ワールドカップ2002回想日記


成田&鹿島編


ワールドカップが開幕して数日―――
初戦を大勝利で飾ったドイツ代表の次なる相手はアイルランドだった。ドイツ代表は6月5日の鹿島でのアイルランド代表との試合の前日から成田に滞在という情報を得た私は、早速どこのホテルに宿泊するか調べることにした。こんな手間をかけなければならなくなったのは、宮崎で情報を得ることができなかったせいだ。
とりあえず、インターネット。しかし分からない。次に図書館でスポーツ新聞をくまなくチェック。しかし載っていない。宮崎のキャンプ受け入れ委員会に電話。「分かりかねますが・・・」 あー、もうこうなったら成田のホテルに適当に電話して直接聞くしかない! ということで電話をしまくるが、どこからも「泊まっていない」との回答。なんだか嘘っぽいところもあるにはあったが。
とうとう私は最終手段に出た。フランクフルトにあるドイツサッカー協会の事務所に電話をしたのだ。すると、「ホテル名はこちらでは分からないから、宮崎にいるサッカー協会のスタッフに聞いてみて」と、あっさり宮崎のドイツサッカー協会事務所(仮)の電話番号を教えてくれた。かなり感じの良い応対に、改めて日本とのメンタリティの違いを感じるのだった。
早速電話をかけてみたが繋がらなかったので、翌朝掛け直すことにした。

朝7時に家を出て、成田へ向かった。成田空港駅で昨日教えてもらった番号へ電話を掛けるとドイツ人スタッフが出て、これまたあっさりとドイツ代表が泊まっているホテルを教えてくれた。ヒルトンホテルだった。ちなみに昨日ヒルトンにも電話したのだが、「お泊りになっておりません」という素敵な回答を頂いた。

早速ヒルトンへと向かい、9時前には到着した。が、ファンらしき人は誰も居ない・・・。ちょっと不安になったが、ドイツの国旗が掲げられていること、駐車場にW杯のロゴの入ったヒュンダイの車が止まっていることを考えれば、ここに泊まっているいることは100%間違いない。それにしてもファンが1人しかいないって、寂しいを通り越して虚しい・・・。たくさんいたらいたで嫌なんだけど。

このホテルは航空会社関係者が多く利用するようで、旅客乗務員の制服を着た美しいお姉さんやらカッコイイお兄さんが大勢闊歩していた。そこに、どう考えてもこのホテルの雰囲気とマッチしない外人3人組(私もマッチしない人の1人なのだが)がホテルの入り口付近でうろうろしている。よくよく見てみると、その中の1人はイングランド代表の帽子を被っていて、その上Tシャツには、『ドイツ 1−5 イングランド』と書かれていた。これはあの屈辱の9月1日のW杯予選、ドイツ対イングランド戦のスコアではないか! なんでそんなムカつくイングランドファンがここに。しかし彼らが手に持っているのは、W杯の公式パンフレット。み、見てみたいかも・・・。じゃあ、見せてもらえばいいじゃん、ということで、こちらから彼らに話し掛けてみた。英語にはまったく自信はないのだが。意外にも(?)彼らはとても親切で、快く見せてくれた。おっ、すごい、ドイツ代表のページには、すでに何人かの選手達のサインが入っている。昨晩もらったらしい。く〜っ、私も昨日の夜から張っていれば良かった〜。そうこうしているうちに、ドイツ代表のスタッフ達がロビー付近に姿を現した。もうすぐ練習なのかなぁ。久しぶりのご対面まであと少し。。

ホテルに入るのが躊躇われたので入り口付近で待っていると、そこに一台のタクシーが。男のコ3人組で、成田の練習場で選手達を待っていたが、非公開と知るやいなや、そこにいたスタッフのおじさんにここのホテルのことを聞いてやって来たらしい。2人の高校生と1人の大学生は、その練習場で知り合ったとのこと。とりあえず再び情報交換&サッカートーク。彼らはドイツ代表を生で見れるとあって、かなり興奮している様子だった。

