いろいろいるのが人間ですが、本当にいろんな人がいるようで。 会社の名誉もありますので実名などはさすがに出せませんが全部実話。
第1章 行方不明寸前
A君は夜9時過ぎに北京空港に降り立った。 会社の車が来ているはず… そう思いながら到着口からマークを探しながら早足に歩く。 彼の目に入ったのは、「○X▲△」と書かれた出迎えのサインボード。 今から思えばあれが会社のマークに見えるはずもなく、自分の名前に見えるはずもなかったのではあるが、魔がさしたとでも言うのであろうか、A君の目には自分を出迎えに来ている運転手に見えたのであった。
言葉が通じないということは、こんなにも大変なのであろうか。 パスポートを提示し、自分の名前を相手に確認させようと努力したが相手はニコニコと全身で出会えた喜びを示すばかりであった。 大学時代にバックパッカーとして海外旅行をしてきた経験がなければ、乗りきれなかったかもしれない道に踏みこんで行くとも知らず、A君は運転手について行ったのであった。
彼の目の前に登場したのは、かなり年数の立ったワゴン車であった。 事務所の車ってこう言うものなのかもしれない… 普通なら高速道路を走るという事も、今走っているガタガタ道が違う方向へ向かっていることも、生まれて初めての北京出張、それも大事な室長の代りに、という燃える気持ちの前では小さな不安でしかなかった。
しかしながら不安の芽は、摘んでおかねばならん。 決意したA君は再度全身全霊で運転手とのコンタクトを決意。 会社の名前や明日の予定… 予感は的中。 この人達でもこの車でもない。 なんという幸運であろうか、運転手も空港への引き返しに同意したのであった。
第2章 なぜ運転手は空港にいないのか?
空港にたどり着いたのは、10時過ぎ。 A君の目に入ったのは、途方にくれて一人立ち尽くす牛島さん。 そう、A君が連れて行ってしまったのは牛島さんを迎えにきた運転手。 丁重にわびを言い、袖すり合うも他生の縁と名刺なぞ交換したりして、さらに思うはこれから僕はどうなるのであろうか 牛島さんに運転手は返したが、自分を迎えに来たはずの運転手はいずこに?
電話をかけようにも空港の電話はテレホンカード。 両替もしていないA君の前には窓口を閉じてしまった銀行が無常にも暗い姿を見せている。 一応駐在員自宅の電話番号は控えてあるが、カードも人民元もないA君ははたと困ってしまった。 どこまでもやさしい運転手。 困っているA君にそっとテレホンカードを差し出す。 思わず涙ぐみながらもとりあえずは電話。
「○○さんのお宅ですか? A野ですが。」 「はあ??」
宴会に出かけて帰ってこない旦那を見放して先に寝ていた○○の妻は、寝ぼけた頭で「A野さんって某公司北京のA野さん??」と考えたが、その後に続くA君の状況説明に、とりあえず飲んだくれているに違いない亭主に電話してみることにしたのであった。
マイク片手にくつろいで、いやいや違った大切なお客さんの接待にいそしんでいた○○の耳に携帯電話の音。
「今ね、A野さんって言う人が空港に着いているんだけど、何だか違う車に乗ってどっかに行ったとか帰ってきたんだとかいっているんだけど、どうすればいい?」
「えっ??」 普段は無い夜間の妻からの電話。 何か事件でもあったのかと頭は混乱するが、説明はもっと混乱している。
回らない頭で整理をしてみると、どうも今日空港に着くはずのA君はまだ運転手に会えていないらしい。という目先の事態だけはハッキリと見えてきた。
「もう一回電話が来るのであれば、こっちの携帯電話にかけてもらって欲しい。」と電話を切りながら、すぐに運転手のポケットベルを鳴らす。 5分たっても運転手からは電話が来ない。 もう一度ポケットベル。 だんだん状況がきちんと見えてきて、とにかく運が良かったとまずほっとすると同時に、なぜ運転手はいないのか??という疑問がこみ上げてくる。 空港にいるなら周りにいくらでも電話があるはずである。
