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アジア風物誌33 内モンゴル編10
「寝台列車 〜眠りの密集」

 草原を走る列車

    ノスタルジックな音楽とともに、寝台列車はホームから、ゆったりとすべりだす。たくさんの「行ってらっしゃい」に包まれて、一路、東へ向かった。

 決して新幹線やリニアモーターカーのように、脇目もふらずに駈けぬける必要はない。朝までに首都にたどり着ければいい、その程度の速度でゆったりと。寝台列車は宵の街の空気を乱さぬように、ゆっくりとレールの上をすべってゆく。

 1等(軟座)のコンパートメントは、こぎれいな1室であった。正面にはテーブルクロスの上に花1輪と魔法瓶が飾られており、両脇の壁には2段ベッドが左右ふた組ずつ並ぶ。それぞれにレースと紅のカーテン2枚に囲われているばかりでない。枕灯に網棚まで備えている。おまけに人数分のサンダルまで付いているのが嬉しい。

 車内には音楽が流れている。クラシックのほか、チャイニーズポップスや、あいまに停車地の紹介がはさまり、朝には毎日のニュース放送もおこなわれるそうだ。

 宵に地方を出発した列車は、西日に背を向け、ひたすら東を志す。廊下には、暮れゆく車窓の風景を眺める人の背が、ひとつ、ふたつ。廊下にしつらえられた、折り畳み式の椅子に腰をかけるのもいい。

 風景が煉瓦作りの街並みから、田畑をへて、岩山がさしせまるころ、大地は闇に包まれて、時おり民家の灯が通りすぎるのみとなった。入れかわりに、車内のほうがにぎわいはじめた。お茶や菓子を持ちよっては、歓談にわきかえる。とりわけ2等(硬座)の寝台は。左右に各3台のベッドが並び、仕切りなしにもかかわらず、人々は思い思いに大声をあげ、早速、素足を投げだしては、豆をつまんだりと、すっかりくつろいでいた。まるで人々の居間がそのままこの車内に持ちこまれたかのように。

 やがて就寝の時刻がおとずれる。車両の片側に寝台が片寄っているせいか、横になると片方に体が沈むように感じられるのは、気のせいだろうか。(大丈夫なのか。)

 レールの規則的な響きとともに、目を閉じてみる。向かいの見知らぬ客の寝息に、呼吸を合わせているうちに、いつのまにか眠りにおちていた。

 この列車には、人々の眠りが密集している……。               (つづく)

              (06/10)


バックナンバー;
(内モンゴル風物誌)
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7「馬頭琴 〜草原のチェロは亡き愛馬」
6「酒〜モンゴルウォッカに馬乳酒」
5「乳製品 〜白い食べ物、神聖なもの」
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1「草原 〜天の神さま、地の神さま」
(ミャンマー風物誌)
14「八曜式占星術の世界にようこそ」
13「誕生曜日と八方位の相関」
12「曜日に司られた人生」
11「境内はアミューズメント・スポット」
10「癒し&ヒーリング」
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1「着るアート、腰巻きタイトスカート『ろんぢー』」

(『豊饒の楽土』中国東北部風物誌)
9「瓜の実るころ /東北部」
8「快餐£華ファストフード/大連」
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「大連賓館、歳月(とき)を超えて /大連」
「東北部の窓口・大連客船ターミナル /大連」
「水晶、ガラス、クリスタル/大連」
「蛇の島 〜まむし王国 /旅順」
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