アジア風物誌34 内モンゴル編11
「相撲 〜死人すら出た無制限自由型」
両者、一歩も引かず
日本の大相撲界で、モンゴル族の力士たちが活躍するようになったため、モンゴルの風物として相撲があげられることに、違和感を感じなくなったかたが多いのではないだろうか。モンゴル相撲といえば、700年の歴史を誇るもの。ナーダムという国民的行事の重要な一種目でもある。
とりくみの始まりは、シコならぬ舞踊から。出場者たちの歌声とともに、踊りながら力士たちが登場するという。そこに土俵はない。まわしをつけるわけでもない。火炎模様や孔雀の羽根模様のニッカボッカふうのズボンをはき、肩からは五色の帯を、腰には皮紐、足に皮靴を身につける。本物の胴着(◇(手ヘンに率)◇(足ヘンに交)服)一式ともなれば、総重量が10キロにも及ぶとか。そして力士たちは東西に分かれ、自分の介添えと腿を平手で打ちあい、気合いを入れる! 介添えに三原色の帽子をあずけたのち、ハヤブサの舞う姿勢でとりくみに入る。
蹴り技あり、衣装をつかむ技あり、組みあう技あり。上記3つが代表的だが、複合技を合わせれば、その型ざっと500種にのぼるという説もある。逆に目を突いてはいけない、髪を引いたり、顔を叩いてはいけないなどの制限もある。ただし時間に制限はない。いずれかが地面に倒れるまでは、何分でも何時間でも続けられるという。勝負が決まれば、勝者はハヤブサがはばたくしぐさをきめ、その脇の下を敗者がくぐるというものだ。男と男の真剣勝負である。かつては死者が出ることも少なくなかったというのだから!
そこをあえて(余興ながら)女性同士で取り組んだことがある。ハヤブサの舞う姿勢さながらに、上半身をかがめ、まるで二頭が角をつきあうように、組みあった。相手は娘さんはいえ、あなどれない、モンゴル族。腰の座りが違うのだ。幼いころより騎乗で鍛えた腰つきとバランス感覚で、こちらの渾身の力にもびくともしない。浮き足だったら最後、足わざをかけられてしまう。こちらもぐっと力をこめた。互角、という言葉が一瞬、浮かぶ。重心を低く、力をゆるめず……自分でもなにをこれほど一生懸命になっているのだろうと思うのだが。いや、真剣に戦わなければ、相手に失礼だ。と、一瞬のバランスの崩れで、双方、組みあったまま、台地へと倒れこんだ。勝ち負け? 引きわけ? 勝敗は、ああっという溜息とともに空へと投げあげ、あとはかたい握手でしめくくった。
太陽のもとだから、それとも草原に倒れたからか、笑い流すことができた。
(つづく)
(06/10)
※参考文献;「Japan Network Tour」/「NOE 」/「内蒙古的大草原的旅日記」
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