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Addict...




朝起きると、自分の横に確かにいた筈の彼は居なくなっていた。
ベッドから起き上がると、テーブルの上には彼の几帳面な文字で 『仕事で京都まで行ってきます。明日の夜には帰ります』と書かれたメモがあった。
窓の外を見やるが、目下の街並は都会の喧騒にはまだ早い、朝靄の中にあった。
靄が、朝日を弾いて目に眩しい。
星史郎は眼を細めると、カーテンを閉じた。
再び、寝直す為に。


昨夜、というか日付はもう今日になってからだが…星史郎が仕事を終えて帰ってくると、昴流は既に就寝中だった。
それでも、星史郎がベッドに入る時には昴流はすっかり覚醒していて、彼の相手をしてくれた。
…今日の朝早いと知っていたら、と星史郎はベッドに腰掛け思った。


ここ数日、星史郎も昴流も仕事が立て込み、殆どまともに顔を合わせていない。
昴流の仕事は総じて日中、星史郎の仕事は逆に夜が更けてからに集中してるのだから無理も無い。
ベッドに腰掛けた状態から、ごろりと横になる。
表の皇・裏の桜塚…これもある意味宿命か、と星史郎は一人ごちた。
ほんの少し一緒に過ごす時間が出来ても、すぐに昴流を抱く流れになるから、会話らしい会話は殆どしていない。
一緒にいてそれしかしないなんて如何なものかとも思えたが、会えない時間が長い分、欲しくなるのが人情だろう、などと星史郎は自身に言い訳した。
それだけ、すれ違い生活になって久しいのだ。


それもこれも全て、最近不安定な政局のせいだ、と部屋の天井を睨みながら思った。



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朝靄のかかる中、まだ車通りの少ない道路をまっすぐ車で走っていると、まるでこの道がどこまでも続いているかの様な錯覚を覚える。


新幹線の時間に遅れそうだった為、駅までタクシーで行くことになった。
別に星史郎を咎めるつもりは無い。
寧ろ、星史郎に何も言わず出てきてしまったことに幾らかの罪悪感さえあった。
さりとて夜遅くに帰ってきた星史郎を起こすことなど、昴流には出来ないのだが。


ここのところ政界では色々と問題が起きているらしく、星史郎はその手の仕事で多忙の様だった。
夜遅くに大変そうだな、と、昴流はただそんな感想を抱いた。
星史郎の生業についてあれこれ悩むことは、以前より減った。
綺麗事を並べたり正義感をかざさないだけ、僕も大人になったのだろうか、とも思った。
今は、世の中それだけでは成り行かないのだと知っている。
大人になるということは諦念することでもある、といつだか星史郎が言っていたのを思い出した。

――確か僕はその時、星史郎さんも何かを諦めてきたのか、と訊いたんだった。 星史郎さんは、ただ微笑うだけで何も答えなかったけど。

元より執着心を持ち合わせていないかの様に見える彼に、諦める、という行為は想像がつかなかった。

…ああ、また気になってきた。

京都から戻ったら、まず星史郎に訊いてみようと思った。

――一緒にいる時よりも、肌をあわせている時よりも、彼のことを考えるなんて。



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…麻薬の様だ。

ベッドに横になりながら、星史郎は思った。
傍に居なくなると、途端に欲しくて仕方がなくなってしまう。

――彼が帰ってきたら、最初に優しく抱きしめて、それから空いた時間を埋める程話をしよう。

そう思ったが、しかし結局そんな誓いはより肉欲的な衝動の前にたやすく屈してしまうだろうことも、彼には容易に想像できるのだった。





 ちょっとヘタレな星史郎さんが書きたくなりまして。
最初はこの話で終わりだったのですが、続編もつくってしまいました。NEXT→

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