夜明け前―
多数の負傷者を出したバイエルン軍だったが、これは全くバラックの予想だにしなかったところであった。
「数の多数が勝敗を決するものではないが、ここまでとはな・・・」
バラックは静まりかえる陣営を回っていた。
昨夜のうちに脱走兵もかなり出たようだ。その多くは、ここまで侵略を重ね滅ぼしてきた幾多の国の兵士達であった。彼らは不承不承の呈でバイエルン軍のために戦っていたものの、命までもをバイエルンに捧げるつもりなど毛頭あるわけはない。
「これはドルトムントの計略だな・・・奴等のことを少し見くびっていたようだ・・・」
兵士の中にドルトムント兵が入り込み、彼らに脱走を促したのは自明の理であった。
「やれやれ、どうしたものかな・・・万が一にも敗者となれば、カーンに俺を害する理由を与えるには十分・・・いっそのこと、レバークーゼンに舞い戻りカーンを暗殺してやろうか・・・そして俺がバイエルンに覇を唱えて・・・ふっ、そんなことをして何になる。俺は盟主などという柄でもないし、第一、そんなものは取るに足らん。俺が望むものは・・・大陸一の騎士の称号、ただそれのみ。」
バラックは一人呟くと、水平線の向こうに姿を現した朝日の眩しさに目を細めた。
「それにしても、シャルケは何をやっていやがる・・・」
そのシャルケは、フリングス・バウマンの巧妙な罠にはまって進軍が遅れていた。両将はシャルケ軍の進行を予期して、自軍の数を多く見せるための工作を行っていた。平地には騎兵の足跡を多く残し、兵士の数以上の野営の後を残した。こうした地味な工作が実を結び、シャルケ軍の蒙将、ベーメとアサモアは敵の数を過剰に見積もることとなり、進軍に際して慎重になり過ぎていた。更に途中に仕掛けられた落とし穴も彼らの進軍を妨げる要因となっていた。
そして夜明け前、意を決したブレーメン軍精鋭の数百騎がシャルケ陣営に攻め入った。しかし、フリングス・バウマンを先頭に疾風の如く駆け抜けるブレーメン軍は全くシャルケ兵を相手にせず、唖然とする兵士達を他所にそのまま陣内に深く駆け込んで行った。彼らの狙いはただ一つ、陣内の一番奥にある敵の兵糧であった。そこまで難なく辿り着くと、ブレーメン軍は兵糧を目がけて無数の火矢を放った。そしてそのまま陣中を縦断して駆け抜けて行った。ブレーメン軍のこの奇襲はベーメとアサモアに一刀の反撃の余地も与えることはなく、彼らは燃えさかる自軍の補給物資を目の当たりに、一声を発することもできなかった。
「うまく行ったようだ。これで奴等も新たな補給物資が届くまで身動きできないだろう。」
「そもそもバイエルンに対して義理もない奴等だ。このまま撤退するかもしれんな。」
「そう願いたいものだ。よし、フリングス、我々もドルトムントに助太刀に向かうとするか。」
「ああ、そうするとしよう。」
両将に率いられたブレーメン軍は、再びドルトムントへ戻るべく疾走した。
ドルトムント軍は、バイエルン軍から2kmというところに陣をひいていた。
スキッペ王は深夜まで続いた参謀達との会議を終え、数時間の仮眠を取ろうとしたが、結局一睡もすることができなかった。再び身支度を整えると、野営用の天幕から出て、まだ夜明け前の肌寒い空気へと身を晒した。
「リッケン・・・」
彼は息子の身を案じていた。メッツェルダー、ケールという歴戦の騎士達がついているが、何分彼らはまだ若い。経験と思慮深さという点で至らないというのは否めない。
「リッケンをバイエルンに送り込んだ私の判断は間違っていたというのだろうか・・・」
暫く深い思案に身を置いていたスキッペだが、すぐに心持を切り替えた。
「いかん、この戦いにはドルトムント国の存亡だけではなく多くの兵や民の命運もかかっておるのに、王たる私自身の杞憂などで迷いが生じてはならんのじゃ。」
わずか数キロ先には、朝焼けを背に染まるバイエルン陣営が広がっているのである。
正午―
再び両軍が合いまみえるべく対峙している。
