ワールドカップ2002回想日記

これは、ワールドカップの期間中にドイツ代表に
翻弄された私の一部始終を綴った日記です。


宮崎編 その1


ワールドカップ――それは4年に1度のサッカーの祭典

そもそも1986年のメキシコ大会を観て、本格的にサッカーにはまった私。ワールドカップを見ずしてサッカーファンは語れない・・・ましてや自国開催なんて最初で最後かもしれないのに・・・でもせっかく単位が取れそうな授業を休んで、日本へ帰国するなんて・・・・それにチケットも取ってないし・・・。

5月中旬、そんな葛藤が毎日のように私の中で繰り広げられていた。それでもそのときは、8対2の割合で帰る気はなかったというのが正直なところ。それが急遽帰国する気になったのは、バイト先の同僚の一言だった。
「フェラーなんて単純そうだから、頼めば試合のチケットくらいくれそうじゃん」
まさにそれで決心したと言っても過言ではない。なんて単純・・・。しかし、確かにフェラー監督なら、ちょっと仲良くなればチケットくらいホイホイくれそう。私も本気でそう思ってしまった・・・。
そしてもう一つ、私を日本へ帰国させる動機となったのは、”ドイツ語を話せる日本人特典 IN JAPAN ”。ドイツでドイツ語を話すのは当たり前。練習を見に行っても、ドイツ人達に負けてしまって話なんてほとんどできない。しかし日本ならば私にもチャンスが! ドイツ語を話せる日本人なんてそう多くはないはず(多分・・・)。
というわけで、試合が観られなくても仕方がないやと割り切って、とりあえず帰国する決心をした私は、翌日ベルリンのトルコ人街にある格安航空券の店へ。チケット・・・W杯前なのに、結構安いのがあった・・・。
そして大学の教授達に途中で辞める理由を説明し、「こいつアホだ・・・」と思われつつ、いざ日本へ出発!

ウィーン経由(もちろんウィーンで、大好きなオーストリアサッカーの雑誌をチェックすることも怠らない)で、5月21日、ドイツ代表より2日早く日本に到着。2年3ヶ月ぶりの日本です。

千葉の自宅に戻るも、1日休んで7月23日の夜には宮崎に向かう船に乗っていた。川崎から宮崎まで飛行機で行けば1時間で行けるところを、カーフェリーで22時間。私が選んだのは、2等のたこ部屋。50畳はあろうかという畳敷きの部屋にみんなで雑魚寝。なぜって、もちろんそれが一番安いから。
船に乗ったものの、たこ部屋に居たのは私1人。とりあえず角っこの場所を荷物で占拠して、いざ探検に!・・・ってそんな大げさなものでもないけど。船の中で私の目を引いたのはサウナ。まさか船の中にサウナがあるなんて。目から鱗の感激! 船の中はとても広くて本当に迷ってしまいそうだった。探検もそこそこに再びたこ部屋に戻ってみると、私の荷物が置いてある横に1人のおばさんがいた。お互い1人旅だと知って、とりあえず世間話。おばさんは宮崎にいる妹さんのところへ行くとのことだった。職業は書道家。す、すごい! 私も13年近く書道をやっていて、準師範級だったこともあり(何気に自慢?)、すっかり意気投合。
さてさて、盛り上がっていたところで消灯時間の22時。おいおい、早いんじゃないの?と思いつつも、気がついたらMY寝袋に潜りこんで眠っていた。神経が図太いから、どこでもすぐに寝られるタイプ。

朝・・・き、気持ち悪い・・・。寝ている間に船酔い??? 枕もしていなかったし、この日はちょっと波が高かったこともあって、本当に酔ってしまったらしい。仕方がないのでゴロゴロしていると、元気なおばさんが食事から戻ってきた。そしてこの後9時から船の艦橋見学ツアーがあるらしい。なんだか面白そう。気分も若干良くなってきたし、このまま寝ていても余計滅入りそうなので、私も見学ツアーに参加することにした。
「艦橋って本当に舵があるんだ〜!」と当たり前のことで感激してみる。そんな私の感激を余所に、乗組員のおじさんの説明はひたすら続く。と、そこへいきなりおじさんが質問。「ズバリ、この船のお値段は? はい、そこのお姉さん!」 ・・・って、わ、私??? 「うーん、3億円くらい・・・かな?」「残念、60億です。」(一同)「おーーー!!」 全然違ってるし・・・。
その後はだんだん波も穏やかになって、気分もすっかり良くなった。そして朝兼昼ご飯を食べたところで映画タイム。今日の映画は”釣りバカ日誌”。いいね、いいね、船の上って感じだよ、ホント。もちろんしっかり釣りバカ日誌を堪能。他にやることないし。

