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新・アジア考

Vol.70
「最高学府2大学の選択
 〜アジア大往来時代その4」

                                   


*東大の決意

 大学の講義室には大型のスクリーンがはりだされ、インターネットを通じて、共通語・英語の授業が進められる。それを熱心に聞くのは、東大工学部の生徒と韓国・ソウル大工学部の学生たち。同じ時に同じ講義を異なる場所で受けるというわけだ。想像するだけでも胸がわきたつ。

 これは決して夢物語でない。2007年後期より実際におこなわれるという。しかもソウル大工学部は、その他にも中国の名門・清華大や日本の京大、東工大、阪大とも同様の国際共同講義を開設していくという。

 ところで近年、東大が国際化にのりだしている。

 総長の認識によれば、

「東大は日本の指導者ではなく、世界の指導者養成を目標とする。その上で問題となるのが、東大の国際化が遅れているという点」

であるという。

 今のところ東大の外国人教授陣は全体の5パーセントにあたる250 名にとどまっている。これを5倍にあたる1300名まで徐々に増やしていく方針をうちだした。ちなみに日本では外国人教授陣が最も多いのは上智大学の約48パーセントである。彼らを誘致するために、外国人研究者向けのゲストハウスを建てることも決定しているという。

*大学国際ネットワーク

 東大総長は語る。

「21世紀はアジアの世紀だ。東大は中国の大学と学術交流を進める拠点を作り、中国から優秀な留学生を迎えなければならない。」(「亜洲週刊」2005.5.15 号より)  東大の海外研究所は現在、22ヵ所とライバルである京大の34ヵ所に遅れをとっているところを、130 ヵ所まで増やす計画があるという。

 いっぽうの京都大学は、着々と世界各国の大学と学術交流協定を結んでいる。その数、56大学。既に中国では北京大学や清華大学など7校、韓国ではソウル大学や慶北大学など5校、そして最近、台湾大学と香港科学技術大学と、この2地域としては初めての提携を結んだ。  こうした変化の背景には、国立大学の法人化があげられる。大学もまた競争社会の波にさらされ、量ばかりでなく質の高さを求められ、また国内的にばかりでなく国際レベルのものを求められてくるからだ。

 こうなると、大学ネットワークが世界を覆うといった状況になってくる。学術は国境を越えた共通語なのかもしれない。

 そもそも優秀な学生の受入れは、大学内部のニーズにとどまらない、社会的な要請なのだ。一説によれば、少子高齢化が進むなか、現在と同じ活力を日本が保つためには、現在の外国人の比率を1。5 パーセントから25パーセントまでひきあげ、3000万人もの移民を受けいれなければならない計算となる。

 結果的に、その下準備となっているのが、「留学生受入れ10万人計画」だ。(詳細は本連載44回で述べたので割愛するが、)2004年以来、3年連続で目標値の10万人を突破している。さらに新たな目標もうちだされた。政府の「ゲートウェイ戦略会議」の一貫として、世界全体の留学生のうち5パーセントを受けいれるというものだ。これにしたがって換算すると、2025年には今の3倍近い数を受け入れることになるという。

 日本は小さな単民族国家となってゆくのか、それとも大きな多民族国家になるのか。

 たとえば「日本企業が労働力を求めて海外移転し、日本経済が空洞化するリスク」と、逆に「日本国内に労働力を呼び入れて、社会が不安定化するリスク」と、どちらが大きいだろう。一概に答えを出せない問題である。

              (07/05 )

              (つづく)

※写真;東京大学の静かな変化

*参考文献;詳細はこちら




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