月刊モダネシア-TOPに戻る
新・アジア考 ネット自由詩 日韓交流 新刊紹介 既刊紹介 連載紹介 Profile
新・アジア考

Vol.74
「韓流の源流は映画にあり
 〜アジア芸能交流2」

                                   


*国産への強い愛情

 韓国人4500万人、総国粋主義−−これは筆者が韓国と10年以上かけて、おつきあいしてきたうえでの実感である。韓国人は「我が国(ウリナラ)意識」が非常に強い。自国愛の強さは筋金入りだ。思うに韓流がこれほどパワーを持つのも、発信元からの強烈な照射があるからではないだろうか。

 その好例とも言えるのが、韓国映画の占有率である。2006年にはホラー&特撮映画『グエムル−漢江の怪物−』が空前のヒットを記録したことにより、映画産業に占める韓国映画の割合が、77パーセントを記録した。対照的にハリウッド映画は18パーセントにとどまり、日本映画に至ってはわずか約4 パーセントとなっている。国産への愛着と不可分なのが、スクリーン・クオーター制だ。韓国では年間の上映日数のうち2 割以上を国産映画に割り当てなければいけないという規定が、存在すること自体、自国文化への思い入れがうかがえる。同じアジアNIESといえども、台湾では国産映画の比率がわずか19%であるのとは対照的だ。

 かの『グエムル−漢江の怪物−』は日本公開にも成功しており、公開第1 週目のランキングでトップテンに入る第7 位を記録している。いっぽう公開第1 週目に最も高い興業成績を収めたのは、かのペ・ヨンジュン主演『四月の雪』。最終的な興業収入総額としても第2 位に入っており(27億5000万円)、220 万人の観客動員数を誇った。それでは最もヒットした韓国映画とは。答えは『私の頭の中の消しゴム』(2005五年/興業収入30億円)だ。ちなみに第3 位以下は『僕の彼女を紹介します』『シュリ』『ブラザーフッド』と続く。

 今や日本で韓国映画の上映されない日はないというほどになった。韓国映画の輸出本数は2005年が最多の61本(金額にして計6032万円)を数えるようになっている。

*アニメ業界の異変

 漫画のジャンルでも韓国勢が話題となった。雑誌「サンデーGX」に連載された『新暗行御史』−−李朝時代の隠れ官吏による勧善懲悪物語が、単行本として150 万部の売上げを誇るヒットを記録、アニメ化をはたしている。アニメといえば2003年の「東京アニメフェア」では、5 部門のうち3 部門で韓国アニメが最優秀賞を受賞するという健闘ぶりを示しており、韓流は漫画やアニメの分野にまで至ろうとしている。

 ただし国産に愛着がある韓国人と言えども、日本のアニメ・パワーには一目を置いているようだ。逆に韓国では日本アニメが好評を博しており、『ハウルの動く城』は観客動員約302 万人、『千と千尋の神隠し』(以上、宮崎駿監督)では200 万人を記録したのは記憶に新しい。一般映画としても『ラブレター』(岩井俊二監督)は140 万人の観客を動員した。

 アニメに並ぶ大衆文化として、日本勢が健闘しているのが、小説の分野だ。日本作品の占める割合は韓国の小説界において31パーセントと、国産の23パーセントを越えている。日本での話題作はわずかの時差で発行されているようだ。こうしたブームをさして、韓流ならぬ日流という言葉もある。

 そもそも10年前までは、アジアにおいて大衆文化といえば日本製が圧倒的であったところに、韓流が発生して、偏重が是正された。これは新しい傾向である。日韓においては、文化的越境が双方向性をもっているのが、ひとつの特徴と言えるだろう。

*継続的な発信能力

 韓流に話を戻そう。

 韓流において、ドラマが牽引役となっていることは、既に述べたとおりだ。こうした発信が、今や継続的なものとなりつつあるのは、日本の放送局によるばかりでない。韓国の公営放送KBSは、日本のスカイパーフェクTVに専門のチャンネルKNTVを開局した(2006年)。他にも韓国語専門チャンネルとしてK−chがあげられる。こうした動きに先行して、2003年より同KBSの第一ラジオが、日本のケーブルテレビ(「有線ブロードネットワークス」)に24時間放送をおこなってきた。こうしたCS放送の存在は、韓国人気を持続させるうえで、欠かせない役割を担っていることだろう。

 韓流といえば韓国ドラマが圧倒的な人気を誇るのだが、源流は意外にも、90年代の映画業界に溯る。火付け役は、映画会社シネカノンだ。この会社の配給した作品『風の丘を越えて〜西便制』(イム・グォンテク(林権沢)監督/1993年)が、流れを変えた。(物語は伝統歌謡パンソリ一家の放浪を描いたものである。)決定打は2000年に日本で公開された『シュリ』(カン・ジェギュ(姜帝圭)監督)だ。朝鮮半島南北間のスパイ同士の恋愛悲劇を描いたアクション映画で、日本では観客動員136 万人、興業成績16億円を記録している。それから6 年、2006年には歴代韓国映画上映本数としては、最多を誇る、105 本もの韓国映画が日本で上映されるに至った。