さて、船の旅も残すところあと3時間。船は日向港に到着するので、宮崎市内まで車に乗せてくれる人を探さねば。この船にはトラックの運転手さんが多数乗っていることを知ったので、手当たり次第に声を掛ける。が、みんな宮崎は通らないか反対方向。それもそのはず、宮崎港行きの船も週に3回出ているのだから、宮崎方面に行く人はそれに乗るよね、普通。(日向港行き、宮崎港行きが1日おきに出ている。私が乗船した日は日向港行きの船の日だった) 船が日向港に到着して、トラックの運転手さん達が集まっていた。ラストチャンスーー!!!とばかりに再び声を掛けまくると、何人目かでやっと宮崎市内まで乗せて行ってくれる人をゲットーー!! いや〜、電車賃浮いて良かったぁ。

宮崎上陸後の一言。暑い・・・。
親切なおじさんと共に一路宮崎市内へ。素敵なデコトラ(デコレーショントラックの略)の中で話も弾み、ジュースも奢ってもらっちゃった。1時間半ほど走ると、そこは宮崎市内。おじさんに別れを告げて、黙々と宮崎駅から徒歩十数分のユースホテルへ。時間は夜の8時。人に尋ねながらどうにかユースホテルを発見すると、宮崎の気の良さそうなおばちゃんが迎えてくれた。ユースと言えばいつも賑やかだと思っていたのに、ここは妙に静かだった。それもそのはず、その日の宿泊客は私を含めてたったの4人。というわけで、私は1人部屋。ラッキー!
いつまで滞在するか分からなかったので、とりあえず2日分の予約をした。コンビ二で買ったお弁当を食べて、風呂場へ行こうとすると、おばちゃんに捕まってしまった。おばちゃんってば、かなりの話好き。まあこちらも楽しかったけど。
その日は、前の晩に寝すぎた上に、昼寝までしていたのであまり眠れなかった。仕方がないので、コンビ二で購入した『女性セ○ン』を熟読・・・。

さて翌日。30度はあろうかという猛暑の中、いよいよ目指すドイツ代表が滞在しているシーガイアへ。
宮崎駅からバスで約20分。南国リゾートっぽい(あくまで"ぽい")雰囲気が漂うシーガイアへ到着。至るところにドイツの国旗が掲げられている。きゃー、いよいよドイツ代表とご対面!!と心躍らせる私。が、その数分後、悲しい事実を知ることとなった。その日の練習は「非公開」。練習場のフェンスは白いシートで覆われていて練習を見ることができないばかりか、練習場に近づくことすら許されていないという状況。一体何の為にここまで来たんだか・・・意気消沈。ホテルの周りにはがっかりしたファンがうろうろしていた。といっても、その数たったの20人くらいといったところだったけど。人気がないとは思っていたけれどここまでとはね。
仕方がないので、うろうろしていた他のファンの人と交流する。結構1人で来ている人が多いし(男性ばかりだけれど)、目的は同じだから話も弾む。中には、72年のワールドカップの話まで飛び出してしまうマニアな人もいた。さすが宮崎まで1人でくるファンは一味違う。

最後の望みをかけて、ドイツから来ていたマスコミ関係者とも接触を試みた。「お願い、通訳としてただ働きで良いから雇って〜! 私も練習見たい〜!」 その日の練習はどうやらマスコミには公開していたようなので、形振り構わずお願いしまくる。マスコミの人達は、「いいよ」と私のお願いにあっさりOKしてくれたが、「プレスカードがないと入れない」と言い張る頑固な日本人スタッフにより、結局私は中に入ることができなかった。ドイツからのマスコミの人達は「ごめんね」と私に謝ったりしてくれたけれど、もうこの日本の融通の利かなさ、超ムカツク。ちなみにドイツからのマスコミは、「ここまで厳重にするなんて、ドイツ代表、シャイセ(ドイツ語でムカツクの意味)!!」と口走っていた。ホントにその通り!