「A野です。」と電話が鳴った。 間違えて関係ない車に乗ってしまったという話を聞くと同時に、ホッとする。
「運転手がその周りにいるはずなのでもう一度探して欲しい。 万一いない場合も考えて今連絡を取っているので5分後にもう一度電話を欲しい。」と伝え電話を切る。
「○○さん。」運転手から電話があった。
「最終便も全部着いたが、誰も自分のところに来ないので今とりあえずTAXI会社に帰ってきた。」
「状況はともかく、すぐに空港へ行け、客は待ってる。」
15分後、「今会えました。」と喜びのA君の声を聞いて安堵する。
今のところこの事件が一等賞です。
中国の宴会は、今では減ったとはいえ白酒がつき物です。 はじめて出張してきたBさんは、関係先の宴会でがんばって白酒を飲んでいましたが、ホテルへ帰る車の中では、今朝の早起きも手伝ってぐっすりと眠ってしまいました。 夜の三環路は、車も減って快適に車も飛ばしています。 15分も走ったでしょうか、Bさんがむっくりと起き上がって、はっきりと言いました。
「運転手さん。 川崎インターで降りてね。」
お酒が好きだけどあまり飲めないCさんは、これまで酒の上での武勇伝が一杯ありすぎて、その話だけで本が一冊かけるくらい。 そんなCさん、白酒+ウイスキー=酔っ払いで、またもホテルへは担ぎ込み状態。 ただおとなしい酔っ払いですので、こちらもやさしくなって、上着もズボンもきちんと掛けてあげて、ベッドにやさしく寝かしてあげました。
普段は、ベッドにたどり着くと上着も脱がずに寝てしまうことが多かったのか、翌日朝、うれしそうに言いました。
「いやあ、白酒あんなに飲んだからどんな事件起こしちゃうかと思ったら、きちんと寝てて驚いたよ。 服もきちんとかけてあるしさ。 白酒、僕にあうのかな。 二日酔いも無いし。」
ある年の冬の出来事。 広大な中国ではあっちこっちで雪が降って、飛行機が最終目的地までたどり着かないことが頻発します。 中国語はできないが英語は達者なDさんは、西のほうでの仕事を終えて、「一人で帰れるよ、大丈夫大丈夫。」と明るい声で言い残して、同行者と別れて一人先に北京行きの飛行機に乗り込みました。 空港迄迎えに行っていた運転手から事務所に電話がありました。「Dさんの乗った飛行機が今日は北京に着かないとアナウンスがあった。」 捜索作業が始まりました。航空会社に電話してももう夜だからか誰も出ません。 乗りこんだ空港に電話してみたところ、途中の経由地が大雪のために空港閉鎖になったので違う場所に今降りている。乗客は宿泊施設に連れていったが、誰がどこに泊まっているかはわからない。また何便も同じようにその空港に降りているので、ホテルも一杯使っていて良くわからない。」 仕方がありません。 翌日を待つことにしましょう。
翌日は更に悲劇が拡大。 途中で一時避難で降りた空港が今度は大雪で閉鎖。 Dさんと別れたほうのグループの乗った飛行機は簡単に北京に着いたが、急いで帰りたかったDさんはまだ足止め状態。 いまだ本人とは連絡がつかないまま3日目を迎えました。3日目は土曜日、夜になってようやく今北京に着いたと自宅に電話がありました。 聞いてみると、一人だけ少し英語がわかる人が乗り合わせていたので、その人だけが頼りとばかりに、袖つかまんばかりにすがって生活してたとのこと。 この事件以来Dさんは、一人で飛行機に乗りません。
もうひとつ飛行機ネタです。 国内線にはボーイング777も747も飛んでいますが、ロシア製のツポレフだの、イリューシンだのというかつての名機もまだ飛んでいます。 自分の乗る飛行機はやはり選びたいものですが、時刻表を見てしっかり選んでいても航空会社の都合で勝手に飛行機が変わっていたりします。 出張者のEさんは、もともと飛行機が嫌い。 どうしても乗るならロシア製を避けてと言うのがお願いとして出されています。 ところがある日、一緒に搭乗口で飛行機に乗ろうとしたら先のとがったツポレフの特徴的な姿を見つけてしまいました。 おかしい、エアバスA300のはずなのに。 と思いましたが、仕方がありません。気がつかない振りをしながらEさんと乗りこもうとしたそのときEさんも気がついてしまいました。 降りるというEさんを説得して乗りこんでもらったものの、到着地に無事に着くまで、口は聞いてくれないし、もちろん飲み物も食事も一切拒否。 飛行機よりもEさんの怒りが恐ろしかったのは私です。