数の上では今だややバイエルンが上だが、ドルトムント軍の方が断然士気は上がっている。
「ここまできたら小細工は無用! 全力を持ってお主らを倒す!!」
「良い御覚悟だ、スキッペ王。返り討ちにしてしんぜよう!」
バラックが鞍上でふてぶてしくそう言い放ったのを合図に、両軍は再び入り乱れた。
一度後方に下がろうと味方の陣を逆走するバラックの後を追うべくシュナイダーが突出したが、バイエルン兵に憚られてしまった。そしてバイエルン兵の相手をしている間に、バラックの姿は見えなくなってしまった。
いく時か過ぎた頃、レーマーは再び戦場でイェレミースと剣を交えることになった。
「お前もたいがいしつこい男だな、イェレミース。」
「次に会うときはお前を倒すと言ったはずだ!!!」
「怪我をした腕で私と互角にやりあえると思っているのか?」
「うるせぇ!! ごたくはもういい!! きいいやーーーー!!」
咆哮一番、イェレミースがレーマーに襲いかかった。レーマーはその剣に応酬し、何合か剣をまみえたが、イェレミースの不利は明らかだった。昨日受けた腕の傷はもちろん完治しているはずがない。
「諦めろ。降伏してもスキッペ王は決してお前を害したりはしないであろう。」
「うるせぇ!!! きやぁぁああ!!」
ものすごい雄たけびと共に、イェレミースはレーマーに最後の一刀を振るうべく切り込んで行った。しかし次にイェレミースが聞いたのは、自身が馬上から落ちる音だった。
「ちぃ・・・俺もここまでか・・・ぐほっ」
イェレミースは息絶え、ドルトムント兵士達から歓声が上がった。
「結局は奴も騎士としてしか生きられない男だったというわけか・・・」
レーマーは空を仰いだ。
「イェレミースめ、猪突するなとあれほど言ったものを・・・」
後方で戦況を見守っていたバラックは、イェレミースの最期を知って吐き捨てるように言った。
そのとき、側近の一人がバラックの元に近寄った。
「バラック様! たった今入った報によると、シャルケ軍が進軍の途中で撤退した模様です!」
報告を聞いて、バラックは苦笑した。
「・・・まあ、良い。初めからあんな奴らに期待などしてはいない。ドルトムント軍など俺だけで十分だ! 全員俺に続け!!」
後方に待機させていた精鋭部隊にそう命じると、バラックは先頭に立って戦いの最中に向かって駆け出した。
「つ、強すぎる・・・」
バラックの強さは群を抜いていた。圧倒的な強さだった。彼に襲いかかったドルトムント兵士達は皆彼に倒された。自ずとドルトムント兵士達は逃げ腰になり、そこにすかさず、バイエルン兵達が襲いかかった。
「ドルトムントとはこの程度か・・・」
「バラック、私が相手だ!!」
声のした方へと振り返り、鞍上の勇姿を認めると、バラックはフテキな笑みを浮かべた。
「ほう、クローゼか? 俺の相手としては役不足だが、まあ良かろう。」
「なんだと! 私を愚弄する気か!」
「正当な評価、と言って欲しいものだ。さっさとかかってこい!」
「行くぞーーーー!!!」
クローゼは気合十分にバラックに向かって行った。
「甘い!!」
バラックの剣がクローゼの剣と重なりあった。両者は一瞬の睨み合いの末、どちらからともなく剣を引いて間合いを取った。
「所詮お前はその程度か。」
「な、何!」
「今度はこちらから行くぞ!」
今度はバラックの方から仕掛けてきた。その素早い剣さばきに、クローゼは辛うじてよけるのが精一杯で、反撃に転じる余裕などもはやなかった。そしてクローゼの集中力が疲れによって鈍ったその瞬間をバラックは見逃さなかった。
クローゼの剣は宙を舞った。
「ふふふっ、剣が無くては反撃もできんな。」
クローゼが息つく暇もなくバラックの次の一撃が振り下ろされた。僅かに反応の遅れたクローゼの体をバラックの剣が切り裂いた。
「くっ・・・」
クローゼは右肩を左腕で抱えた。バラックの剣は甲冑を切り裂いて、クローゼの体にまで達していた。
「その傷ではもはや戦えまい。今日のところは見逃してやる。とっとと失せろ。」
