「そうそう、今日は貴方の誕生日なのよ」
唐突に母は言った。
「…そう、なんですか」
知りませんでしたと星史郎は言った。
内心、少々戸惑いながら。
生まれてから今まで、周囲に星史郎の誕生日を祝う人間は一人として居なかった。
将来は桜塚護になることを期待される立場にある以上、自らの弱点となりうる誕生日など知る必要も無かったということか。
それすら教えてくれる人間も居なかったから、そうやって自分でそれなりの理由を作り上げるしかない。
だからこうして、今更母親に誕生日を告げられたところで…しかも当日に…どうしろというのだろう、というのが正直なところだ。
「いいわね、星史郎は」
言葉に詰まっているところで、母は言った。
「…え?」
「私は、知らないわ、自分の誕生日なんて」
「……」
逆に言えば、と母は続ける。
「毎日が誕生日になりうるのだけどね、私は。」
くすくすと笑って、母は星史郎の髪を撫でた。
「でも、特別な日が出来るというのは、とても羨ましいわ」
誕生日おめでとう、と母は言った。
* * *
「そうそう、今日は僕の誕生日なんです」
唐突に星史郎は言った。
「…そうなんですか?!」
昴流は思わずソファから腰をあげた。
「し、知りませんでした…てっきり、四月だとばかり……」
戸惑いを隠せない声で昴流は続ける。
そういえば…この間も、TVで「今日の運勢」を見ながら星史郎さんは「今日の蠍座は運勢イマイチですねぇ」なんて言っていたかも。
どうして今まで突っ込まなかったんだ僕は!!
昴流は一人、心の中で叫んだ。
「…昴流くん?」
そんな昴流の心中を知ってか知らずか、星史郎はしごく暢気な声である。
「どうして…」
「え?」
「どうして今まで言ってくれなかったんですか!!」
昴流にしては珍しい大声に、星史郎も少々驚いた様だった。
「別に隠していたという訳ではなかったんですが…すみません」
「もっと、もっと早く言ってくれたら…そしたら、色々としたいことが沢山あったのに」
「…昴流くん」
「…今からでも、遅くないですか?」
「…もちろんです」
誕生日おめでとうございます、と小さく昴流は言った。
星史郎さん誕生日祝小噺(05/11/22)
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