ホームページ制作 『ニアミス』


「はい、今回の報酬」

さる都内の高級レストラン。
星史郎は女から封筒を受け取った。

「確かに。今回の依頼人は随分と羽振りがよろしいですね」

封筒の中の小切手を確認しつつ、星史郎は目の前に座る女に話し掛けた。
間違っても、彼のパトロンではないだろう。

「この不景気にしては気前がいいよね。ま、あたしたちのお陰…っていうか貴方のお陰で、依頼人サマは新政権のポストにつけたんだし」

「これ位は貰って当然、ですかね」

星史郎と少女は顔を見合わせ笑った。

「しかし、貴女も随分この仕事が板に着いてきましたね、曜(ひかり)ちゃん」

ワインを口にしながら星史郎は言った。

「まぁね。貴方達みたいな人に仕事を斡旋するのも、そろそろ三年目突入だし」

「もうそんなになりますか」

「仕事継いだ当初は大変だったんだよ?仕事が仕事だし、第一あたしが小娘だったから」

今も小娘だけど…と曜は磊落に笑った。

「御巫(みかなぎ)家…古くから、日本の『能力者』を纏めてきた、本締め的存在…ですか…」

「そんな大層なものじゃないよ。それに今は、纏め役とかよりこっちの方がメインになってるし」

フランス料理をナイフで突っつき曜は言った。

「貴女の仕事の大変さは良く判りますよ。狭い世界とはいえ数多い能力者に、それぞれ見合った仕事を斡旋する…僕の様な能力者の他に、表の『きちんとした』能力者の方にも仕事を回していらっしゃいますからね」

星史郎は口を歪める様にして笑う。

「そう、例えば…『皇 昴流』とか、ね」

対する曜も、笑って答えた。

「…で、次の依頼は何なんでしょう?」

「仕事熱心だね…」

曜は半ば呆れたような声をあげた。

「…あたしから回ってくる仕事以外にも、直接依頼が来た仕事だってあるんでしょ?そんなホイホイとあたしから仕事受けちゃっていいの?」

「殺すのは一瞬ですから…気にしないで下さい」

にっこりと笑って恐ろしい事を言う。

「まぁ…そりゃそうだろうけど。今回の仕事はちょっとね…条件によっては、貴方以外の人にやってもらおうかと、思ってる」

「条件を持ち出すとは貴女らしくないですね・・・どうかしたんですか?いつもなら、僕の都合も聞かず仕事を入れてくる位なのに」

「…へぇ、そういう風に思ってたんだ」

曜は、少々むっとした様だった。

「冗談ですよ。貴女から回ってくる仕事は報酬が高いので感謝するばかりです」

ふっと笑って星史郎は答えた。

「あたしは金持ちからしか依頼受けないからね、基本的に」

「で…条件とは何でしょう?」

「…皇当主と、かぶっちゃうんだよね。次の仕事」

「昴流君と…?」

星史郎は呟いた。

「次の仕事の場所と時間が、丁度皇系列の御祓いと同じでね…東京広しといえど、早々『このテ』の仕事なんて無いし、いつかこんな事も起きるかなぁとは思っていたけど」

「………」

「二人の過去に口出ししたくは無いけれど、貴方と彼が会って、こっちの仕事に支障が出るのはごめんなの」

曜から今までの笑みは一切消える。

「だから、条件は『万一彼に会ってもちょっかい出さないし、向こうが何かしてきてもあしらうこと』。これが約束出来ないなら、悪いけれどこの話は無しってことで」

星史郎は暫く黙っていたが、やがて口を開いた。

「…仕事、お受けしますよ」

「え」

「別に僕は…昴流君にもう一度会いたいという訳ではありませんし、まして彼を殺そうとも思っていません。けれど、もう一度僕達は会う…そんな気がするんです。だったら、意図的に昴流君に会おうとしたり、逆に避けたりしなくても」

「2人の間に何かがあるなら、もう一度再会する、そういう事?」

「そうですね」

「――それは、国会議事堂の姫から入れ知恵されたの?それとも桜塚家にそういう言い伝えでもあるのかしら」

「・・・さぁ、どうでしょうね」

曜は星史郎の目を覗き込んだ。
彼の白く濁った右目には、唯1人だけ、昴流が映される様に思えた。

「…判った」

やれやれといった風に、曜は言った。

「今回も高額報酬、楽しみにしてますよ。…ところで、貴女は知ってたんですか、僕たちの過去にあった事を」

「表面のことはね・・・」

「表面?」

「二人が心の中で思ってる事までは判んないもの」

すっかり冷めた料理を口に運ぶ。

「…そうですね。誰も、他人の心の中まではわかりませんから」

星史郎は、窓の外へと視線をやった。
ネオンの光が瞬く。

「…貴方と皇当主みたいな関係の場合は違うかもよ」

ぽつりと曜が呟いた。

「どういう意味ですか?」

「判らないならいい」

星史郎を見、曜はふっと笑った。

「――次の仕事の場所と時間はね…」



END


オリジナルのキャラクタは、動かしやすいけれど世界観を壊しそうで怖い…昔書いた話(これ含め)はそういう意味でチャレンジャーだったと思う。儀