雪華さんと星史郎さんのある日。『Camellia』
「・・・母さん、一体今日は何のお祝いですか?」
食卓の上には、母の手料理。
――桜塚家では珍しい、この光景。
「ふふ」
食卓に最後の料理を載せ、微笑う母。若くして僕を産んだ母は、まだ娘の様な面立ちをしている。
「もう十三年経つんだわ」
「…何がですか?」
「今日はね、」
母の嬉しそうな様は、言葉の端々に良く表れている。
「貴方のお父さんの十三回忌なの」
…何と反応すれば良いのだろうか。
いくら暗殺家の家系とは言え、死者の命日を祝う習慣など我が家には無い筈だ。
それに、僕に父の思い出など全く無い。
「まだ星史郎には話した事が無かったわね」
料理をつまみ食いしながら、ひとり母は語り始めた。
「十三年前の今日に、私は桜塚護になったの…先代桜塚護の、貴方のお父さんを殺して。そう、丁度その時も…椿の花が綺麗だった」
言う母の目線の先、我が家の庭には、椿の花が今が盛りと咲いていた。
「結婚記念日でもあるのよ、今日は。あの時、私のお腹にはもう貴方が居て…」
母は夢を見る様に目を瞑った。
「貴方のお父さんと一緒に、貴方の事を考えた…いつか貴方も、私を殺して桜塚護になる、その日を二人で夢見たの」
「……」
うっとりとその目を開ける母。
「愛しているわ、星史郎」
夫を殺し、実の子に殺される…どうして母がそれを望むのか、僕にはわからない。
「愛しているわ」
何度となく言われた、この科白。
――愛?
既に母の瞳は、僕に殺されるという未来に向けられて恍惚としていた。
…普段全く料理をしない母の手料理は、味付けが少しばかり、妙だった。
「…昴流君、今日は外で一緒に食事でもしましょうか」
「えっ…急にどうしたんですか、星史郎さん」
「今日は僕の父と母の結婚記念日で…昔、母がご馳走してくれた事をふと、思い出したんです。昴流君、お嫌ですか?」
「い・いえっっ、とんでもないです!」
「そうですか?それじゃあ…」
『今日は記念日よ、私と貴方とお父さんの』
END
* * *
椿は『短命な美の象徴』でもあるらしいです。(わ〜雪華さんぴったりvv
雪華ママのくだりは、勝手に設定考えさせて頂きました。
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