 これは余談だが、韓国ドラマが日本で放送されるまでは、韓国ブームの要因として、映画が第3 位(支持率14%)に挙げられていた。ちなみに第1 位はといえば、「グルメ」(同55%)。まだ在日韓国人たちの韓国料理店が韓国文化の温床であり、韓国といえばキムチ&焼肉の時代のことである。第2 位はと言えば、韓国旅行の目玉、東大門市場などを中心とする「ショッピング」(同16%)、第4 位にサウナ汗蒸幕(ハンジュンマク)などによる「エステ」(14%)が入っていた。

                           (07/12)

※写真;韓国の映画館のひとコマ

*参考文献;詳細はこちら




バックナンバー

73「『韓流』ブームの発生 〜アジア芸能交流1」
72「逆行する人的移動 〜アジア大往来時代その7」
71「移民たちの自由往来 〜アジア大往来時代その6」
70「最高学府2大学の選択 〜アジア大往来時代その5」
69「アジア学生は世界へ向かう 〜アジア大往来時代その4」
68「インフラの整備 〜アジア大往来時代その3」
67「お得意様の新顔・中国 〜アジア大往来時代その2」
66「近くて遠い・遠くて近い 〜アジア大往来時代その1」
65「ブログによる世界変革〜アジアIT社会その9」
64「ブログによる意識変革〜アジアIT社会その8」
63「ネット世代のムーブメント〜アジアIT社会その7」
62「ブロードバンド世界一をめざして〜アジアIT社会その6」
61「無線LAN世界一の都市〜アジアIT社会その5」
60「東アジアの奇跡の果実〜アジアIT社会その4」
59「どうせやるなら3.5世代方式〜アジアIT社会その3」
58「ステイタス・シンボルから必需品へ〜アジアIT社会その2」
57「携帯普及率はひそかに世界一〜アジアIT社会その1」
56「それぞれのアジア〜アジアの精神的範囲」
55「ゆとりのくに〜台湾の都市風景」
54「アジアへのアプローチ3 〜東アジア共同体時代への対応」
53「アジアへのアプローチ2 〜フロンティアの消失?」
52「アジアへのアプローチ1 〜ブーム式の消費」
51「共存のすべ、協調性のひとびと 〜東・東南アジアの共通性3'」
50「共存のすべ、協調性のひとびと 〜東・東南アジアの共通性3'」
49「集住のすべ、集団主義のひとびと 〜東・東南アジアの共通性3」
48「集住のすべ、集団主義のひとびと 〜東・東南アジアの共通性2」
47「水と緑の大地 〜東・東南アジアの共通性1」
46「アイデンティティーとしてのアジア 〜アジアの魅力」
45「ヒトの往来、モノの交流 〜お隣のアジア人」
44「留学生10万人時代 〜お隣のアジア人」
43「等身大へのしたて直し 〜アジア現代文化らしさの萌芽3」
42「大いなる風景のなかで 〜アジア現代文化≠轤オさの萌芽2」
41「アジア現代文化≠轤オさの萌芽」
40「特効薬としてのアジア」
39
「亜洲(アジア)とともに、アジア人として」
38「上海と台北 〜ふたつのパワースポット」
37「共通アイデンティティーの獲得」
36
「折衷≠ニいう才能〜汎アジア表象文化の萌芽3」
35
;「タイムラグののち花開くもの〜汎アジア表象文化の萌2」
34「グローバル画一化とのせめぎあい〜汎アジア表象文化の萌芽1
33「受信から発信へ〜アジア都市表象文化のなかで3」
32「「国境を越えた、現代文化の相互作用〜アジア都市表象文化のなかで2」」
31「越境放送の力〜アジア都市表象文化のなかで1」
30「ネットワーク型の交流 〜アジアのリーダーシップとは」
29「共生・繁栄の試み 〜東アジア共同体1」
28「アジアのグラデーション  〜東アジア共同体1」
27「アジア文化のメジャー化 その1 〜日台交流その2〜」(アジア)
26「南隣とのおつきあい」(台湾)
25「オーガニックなエイジア」(アジア)
24「精神世界≠フ母なる大地」(アジア)
23「解決のキーを秘めた大地」(アジア)
22「今だからできること」(アジア)
21「自律の“背筋”としての機能」(アジア)
20「等身大でいられるのなら」(台湾と大陸中国2)
19「プラスサムの追求」(台湾と大陸中国1)
18「護りのちから」(北朝鮮2)
17「マインド・コントロールとメディア・コントロール」(北朝鮮1)

PageTop

  Mail Copyright(C) 2001-2002 Mizuho Asna