ある関係会社のスタッフの話。 東北地方に出張したときにホテルの傍で強盗に遭った。 財布と携帯電話をよこせと言う強盗に最初は素直に渡したその人でしたが、あまりにすぐに逃げようとする強盗に向かって、もしかしたら と一言。
「領収書は使わないだろ? 返してくれないか?」
仕事を無事に終えて逃げるだけだった強盗の怒りに火がついて、ナイフで滅多刺しにあって3ヶ月の入院生活を送る羽目になったという事です。 そこまで会社のこと考えなくても良かったのにね。
東京からの便で飛んできたばかりの人と地方に出張することになりました。 1時間ほどなので空港の国内線の前のロビーで待っていてくださいとお願いして、時間どおりに空港に行きましたが、いくら探しても姿が見えません。 何かアクシデントで日本からの便に乗らなかったのかと航空会社に搭乗者名簿を調べてもらっても、確かに飛行機には乗っています。 場所がわからないのかと空港中を走り回って捜しても見つかりません。 頼み込んで空港に日本語と英語でアナウンスしてもらっても出てこないうちに搭乗締め切り時刻になってしまいました。 もうどうでもいいやとロビーの椅子に座り込んで、ふと目の前を見ると座ったまま深くうつむいて熟睡している姿が目に入りました。 あわててたたき起こして、もうクローズされたカウンターに無理やり頼んで飛行機に乗ってから、どうしてたのですか? と聞くと。 前夜マージャンで勝てなかったので、悔しくて徹夜してたから眠くて寝てたと。 だからってアナウンスされてもわからんくらい他所の国の空港ロビーで寝るな。
ホテルには、貴重品をしまっておくような金庫がついていることがよくありますが、番号を忘れてしまったり、何かの拍子に開かなくなったりと、結構笑い話を提供してくれることがあります。 そんな中から二つご紹介。
宴会となると毎回正体不明になるまでがんばってしまうFさんは、昨夜もどうやって帰ったかよくわからないほど白酒を飲んでしまいました。 ホテルは民族系ですが5つ星の高級ホテル。 朝金庫を開けようとしましたが、パスワードの番号を全く思い出せません。 誕生日や電話番号などいろいろ入れても全く駄目。 財布が入っているはずなのでホテルのフロントに言って開けてくれと言ってみましたが、開ける方法が無いとの冷たい回答。 駐在員も巻き込んで、どうしても開けてくれと交渉すること1時間。 金庫屋さんを呼んでようやく開きましたが、なんと中は空っぽ。 ホテルと金庫屋さんの冷たい視線がFさんと駐在員に突き刺さります。 平謝りに謝って、ようやく開放されました。 財布はどうしたかは、いまだに謎のままです。
もう一つ、こちらは某外資系有名ホテルでの対応。 Gさんは、初めての中国出張で緊張してパスポートも航空券も財布も全部金庫に入れて寝ました。 翌朝チェックアウトしようと、金庫を開けようとしますが、キーを押しても全く何の反応もありません。 出発時刻は迫ってくるしあせる気持ちでフロントに電話をするとすぐに道具を持って人が来てくれましたが、秘密兵器にも金庫はウンともスンとも言いません。 原因はどうも金庫の中の電池が切れてしまったためとの事。 ホテルマンはしばし悩んだ後に、道具箱からなんと電気ドリルを取り出しました。 小型金庫とは言っても鉄板は結構厚く、戦うこと30分。 ようやく側板に開けた穴からすべての財産を取り出したGさんは、あわてて集合場所へ向かって走って行きました。