Vol.62
「ブロードバンド世界一をめざして
〜アジアIT社会その6」

*ネットカフェから・マンションから
「アスナの名前をネットで検索していたら、こんな記事が出てきたよ」
韓国の友人が、本人すら知らない現地新聞の記事を画面に表示してくれたことがある。さらに同様の記事の写しを送ってくれた娘さんもいた。
そんな韓国ネット世代の楽しむのは、ネット上のデジタル放送である。地上波放送との同時進行またはネット専用番組でなく、過去の地上波デジタル放送をでストック、放送局のウェブサイトのカレンダーをクリックすれば、過去の番組も視聴できるというものだった。日本で有線インターネット放送が一般化するより5年近くも早くのことであった。
これもブロードバンドの普及率が高いがゆえに可能なサービスだろう。なぜ日本以上に? そんな普及の背景として、大手メディアが分析する理由の一つが、ネットカフェ(「PC房」)である。専用の高速回線でプロバイダーと接続されているいっぽう、利用料金は1時間あたり100 円相当であり、わざわざ個人でブロードバンドに加入しなくとも、またパソコンを大容量に買いかえなくとも、安価で最先端の技術を使いこなすことができるためである。さらに(プレステのような個人専門機器でなく)、パソコンによるオンライン・ゲームの流行が、ネットカフェの流行を大きく後押ししたとも言われている。ちなみにオンラインゲーム市場の発展は、さらに国外にまでおよび、大陸中国のゲーム市場において、韓国ブランドが半数を占めているという。
一般家庭に向けてもまた、新築の大型マンションがブロードバンド完備をうたい文句にしはじめたため、入居すれば自動的にブロードバンドを使用できるようになっている。その結果、入居人数が一挙にブロードバンド人口をおしあげてゆく。(ちなみにブロードバンド接続のさいの回線は、ADSLとケーブルテレビが二分しているという。)
ほかにもインターネットで電話や放送をおこなうなど魅力的なサービスが目白押しであるのも、さらなる利用者をうながす。現在、若者の人気を集めているのが、ネット講座だ。放送大学に匹敵する高等教育のほか、英語・中国語などの語学講座も充実しているようだ。
何より政府が続々と「さらなる先端」をめざすIT政策をうちだした点も見逃せない。前世紀末の「サイバーコリア21計画」(99年発表)だけでなく、「e−コリア・ビジョン2006」(02年発表)、さらに「ブロードバンドITコリアビジョン2007」と次々に推進策がうちだされている。目下、めざすは世界最高の電子政府、全産業の情報化・国際競争力強化、デジタル福祉社会などだ。
その結果、韓国のIT関連産業は、国内的にも造船業や自動車産業を抜き、世界のトップレベルにおどりでるようになった。さらにデジタル利用機会(指数)のランキングでは、韓国が世界一を達成している。(日本は第三位)。ブロードバンド(100 世帯あたりの契約件数)に限れば、世界二位(25.4件)。(日本は17.6件で第11位)とくに韓国はFTTH(光ファイバーを各家庭まで)のサービスで、総契約件数(460 万件)の世界一を記録した。(05年・ITU/国際電気通信連合)(注・指数は、電話やインターネットの普及度や所得に占める料金の割合などを総合。11の指標について比較できる最新時点の統計を使い、1電話やインターネットの料金水準、2その普及度、3ブロードバンドの普及度に分類して加重平均したもの)。
これは余談だが、無線LAN 世界一の台湾は、世界的なブロードバンド化の進行を、指をくわえてながめているわけでない。中華電信は、2006年より5年がかりで全土に光ケーブルのネットワークを敷設すべく、500 億元(約2000億円)を投じている。台北県にかぎれば2004年、すでにADSLのブロードバンドを利用したインターネット放送(地上波番組、ケーブルテレビ番組、独自製作番組、さらに日本の番組など)やゲーム等のサービスを開始している。台湾でもまたダイヤルアップ接続は、過去のものであり、ADSLなどのブロードバンドが主流であるようだ。
これが東アジアNIESの現状なのだ。
*ブロードバンド500 倍速へ