「ま、まだだ、決着はついていない・・・くっ、ま、待て!!」
必死のクローゼを無視し、バラックが別の方向へと馬を駆けて行ってしまうと、今まで勝負に目を奪われていたクローゼの部下達は我に返った。
「クローゼ様、お気持ちはお察し致しますが、お命があればいつか再戦も相成りましょう・・・」
「もはやこれまでか・・・」
クローゼは悔しさのあまり顔を歪ませた。そして部下達に囲まれて戦場から離脱しようとしたとき、味方の大歓声を聞いた。
「ブレーメン軍だ!! ブレーメン軍が援軍に来たぞ!!!」
ドルトムント本陣ではスキッペが戦況を見守っていたが、そこに戦線を離脱したクローゼが少数の部下と共に戻って来た。
「お恥ずかしい限りですが、バラックめに傷を負わされ、やむなく撤退して参りました・・・」
「クローゼ王子、なんら恥じることはない。貴殿は良く戦ってくれた。ブレーメン軍も援軍にきてくれたことだし、これで我が軍の勝利は間違いない・・・」
しかしスキッペの言葉はいささか歯切れが悪かった。ブレーメン軍の参戦で、数の上でドルトムント軍は有利に立ったものの、バラック一人に梃子摺らされているのは事実だった。
その頃、戦場は混乱を極めていた。
ブレーメン軍の参入で士気上がるドルトムント軍に対して、今となってはバイエルン御三家最後の一人であるリンケは、
「味方と言えども、臆病風に吹かれた者は、このリンケが成敗してくれる!!」
と自軍に脅しをかけ、リンケ直属の部隊が後方から味方を追い立てる。こうなると、バイエルン兵士達も死にもの狂いである。
バラックは勢いに乗って、ドルトムント軍の本陣を目指していた。すなわち、スキッペの元へである。次々と敵をなぎ倒すバラックの勢いを誰も止めることはできなかった。
そんなバラックの姿をシュナイダーが認めた。
「待て、バラック!!」
バラックは手綱を引いた。
「シュナイダーか、久しいな。」
「お前の裏切りのせいで俺達は・・・絶対に許せん!!」
「怒りまかせでは俺は倒せんぞ。」
「試してみるまでだ!!!」
しかしバラックはシュナイダーの弱点を知り尽くしていた。勝敗は数合剣を交えた後に決まった。
シュナイダーは自身の右腕から滴る血を見て己の無力さを呪った。
「話にならんな。これ以上の戦いは無意味だ。」
バラックは踵を返すと、再び馬を駆けた。
「待て!! バラック!!」
シュナイダーも傷の痛みに堪えながら馬を駆け、バラックの横を並走した。そしてがむしゃらに左手で剣を繰り出したが、それは全てバラックにかわされた。そうこうするうちに、徐々にバラックとの差が広がっていった。
「くそっ、奴はどこへ向かっているのだ? はっ、まさか本陣に・・・」
シュナイダーは必死にバラックの後を追った。
しかしシュナイダーの追撃も虚しく、バラックは本陣に到達してしまった。ここに再び、スッキペ、バラックの両者は対面したのである。
「よくぞ、ここまで来たな、バラックよ。」
「ふっ、このくだらん戦いにそろそろ終止符を打とうと思ってな。」
バラックの言葉に、スキッペの両翼を守るハマンとレーマンは、剣を握る手に力を込めた。
「覚悟はできておられるかな、スキッペ王?」
スキッペにも勿論武勇の覚えはあったが、バラックと渡り合うとなればそれは無理というものである。
「バラック、そこまでだ!!」
その声に、その場に居た一同は振り返った。それは紛れも無くリッケンの勇姿であった。
「父上、ご無事ですか!!!」
リッケンは一目散にスキッペの元へと駆け寄った。
「リッケン、生きておったのか!!!」
スキッペは喜びに顔をほころばせた。
「メッツェルダー、ケールも無事だったか!」
ハマンがリッケンの後ろに立つ2人の若者の姿に気付いた。
「そう簡単にくたばるようでは、ドルトムントの騎士隊長は務まりませんよ、ハマン。」
メッツェルダーが嘯いた。
リッケンはバラックの方を見やると、大地に号令するように声を張り上げた。
「カーン王は我が討ち取ったり! もはや戦いは無意味だ! 潔く降伏せよ!」
