エイズに侵された子供たち、時間との戦い
     メキシコシティー、エカテペック地区には10歳のルシアちゃんと6歳のエステバン君が生き延びる可能性も少ないまま、荒れ放題の庭で遊んでいる。ルシアちゃんはやっと1メートル10センチに届くかという身長しかなく、体重はたった15キロである。エステバン君は、ルシアちゃんと比べてにこやかな表情をし、栄養が行き届いているように見える。彼の小さい頭にははっきりと、薬を飲まなければ死んでしまう、という意識がある。二人はエイズ感染者である。

     ルシアちゃんとエステバン君は、2ヶ月の赤ちゃんルイス君といっしょに住んでいる。この赤ちゃんの状態は非常に不安的である。彼もエイズに感染しているが、医師たちはまだ彼の母親マリセラから感染したまま産まれてきたかどうかについては言及していない。もう一人エイズに感染している5歳のマリオ君がいるが、彼の母親がエイズの末期にあるため孤児になるのも時間の問題である。

     この子供たちは同じ病気を患っているのと同時に、同じ屋根の下で暮らしている。彼らは援助を必要としている。たった二つの部屋と、台所、トイレしかないところに、彼らは母親といっしょに暮らしている。エステバン君は彼を知る商人たちにより養われている。

     しかし、食料、衣類、薬の費用などはエステバンの父親ペドロにより提供されている。ペドロは道で中国製品を売っている。

     ペドロは次のように語る「生活するためには何らかの方法でお金を稼がなければならない。そこで考えたのが、民間の会社を創ることである。税務署にも登録し、税金がかからない寄付を受け取ることである」。さらに、大統領夫人マルタ・サグンが行っている"Vamos Mexico"運動に登録するという夢も語る。ペドロが考えているのは、エイズに感染しているシングルマザーたちの避難所を創ることである。ペドロは次のように話す「我々は10人程度の、エイズに侵され、彼女らの子供を孤児にしてしまう可能性のある女性たちが住めるような宿泊施設を創るという考えを持っている。そのようなエイズが末期にある女性たちを支援し、世話をすること、及び彼女らの子供たちの将来を保障したい。しかし、一番大切なことは、それらの援助には直接我々が携わりたいということである。同じ病気を持つ我々こそ、病人が今一番何が必要なのかを理解することができ、世話をすることができる。我々には経験がある。これまでにもいろいろな場所で援助を受けたこともあるが、結局実際に必要な人々には援助が行き届いていない」。

     ルシア、エステバン、ルイス、マリオの生活範囲は賃貸している家の小さい中庭に制限されている。中庭の真ん中にある一本の木がみんなのお気に入りのおもちゃである。上二人の子供たちは学校にも通ってはいるが、勉強に精を出すことはしないし、周りの大人たちもそんな彼らに勉強を強要はしない。

     「もし、私の息子に未来があるのであれば、学校の勉強に精を出すようにがんばらせる。しかし、こうしている間にも、いつ私が死んでしまうかも分からず、息子を一人この世に残していかなければならない。また、息子もいつ死んでしまうか分からない。病気がいつ進行するかは誰にも分からないのである。だから、せめて生きている間だけでも、自由に幸せに生きてほしい」とペドロは語る。

     今年の1月6日、ルシアは東方三博士からのプレゼントがあることを期待して早起きした。しかし、実際にはプレゼントはなかった。ルシアの弱った体はプレゼントがなかったショックで、跪き泣き続けた。

     「お人形がほしかったの…」ルシアは微笑みながら、思い出していた。ルシアが大きくなったら何になりたいかを楽しそうに語っているのを見ながら、ペドロと祖母は瞳を涙でぬらしながら聞いていた。「私は自分がエイズだってことは知ってるの。パパやママ、それから弟もエイズで死んだってことも。でも、私は生きたいの。健康でいるためにごはんだってしっかり食べてるわ。歯が好きだから、私は大きくなったら、歯医者さんになりたいの。…いや、やっぱり、銀行の窓口がいいわ」ルシアは微笑みながら、語った。





*今日のスペイン語*

    maltrecho  : 痛んだ

    risuen~o  にこやかな、にこにこした 

    huerfano : 孤児、みなしご

    albergue  : 宿泊施設、避難所

    circunscribirse  : 制限される、とどめる

    predilecto  : 気に入りの、大好きな




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