日韓国際交流合宿に集った 日韓の新世代6人が繰り広げる 人間模様
    三日月から満月過ぎまでの二週間、
       短い夏の、プラトニック・ラブとその後、離れ離れの時間

 従来、日本と韓国の間には業とも言えるほどの複雑な事情が横たわっていましたが、近年、新世代と呼ばれる若者たちによって、過去のしがらみから解き放たれた交流が繰り広げられようとしています。もちろんお互い同じアジア人ながらも、言葉の壁や習慣の差異だけでなく、恋愛観や男尊女卑の度あいの違いなどにとまどうこともしばしばです。それらに悪戦苦闘しながら、誤解と理解、すれ違いと歩み寄りをくり返す……そんな姿をとどめておこうというインセンテイ ブから本書は生まれました。


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 日本人にもなじみの深い、最も近い国、大韓民国にて。古都でありリゾート地でもある慶州(キョンジュ) から、首都ソウルへと舞台は移ります。


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 少女、水美(スミ)が交通事故にあったとの知らせを受けて、かつて国際交流合宿に集った仲間たち、韓国人の義道と明元、日本人のシンちゃんと優子姉さんが、一年ぶりに日本の地で勢ぞろいすることとなる。水美の怪我を気づかういっぽう、再会を懐かしみあう仲間たち。彼らの心はいつのまにか一年前へとさかのぼり、それぞれの夏物語を告白し始めた。


 

 あの夏の夜、水美と義道は、つかず離れずお互いに微妙な距離を保ちつつ、閉店間近のラウンジで、貴重なひとときを過ごしていた。義道は水美に韓国伝統の操(みさお) を守るための“銀粧刀”を、観光記念としてプレゼントする。まさかそのイミテーションがのちに悲劇を引き起こすとも知らずに。ひょんなことから水美は日本国籍でありながら、韓国人の血をひくという身の上をあらわにすることになる。対する義道は、長年のコンプレックスであった、先祖の出身が北朝鮮であるという事実を告白する。ちなみに韓国には同族内の結婚禁止という法律があるのだが、二人が同一祖先を持つという疑惑が持ち上がり、悩む水美と義道。ともかくもお互いに秘密をわかちあい、心を通わせたかのように見えた。


 

 気位の高い韓国の令嬢と、謙虚な日本男性シンちゃんは、交流合宿最終日まで、言葉を交わすことなく、眼と眼のみのコンタクトを育んでゆく。シンちゃんはカメラマンの卵として、令嬢をめぐる人間模様を淡々と見守りつづけていた。最後の最後で彼は帰国便を延長し、令嬢とともに一日だけの“ソウルの休日”を楽しむこととなる。青春時代が凝縮されたかのような時間を過ごしたのもつかの間、それぞれの故郷に帰ってゆくまでの物語。


 

 韓国の高校を中退した御曹子・明元(ミョンウオン)と離婚歴のある大和撫子・優子の二人が垣間見た、真夏の夜の夢物語。明元は小さな出会いを通じて、少年から青年への一歩を踏み出すに至り、ついに優子を追って日本に留学することとなる。


 

 物語は水美が交通事故からようやく意識を回復したところから始まる。お互いに遠距離恋愛の孤独感に押しつぶされそうになりながらも、それぞれがソウルと東京にてひとりきりの時間を営んでゆく。義道は病床からの手紙や電話を通じて、水美が精神的に追い詰められてゆくさまを、海の向こうからなす術もなく、見守るほかはない。ついに水美は思いあまって、自殺を試みてしまう。皮肉にも、プレゼントの銀粧刀とともに。夢とうつつが交錯するなか、死の淵から助けを求める水美と、必死に心の手をさしのべる義道。果たして水美の生死は……?


 悩みに悩む義道のもとに、ついに悲報が届いた。現実を受け入れかねる義道の前に、さまよう水美の幻影が現れる。皮肉にも彼女の死を以て、ようやくふたりは日韓の空間もしがらみをも超越して、向きあうこととなった。水美をひきとめたいという想いと、成仏を願う気持ちとの間でひきさかれる義道。ついに水美を、そして彼自身をも、次のステップに進めるために、祈りを念じた瞬間……


 翌年のこと。水美の命日に墓参りに訪れた義道は、水美にの旅だちのころに生まれた、彼女似の赤ん坊を見出した。もしかして? 確かめる術もないまま立ちつくす彼のもとに、祝福のような天気雨が降りそそいでいた。


〜2002年のサッカーW杯共同開催という未来と、植民地支配という暗い過去との狭間に位置する、日韓の新世代6人を通じて、腐れ縁的な日韓関係を脱した、新たな次元を模索する物語〜