このままでは埒があかないので、とりあえずシェラトンホテルに入ってみた。練習場はこのホテルに隣接しているから、上から見えるかも! ビンゴ! 見えたー! でもピッチの3分の1くらい・・・。しかも豆粒程にしか見えない選手達・・・。ここまでくると、もうどうしても練習が見たい!! というわけで、今度は地下駐車場を移動して、練習場の反対側にある雑木林にでる作戦へ。(練習場へと続く地上の道は封鎖されていた) 地下を通って、通って、通って、やっと練習場の反対側へ。林の中を移動する私・・・一歩間違うと変質者。いや、その姿はすでに変質者か。が、次の瞬間、あっさり御用。しかも宮崎県警の警官2人に捕まってしまった。「何やってるの?」と聞かれたが、そんなの決まってるじゃん。しかしそこから何となく話が始まり、場が和んできたので、ここはダメ元で頼んでみる。「お願い、5分だけ練習見せてください。2分でもいいです。この松の木に隠れて見るのでお願い!」 警察官のお兄さん達、ちょっと同情気味。あまりに情けない私に、「いいよ、2分だけね・・・」と有り難いお言葉。遂に2分間松の木と同化して練習を見ることができたが、ここからの距離も選手達からは100m。結局、良く見えないじゃん。
「はい、2分経過!」 その声で、我に返る私だった。と言うか、ちゃんと計ってるし・・・。




仕方がないので、またシェラトンホテルに戻った。練習がチラッと見えた場所に戻ってみると、先ほど話をしたファンのお兄さんがそこに居た。そして、そのお兄さんが話していた宮崎在住のHさんと知り合う。彼は翌日行われる「ドイツ代表vs宮崎県高校生選抜」の入場ハガキを持っているという。えっ、何、その試合、そんなしけた試合のことなんて知らないって。でも知ってしまえば見たくなるもの。というわけで、1枚のハガキで5人まで入れるかもしれないと聞いた私は、早速Hさんに一緒に連れて行ってもらえるようにお願いしてみると、あっさりOKしてくれた。やった〜。お礼にベルリンのフリーマーケットで約22円で購入したドルトムントのメモ帳をプレゼント。全然有り難みないかも。

練習を見終わると(とは言っても、話してばかりでほとんど見ていなかったが)、3人でシェラトンホテル内にあるプレスセンターへ。しかしプレスらしき人の姿は見当たらず、ボランティアと思わしきお姉さんが2人居た。「閃いた!」とばかりに突然そのお姉さんに、「あの〜、ボランティアやりたいんですけど・・・」と、私。 お姉さん達、「えっ!?」 そりゃそうだ、急にそんなこと言われてもって感じでしょう。しかし私がドイツ語ができることを伝えると、「なんでもっと早く来てくれなかったんですか〜。とりあえず上の人に訊いてみますね。」と好感触。しかし、結局ダメだった。確かに、2、3日しかできないボランティアなんて要らないよね。でも良く考えてみたら、ボランティアなんてやっていても選手とは接点がないじゃん。

その後、ホテル前で2人と別れた後、ドイツ代表は絶対にシェラトンに泊まっていると信じていた私はひたすらホテルのロビーで「女性○身」を読みながら待ち伏せ。事前に情報収集しなかった私が悪いんだけど、可能ならばこのときの私に教えてあげたい。「ドイツ代表はここには泊まっていないんだよーーーー!!」