スタッフの人がうろうろしているのを見て、私にはある考えが浮かんだ。いや、これこそがそもそもこのW杯のために帰国した私の目的なのだが。
スタッフの1人を捕まえて尋ねてみる。「チケット余っていたらください!」 しかし彼にはチケットのことは分からないらしかった。これくらいで諦めるもんか。次に訊いたスタッフは親切にも、「白髪のスタッフが知ってるから、彼に訊いたらいいよ」と言ってくれた。詳しくその人物の容貌を聞き出し、しばらく待っていると、まさにその人物らしき人が! すかさずお願いにあがる。
「チケット余ってませんか? チケットを手に入れるために電話したり一生懸命頑張ったのですがダメでした。でもどうしてもドイツ代表試合が見たいんです!!」
危機迫る勢いだったと思う。するとそのスタッフのおじさんはあっさり、「余ったらいいよ。でも今ははっきり分からないから待ってて」
えーーーーっ、うそ!? 本当に?
「待ちます、待ちます、待ちまーーす!」
おじさんは親切にも、そこにいた私達4人の日本人ファンに、ドイツサッカー協会のW杯ピンバッチをくれた。おーっ、これは嬉しい。
男のコ3人組に事の次第を話すと、彼らもチケットが欲しいという。彼らの1人のお父さんが、今チケット獲得に翻弄しているとのことだった。しかしそのチケットの値段は3万円。よくよく考えてみると、先ほどの約束なんて当てにならない。もし本当にもらえたらチケットを売ってもいいやと思い、私も3万円のチケットを購入したいと言うと、私の分もお父さんに頼んでくれた。
早速、その日は仕事のため会社にいたリバちゃんに連絡。彼女もチケット獲得のためにずっと頑張ってくれていたのだが、結局当日になっても手に入れることが出来ていなかった。ドイツ代表がヒルトンにいることを知って仕事が手につかなくなったという彼女は、これからヒルトンに来ると言う。さすが、リバちゃん!

そしていよいよ選手達が乗るバスがホテルの出入口につけられた。結局その場にいたファンは、男のコ達3人と私だけだった。後はイングランド人が3人。つまり、ホテルの入り口に張られたロープの前で選手達を見ようと待っていたのは、たったの7人・・・。またまたこれでいいのか、ドイツ代表!
ホテルの出入口は1階に2箇所あったので、私達はそのうちの一箇所で待っていた。この出入口の脇にはエスカレーターがあって、選手達はそこから下りてきた。今回の私はただ選手達を見ていただけだが、他のファン達は結構選手達からサインをもらっていた。その日は試合にもかかわらず和やかムードだったのは、絶対にサウジアラビア戦に大勝していたからであろう。しかしもちろんカーンなどは、みんなが呼んでも無視して即バスに乗り込んでしまっていたが。
私は宮崎で何度もチャンスがあったにもかかわらず写真を撮っていなかったブットと2ショットを撮った。後はお目当てのリッケン、メッツェが来るのを待つだけ。そんな中、ケール登場! 私が、「私のこと覚えてる?」と訊いたら、「あぁ、ハロー、覚えてるよ。ここにも来たんだ? 元気?」と答えてくれた。うわぁ、感激!
残念ながら選手達の一部はもう一箇所の出入口から出てバスに乗り込んだようだ。私はその出入口の方が気になったので、そちらの方へ行ってみた。するとちょうど、ビアホフ、レーマー、クローゼ、ハマン、ツィーゲ等々、そうそうたる選手達がやって来るところだった。嬉しいことにこちらにはロープが張っていない。こっちの方がおいしいじゃん。他のファン達も気が付くとこちらに来ていた。ファンが少なかったこともあって、選手達は皆サインをしてくれた。ちなみに私は2ショット写真にサインをもらおうと思っていたが、その時点ではまだ宮崎の写真を現像していなかった。というわけで、こんなおいしいシチュエーションにただ選手を眺めていただけ。スキッペだけピンで写真を撮らせてもらい(写真を撮らせてくれとお願いしたら、かなり嬉しそうだった↓)、クローゼ、レーマー、ハマンがサインをしているところを写真に収めておいた。それにしてもずうずうしいイングランド・ファンはかなりうざかった!


選手達が練習を終えて再びホテルに戻ってくるまで、男のコ3人と私は待っていることにした。しかし選手達が去った後も3人はかなり興奮状態。彼らはシャツやユニホームにかなりの数の選手達からサインをもらっていた。学校を休んでまでここに来たかいがあったね。
4人で記念撮影したり、サッカー雑誌を読みながら話していると、入り口前に一台の車が止まり、そこから超デブなおっさんが降りてきた。その人こそまさに、レバークーゼン会長・ライナー・カルムント。今シーズン、かなりの辛苦を舐めさせられた人物だ。しかし私は彼のマネージメント能力はブンデスリーガ1だと思っている。こんなところでお会いできるなんて。早速駈け寄って声を掛ける。「私、レバークーゼン好きです!」だとか、「来年は絶対優勝してください」等々言うと、かなり嬉しそうなご様子。これは嘘ではない。私はレバークーゼンも好きなのだ(もちろん1860ミュンヘンの比ではないが)。最後に2ショット写真を撮らせてもらい大満足。

練習から帰ってきたときの選手達は素っ気なかった。この数時間後にはアイルランド戦が控えているわけだから、ナーバスになっているのは当然といえば当然だ。リッケンの姿を数メートル先に確認したので「ラース!」と声を掛けると、こちらを振り向いて笑顔を見せてくれた。またあのラース☆スマイルが見られて、それだけで私は幸せ〜。

リバちゃんから13時頃にこちらに着くと連絡を受けて、お腹のすいた男のコ3人と私は成田市内のファミレスで腹ごしらえ。端から見ると、このグループは一体どう見えるのだろう???

