー化 その1 〜日台交流その2〜」(アジア)
26「南隣とのおつきあい」(台湾)
25「オーガニックなエイジア」(アジア)
24「精神世界≠フ母なる大地」(アジア)
23「解決のキーを秘めた大地」(アジア)
22「今だからできること」(アジア)
21「自律の“背筋”としての機能」(アジア)
20「等身大でいられるのなら」(台湾と大陸中国2)
19「プラスサムの追求」(台湾と大陸中国1)
18「護りのちから」(北朝鮮2)
17「マインド・コントロールとメディア・コントロール」(北朝鮮1)

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