アナザヘヴン
「残された者は、仮定することしかできない」
「…それは、僕に言ってるんですか?それとも」
大きな独り言ですか?昴流君、と紅茶をすすり星史郎は言う。
「……」
「気を損ねられたなら謝ります。…ただここ数日、昴流君はぼうっとしていることが多いですよ」
ちらと星史郎を一瞥した後、昴流はふいと目線を室内へと移した。
「…このままではいけない気がするんです」
「どのまま?」
「いま僕は、貴方とこうして暮らしている」
デジタル時計の文字を睨む。別に時間を知りたい訳ではなく、ただ視界に入ったものを凝視する。
「…姉さんを殺した貴方と幸せになろうとしている、この事実そのものが、僕に重くのしかかる」
「では、」
「でも、だからと言って貴方と離れられるかなんて…それこそ不可能だから」
「…そうですか」
普段なら軽口の一つでもたたくところだが、昴流の神妙に過ぎる面持ちの前に、やめた。
「だから、『もし』『あの時』『…なら』『…だろう』――と、僕は仮定を考えることしか出来ないんです」
ああ、やはり大きな独り言なのだ。
自分の中では抑えきれぬ痛みを、殺した当の本人にしか伝える相手を持たないのだ。
この哀れな青年は。
「考え続けることが、僕の罰なんです」
END
きっと昴流君は、星史郎さんと一緒になれても罪の意識があるのではないかと。
心が綺麗なままの彼は、葛藤し続けるのだと思います。
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