来ない、来ない、来ない、来ない。諦めた。そう、せっかく宮崎に来たんだから観光でもしよう!
とりあえず海でも見ようと思いたって、ホテルから歩くこと15分。「うわーっ!」と思わず声をあげてしまいたくなるような美しい海が眼前に広がっていた。そこでピクニック気分で、コンビ二で買ったおにぎりを食べて、ぼーっとすること2時間。そんなにぼーっとしているなんてと思われそうだが、こんなのいつものことなのだ。
海にも飽きたので、バス代をケチって宮崎市内までアイスを食べたりしながらてくてく散歩。1時間も歩き続けた頃から、もはや散歩といういう気分でもなかったけれど。でもまあ、無事に宮崎市内に戻って、さらに市内観光。自分でもタフだと思う。
夜は大人しくしくユースに戻って、そこの談話室で「日本代表対スウェーデン代表」の試合を宿泊客のおじさんと仲良くテレビ観戦。おじさんはドイツを旅行したことがあるらしく、試合そっちのけでドイツ話で盛り上がった。
さて今日の私の部屋はっと・・・昨日と同じくまた1人。でも隣の部屋の宿泊客は昨日とは違う人みたいと思っていたら、隣の宿泊客と廊下でばったり。ヨーロッパから来たっぽい女のコだった。とりあえず「Where are you from?」というおざなりな言葉を掛けてみると、なんとドイツから来ていることが判明。思わぬところでドイツ語トーク。彼女はミュンヘン出身で、庭師の修行の為に熊本に1年滞在しているとのことだった。今は休暇で九州を旅行しているらしい。こんなところでドイツ人に会えてなんだか嬉しい。
その日は昨日の寝不足のせいもあってすぐに眠れたが、裏の小学校の飼育小屋にいたニワトリが、明け方から集団で「コケコケ、コケコケ、コケコッコーーー」ってうるさい、うるさい。おかげで早起きできたけど。

「今日こそは公開練習のはずだー!」と張り切って再びシーガイアへ向かったものの、シーガイアに向かう道すがらに、「本日練習非公開」の看板が。朝から昨日に引き続き意気消沈・・・。
一応シーガイアまで来たが、日曜日にもかかわらずファンの姿もほとんどなかった。仕方なくホテルの周辺をうろうろとしていると、インフォメーションと書かれた仮説テントを発見。実はそこで聞いてはじめてドイツ代表がどこに宿泊しているかを知った私。シェラトンではなく、そこから1kmくらい離れた、シェラトンゴルフリゾートというところに泊まっていたなんてーーー!!! もう私ってば本当にバカ。
更にそのインフォメーションで、午後10時からそこからちょっと離れた練習場(昨日とは違うところ)で練習するという情報をゲット。現在9時55分。非公開だけど、もう何でもいいや。見れなくてもいいから、とにかく行くしかない!
 
その練習場の場所へと向かう道を、30度以上はあると思われる暑さの中ひたすら歩く。あ〜、車が欲しい。あっ、でも今免許が切れてる。なーんてことを考えていると、後ろからドイツ代表のバスが!(代表のバスが通るかもしれないと思って、後ろから来る車もしっかりチェックしながら歩いていた) もう理性が吹っ飛ぶ〜。次の瞬間、無意識にバスに向かって手を振っていた。すると、時速50キロくらいは出しているにもかかわらず、気がついた選手達が私に向かって手を振ったではないですか! 一瞬の出来事だったけど、本当に嬉しかったよ〜。そしてつい、追いつくはずもないバスの後ろを走ってしまう。10mほど走ったところで理性を取り戻してやめたけど。

喜びいさんで、練習場に到着。当然のことながら選手達はすでにシートで覆われた練習場の中に入ってしまった模様。そしてもちろん練習場の周りにいるファンは私1人。改めてドイツ代表の人気の無さを実感した。
「あ〜、声が聞こえる〜」
酷暑の中で、理性が壊れていく・・・。それでも警備員のお兄さんと話しながら、練習が終わるのをひたすら待っていた。ときどきファンがやってくるが、練習が見れないと知ると去っていく。これが普通なんだろうけど。そんな中、はるばる熊本から来たという根性のある男性2人組がやってきた。3人でファン・トークをしながら待っていると、練習開始から1時間半後、やっと練習が終わったらしい。なんともまあひどいことに、選手がバスに乗るところすら見ることが出来ない。仕方がないのでさっきと同じように、手を振る作戦しかない。幸い道路は狭いので、大してスピードは出せないはずだ。思った通りゆっくりと走るバスの横すれすれに立って、3人で手を振ってみる。嬉しいことに、ほとんどの選手が振ってくれた。再び感激〜〜〜!

泊まっているホテルも分かったことだし、こうなれば私もホテルに直行ー! さっき知り合ったファンの2人に、ホテルまで乗せていってもらった。
遂にドイツ代表とご対面か?!



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