アジア風物誌28 内モンゴル編5
「乳製品 〜白い食べ物、神聖な物」
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**赤い食べ物、白い食べ物
「乳のような白」−−それはモンゴル語で最上級のほめ言葉であるという。乳のような白とは高貴な色なのだ。昔から宴に乳製品は欠かせないもので、主人が銀の器に盛り、年功序列で配られるという風習があったという。
そんなモンゴル族の料理は、二つに大別できるという。「白い食べ物」と「赤い食べ物」。白い食べ物とは、牛や羊、馬の乳から作られる乳製品のこと。赤い食べ物とは、肉料理を意味する。この地では、乳の出の多い夏に白い食べ物を多く摂り、自然冷凍のきく冬に肉を食べつないでいたという。
白い食べ物とは? たとえばチーズ。「ホロート」なるものは、その代表格だろう。思いのほか水気を含まない、純粋な滋養の塊とでも言おうか。ほろほろとほぐれてしまう、粉チーズの塊のようでもあった。これをそのまま食べてもよし、ミルクティーに浸してもよし。そんなホロートは、山羊や羊、牛の乳を沸かして2〜3日、置いておく。すると脂肪分が浮きだし、クリーム層を作るので、これを取り出し、絞って固めて作られるという。天日乾燥されているので、保存性が高い。
もうひとつ、忘れてはならないのがヨーグルト「タラグ」だ。その大切さは、祝いや祭りの祝福の祈りからも明らかだろう。
「家畜は草原にあふれ、ヨーグルトや馬乳酒は器いっぱいに」
もはや聖なる飲み物とすら言える。その味わいは、日本のブルガリアヨーグルト・プレーン味を、香りも味も濃厚にしたものと言えるだろうか。乳のやさしさを帯びている。
こちらもはやり山羊や羊、牛の乳からとれるもので、モンゴルではヨーグルトをおいしく作ることができて始めて男性は一人前に認められるという。まずは沸かした乳を40度程度に冷ましたものに、ヨーグルトのタネを入れ、ほどほどにまぜ、密封した容器に入れ、温かな環境に1〜3時間ほど放置すればいい。香り高さの秘訣は、温度を下げて発酵の速さをゆるやかにすることであるという。
もっとも現在では工場で大量生産されているようだ。内モンゴルには全国で最大の乳製品企業(「伊利集団」)がある。伊利ブランドの商品は国内だけでなく、海外にも輸出されているそうで、世界の食品メーカーのベスト100にもランクインしているとの説もある。筆者もおそらく旅先で時おりお世話になっていただろう。というのも内モンゴルではご当地アイスが大盛況なのだ。アイスキャンデーのミルク味は、忘れがたいものがある。広大な地では、冷凍食品は、輸送コストがかかることもあり、地元資本が活躍しやすいのかもしれない。こんなところで乳製品のありがたみをかみしめていた。
*ミルクティーなしでは1日たりとも過ごせない
「学びの始めはアの文字から、食事の始めはお茶から」
モンゴル語にはそんな言い回しがあるという。たしかに遊牧のモンゴル人たちは、朝から晩まで茶を飲んでいるという。
「飯はなくても過ごせるが、茶なしでは1日たりとも生きていけない」
そう言われるほどだ。モンゴル族の家に行けば、まずお茶を出されるという。
ただしこの地の茶とは、我々の想像するような緑茶や烏龍茶ではない。その名も「スーテーツァイ」という乳入り茶、ミルクティーである。ポイントは塩味だ。茶のほうも固形の◇茶を用いており、ビタミンCや蛋白質など必要な栄養素を補うことができる。野菜の少ない冬季など、貴重な栄養源となるのだ。これを肉やチャーハンに併せて飲んでもよし、バターやチーズを浸してもよし。外モンゴルでは、栗や砂糖も加えることもがるという。こうなると、お茶はもはや嗜好品であることを越え、スープのような感覚なのかもしれない。
たしかに作り方もまた、茶をだすというより「煮こむ」という感覚なのだ。くだいた固形茶を煮こみ、混ぜ、茶葉をとりのぞいたのち、再び加熱、ミルクを混ぜればいい。といってもたんにミルクが多ければ良いかといえば、さにあらず。茶葉の香りとミルクの酸味とが、適度に混ざりあうのがポイントであるという。しかも作り置いておき、必要なときにくみだす。残りは長時間、寝かしておくわけだが、そのために味や香り、色までもが深みを増すというわけだ。そこまでは……という旅行者のために、粉末状に加工されたミルクティーもあるというので、試してみたい。
これは余談ながら、モンゴル族の風習によれば、客人がスーテーツァイを飲むさいに、底に少しだけ茶を残していれば、また再会できると信じられているという。
(つづく)
(06/09)
※参考文献;「中国 内蒙古」/「フフホト大作戦!」/「アトリエ・ド・フロマージュ」/「人生万事塞翁が馬」/「突厥が好きっっ!」/「モンゴル民族健康食生活」金魚園
バックナンバー;
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