アジアITのハブ(中心)をめざすべく、名乗りをあげるのがもう一国。シンガポールである。
かつてシンガポール友達と夜遊びにくりだしたすえ、出会った若者とのあいさつは、シングリッシュのお国柄らしく、英語のミドルネームで、さらに手渡された名刺に示されたのは、固定電話の番号でなく、eメールのアドレスであった。連絡ならここに、というわけである。それから数年ほどメール文通を続けたものだ。(10年以上、昔の話の為、時効)
あれから10年、かの地で進行しているのは、ITの10カ年計画「iN2015(インテリジェント・ネーション2015)」(02年発表)である。なかでも「国家ブロードバンド網(NBN )計画」として、光ファイバーを使い、2012年までになんと現在平均の500 倍速(最大毎秒1 ギガビット)のブロードバンド網を敷設するという。世帯普及率もまた2006年の52%から85%までへ−−なにもそこまで速くしなくとも、と思うのはアナログな筆者の独断であり、日本政府も総務庁を中心に、プロジェクトに協力している。電子商取引のメリットを最大限に享受するためだ。シンガポールといえば、地の利も生かしてアジア第一の株式市場を誇る。金融が推進インセンティブのひとつであるというのが、いかにもシンガポールらしい。
一定の速度以上をブロードバンドと定義するうえでは、一括の世界統計に現れにくいものの、水面下ではさらなるIT社会深化が着々と進行している。
(つづく)
(06/07)
*写真;ネットカフェの募集「PCゲームリーグ、参加ご希望のかたは受付まで」(ソウルにて)
*参考文献;詳細は
こちら
バックナンバー
61「無線LAN世界一の都市〜アジアIT社会その5」
60「東アジアの奇跡の果実〜アジアIT社会その4」
59「どうせやるなら3.5世代方式〜アジアIT社会その3」
58「ステイタス・シンボルから必需品へ〜アジアIT社会その2」
57「携帯普及率はひそかに世界一〜アジアIT社会その1」
56「それぞれのアジア〜アジアの精神的範囲」
55「ゆとりのくに〜台湾の都市風景」
54「アジアへのアプローチ3 〜東アジア共同体時代への対応」
53「アジアへのアプローチ2 〜フロンティアの消失?」
52「アジアへのアプローチ1 〜ブーム式の消費」
51「共存のすべ、協調性のひとびと 〜東・東南アジアの共通性3'」
50「共存のすべ、協調性のひとびと 〜東・東南アジアの共通性3'」
49「集住のすべ、集団主義のひとびと 〜東・東南アジアの共通性3」
48「集住のすべ、集団主義のひとびと 〜東・東南アジアの共通性2」
47「水と緑の大地 〜東・東南アジアの共通性1」
46「アイデンティティーとしてのアジア 〜アジアの魅力」
45「ヒトの往来、モノの交流 〜お隣のアジア人」
44「留学生10万人時代 〜お隣のアジア人」
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42「大いなる風景のなかで 〜アジア現代文化≠轤オさの萌芽2」
41「アジア現代文化≠轤オさの萌芽」
40「特効薬としてのアジア」
39「亜洲(アジア)とともに、アジア人として」
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37「共通アイデンティティーの獲得」
36「折衷≠ニいう才能〜汎アジア表象文化の萌芽3」
35;「タイムラグののち花開くもの〜汎アジア表象文化の萌2」
34「グローバル画一化とのせめぎあい〜汎アジア表象文化の萌芽1
33「受信から発信へ〜アジア都市表象文化のなかで3」
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30「ネットワーク型の交流 〜アジアのリーダーシップとは」
29「共生・繁栄の試み 〜東アジア共同体1」
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27「アジア文化のメジャー化 その1 〜日台交流その2〜」(アジア)
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