ホテルに戻ってみると、すでにリバちゃんは待っていた。ここでも再び待たせてしまった私・・・。
選手達がもしかしたら下へ降りてくるかもしれないと、5人でホテルのロビーの一角で待っていた。前夜コンビ二の駐車場で寝たという高校生2人組は、椅子に座るなり眠っていた。彼らは「スタジアムでチケット発売がある」というガセネタを掴まされて、前夜に鹿島へ行ったものの帰れなくなり、そのまま鹿島のコンビ二の前で一夜を明かしたそうだ。そして今朝早く、ドイツ代表の練習が行われる成田の練習場へ行ったがもちろん「非公開」で、前述の通りこのホテルへやって来たというわけだ。疲れているのも納得。

しばらくすると、『その日の試合のチケットは手に入らなかった』と、高校生のうちの1人の父親から連絡が入った。こうなると頼みの綱はあの白髪のおっさんのみ。

そんなときそのおっさんが再び姿を現した。すかさずチケットのことを尋ねるが、忙しそうに何やら言ってすぐに立ち去ってしまった。そのなにやら言ったことが、距離があったこともあって私には、「Vielleicht、Vielleicht(多分、多分)」もしくは「Reicht、Reicht(もういいだろう)」と聞こえた。前者の場合は希望が持てるが、後者の場合はもういい加減にやめてくれよという意味になる。どっちなんだぁ〜???
しかしとりあえず待つしかない。とそこへ、な、なんと、あのベッケンバウアーが登場。生で見るのはもちろん初めてである。私は高校生2人と大学生を叩き起こした。みんな興奮状態でサインをもらい、写真を撮る。私もしっかり2ショット写真を撮らせていただいた。気さくな良い人で、ホテルの人がファンに「やめて下さい」と言っているのに、「いいからいいから」という調子でファンに答えてくれた(ファンがあまり多くないこともあったんだろうけど)。

更にしばらくすると、今度はカーンがやって来た! が、それが傑作、片手にバナナを1本持っているのである。ファンの1人が、「ゴ、ゴリラだ・・・」と言ったが、彼の言葉は皆の気持ちを代弁していたであろう。もちろんカーンはファンに答えることはない。ホテル内の小さなコンビ二で何やら買い物をして戻っていくのを遠巻きに見ていた。



一体チケットはどうなるのだろう? そればかりを考えながら、待つことすでに7時間。選手達ももうスタジアムへ向け出発する時間だ。すでにバスは出入口につけられている。残念なことに、今回は多少ファンが増えていたこともあって、バスから15mは離れていると思われるところにロープが張られてしまい、それ以上近づくことはできなかった。一説では、午前中に私達がやりすぎたということもあるのだが。
チラッとしか見られない選手達なんてどうでもいいや。それよりチケット! とそのとき、あのおっさんが私を手招きしているではないか! おじさんはなんと本当に私にチケットをくれたのだ。ドイツサッカー協会に割り当てられた分から。うわぁ、感激!! しかしもらったチケットは1枚。少なくともリバちゃんの分は欲しい。はじめはダメと言って渋っていたおじさんも、私の必死のお願いが通じたのか(あげないとこいつヤバイと思ったのか)、最終的にもう1枚くれた。私達はもう大興奮。おっさん、じゃなくて、ドイツサッカー協会のおじさま、本当にありがとう!!!

本当に残念だが、男のコ達の分はもらえなかった。彼らには本当に申し訳ないが、これも人生。私達は選手がバスに乗り込むのも見ないで、鹿島スタジアムへと向かった。

リバちゃんのご厚意で、リッチにもタクシーで鹿島まで行った。途中、前を走っていたのは、なんと今日の対戦相手アイルランド代表のバスだった。派手にアイルランド代表のマークなどがペインティングされたバスだが、ちょっとカッコイイ。それに比べドイツ代表のバスは、私が小学校の遠足で使ったバス会社の至って普通のバスだった。まあいいけど。

スタジアムの周辺にはもう人がいっぱい。否が応にも気持ちは昂ぶってきた。
そしてスタジアムに足を踏み入れると、もう感極まるといった状態である。初めて観るW杯の試合。確かに普通のリーグ戦とは何かが違う雰囲気。これがW杯・・・。
私達の席はゴール裏の席と正面席の間。ドイツ代表のバスの運転手が隣にいて、反対側にはドイツ人と思わしきキレイな女性が座っていた。この女性は選手の関係者のようだ。
試合のことについては敢えて触れない。というのも、この試合のドイツ代表はそれほど素晴らしい試合をしたと思わないし、ダメ出しをしたところで仕方がないだろう。

私にとってはあっという間に試合は終わった。それだけこの試合と雰囲気に興奮していたからだろう。
何とか鹿島駅から東京行きの電車に飛び乗って、家に着いたのは夜中の2時。
あ〜、充実の一日だった。


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