Vol.76
「韓流、はるばるインドシナ半島に至る 〜アジア芸能交流4」

*キムチ味にプルコギ味
韓流の東アジア展開に話を戻そう。
台湾から南下することインドシナの半島、タイでは、グルメ・ブームと連動した韓流が吹きあれているという(2006年)。
そもそもタイも韓国も、同じ「唐辛子」食文化圏だ。いずれの国にも唐辛子味噌なるものが存在する。下味は違えど、タイでは「ナン・プリック・パオ」、韓国では「コチュジャン」の名で調理に欠かせないものとなっている。
そんなタイに登場したのが、韓国料理味のインスタント・フードたちだ。名前を挙げるだけでも相当な量に達する。魚の干物「タロ・フィッシュ・スティック」のキムチ風味や焼肉味。「テスト・ポテトチップ」や即席麺「ママー・オリンエタル・キッチン」のキムチ味。セブンイレブンでは韓国の豚焼肉(テジプルコギ)バーガーが売られている。ピザ・ハットのプルコギ味ピザ「マイティ・ミート」に至っては、『宮廷女官 チャングムの誓い』の韓服・頭髪の女性が広告に登場しているそうだ。ここでテレビドラマの名前が挙がったが、タイの韓流においても韓国ドラマの影響力が強いためだ。グルメで韓国ブームが起きるのに先行して、タイでは韓国ドラマの放送が増えていたという。
*韓国文化を時差なしに「消費」する
それでは同じインドシナ半島のベトナムにおいては。『宮廷女官 チャングムの誓い』は、ここでも根強い人気を誇っている。ベトナムではゴールデンタイムにベトナム中央放送局で放送された。その影響から、ベトナムの若者たちが、結婚用の記念撮影で韓服を着るのが流行しており、ホーチミン市には、韓服をレンタルできる結婚写真館が登場したという。そのほかにも、韓国ドラマに登場するインテリアがはやったり、韓国の美容院や料理店が増えつつあるそうだ。『宮廷女官 チャングムの誓い』は韓流をスター頼みから、韓国文化への関心を高める形に変化させたと前述したが、その好例がタイのみならずベトナムでも観察される。
アジアにおける異国の大衆文化のヒットといえば、日本の例が思い起こされるが、日本の場合、漫画やアニメ、トレンディ・ドラマなど、あくまでも現代ものの作品に限られており、日本の時代劇は圏外にあった。そのため日本の伝統文化は、アジアにおけるヒットとは一線を画している感があったのだが、韓国の場合は、キラー・コンテンツの一つとして時代劇『宮廷女官 チャングムの誓い』が影響力を持つことから、アジア諸国の視聴者に対して直接、韓国の伝統文化への注目を喚起した点、注目に値するだろう。韓流は一見、アジアの日本ブームに近似しているように見えるが、ここに日本作品のアジアでのヒットとは異なる特徴を見出すことができる。
伝統文化に力点が置かれていることは、ベトナムに東南アジアにおける唯一の韓国文化院(韓国大使館文化部)が存在することからもうかがえる。オープンしたのは2006年。以来、文化院の会員数を制限しなければならないほど応募が殺到しており、受容人員の5 倍以上に達しているそうだ。文化院の院長の分析によれば、ベトナムの若者たちは、インターネットの活用により、韓国文化を時差なしで享受しているという。最新のアンケート調査によれば、人気トップであったのは、俳優ではイ・ジュンギ、歌手ではスーパージュニアであったとか。ベトナム人は韓国文化を韓国人と同時に「消費」しているようだ。
*北はウズベキスタンに至るまで
南がタイなら西はアラブ、北はと言えば、モンゴルで韓国の時代劇が40%の高視聴率をマークしたとのニュースがある。さらには遠くカザフスタンやウズベキスタンに至るまで、韓流の波は押しよせていた。
ウズベキスタンでは、アリランTVという名の韓国国際放送チャンネルが放送を開始した。また韓国語を専攻する学生が増加しており、その象徴であるかのように、韓国のアシアナ航空が外国人乗務員を対象に実施した「韓国語コンテスト」2006年版では、ウズベキスタン出身のフライト・アテンダントが第一位に輝いたという。
そもそもこの地には、強制移住させられた韓国人が「高麗人」の名で多く在住する。その数は中央アジアで30万人に及ぶと言われており、韓流の確固たる享受者として存在しているのであった。
(07/12)
※写真;本場・韓国のプルコギ・ピザ
*参考文献;詳細はこちら
バックナンバー
75「韓流、台湾に至る 〜アジア芸能交流3」
74「韓流の源流は映画にあり 〜アジア芸能交流2」
73「『韓流』ブームの発生 〜アジア芸能交流1」
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