戦場に旋律が走った。
「な、なんだって、カーン王が・・・馬鹿な、そんなはずはない。あんな小僧などに・・・」
リンケは動揺を隠せなかった。
そんなリンケとは対照的に、バラックは高笑いをはじめた。
「降伏などとは笑止千万。カーンが生きていようがなんだろうが、俺には関係はない! そもそも俺はあんな奴のことなど、鼻から相手になどしてはいない。より強大な敵と戦う機会を得んがために奴に従っていたまでだ。ドルトムントやレバークーゼンといったな。」
「なんだと!!! そんな理由で俺達を裏切ったというのか!!」
その言葉に、たった今本陣に到着したシュナイダーの怒りは頂点に達した。
「レバークーゼンに居る限り、お前らとも、同盟国であるドルトムントとも戦う機会は訪れそうにもなかったからな。」
「ゆ、許さん!!!」
怒りに燃え滾るシュナイダーを制して、リッケンは一歩前に出た。
「それならば、なぜ、カーンと戦わなかったのだ!」
「奴は恐らく俺を理解できる唯一の男だろう。俺の騎士としての気持ちをな。敵を倒しても決して満たされることのないこの戦いに対する飢え・・・お前らには分からんだろうな。」
「貴様のやり方は間違っている!!」
リッケンはいきり立った。
「剣を構えろ!!」
「・・・いいだろう・・・後悔するなよ、小僧。」
「皆手出しは無用だ、分かったな!」
他者に有無を言わせぬ迫力が今のリッケンにはあった。一同は固唾を飲んで、両者の睨み合いを見守るしかなかった。
「かかって来い、小僧。」
好戦的な目でバラックはリッケンを誘った。
リッケンにはもはや何の躊躇いもなかった。剣を構えると、真っ直ぐにバラックへと向かって突き進んだ。
「うぉぉぉおおお!!!」
金属の摩擦音が静寂の中に響いた。リッケンの一刀をバラックは難無く受け止めた。両者は剣を交えたまま全身の力をその手に込めた。
「てぃやぁ!!」
バラックの掛け声と共にリッケンの剣は押し戻され、彼の体も後退した。
「まだだ!!」
リッケンは再びバラックに向かって行った。しかしそれもバラックの体を傷つけることは叶わなかった。そして数合の激しい剣の応酬の後、リッケンは一旦バラックから身を置いた。
「なかなかやるようだが、俺を倒すところまではいかないようだな。」
激しい戦いでも、バラックは呼吸一つ乱してはいなかった。
”やはり正面からでは奴には敵わない・・・ならば・・・"
リッケンは剣を持ち直すと、大きく息を吸い込んだ。
「やぁぁああああ!!!」
掛け声と共に、三度リッケンはバラックに突進した。
「何度きても同じこと!!」
バラックは再び応酬するべく剣を構えた。しかしリッケンがあと一馬身と迫ったその瞬間、その姿は彼の目の前から消えた。
「何!?」
リッケンはバラックの面前で右へと飛び、疾風の如く横をすり抜けた。そして素早く馬を反転させ、バラックの背後を取った。
「くっ、小癪な!!」
バラックも身を反転させるべく手綱を握ったが、時すでに遅かった。
「今だ!!」
リッケンはバラックの背後で剣を振り下ろした。
「くっ・・・」
バラックは辛うじて身をよじったが、リッケンの剣を完全に除けることはできなかった。
リッケンは迷うことなくバラックに最後の一刀を喰らわせた。
「バラック、覚悟!!!」
一瞬の沈黙の後、バラックは静かに馬上からその身を落とした。スローモーションのようなその光景に誰一人声を発することができなかった。
暫し、奇妙な静寂が両者の辺りを包んでいたが、ゆっくりとバラックの口元が開かれた。
「・・・俺の命運も尽きたようだな・・・最後に良いことを教えてやる・・・フェラー王はフォルトナ城に拘禁してある・・・」
「何!!」
一同がどよめく中、最初に声をあげたのはシュナイダーだった。
「・・・戦いが始まった直後に部下に命じてフォルトナに・・・」
「つまり逃がしたということか? なぜそのようなことを・・・」
「・・・あの方を殺すことだけは俺にはできなかった・・・大恩あるあの方を・・・」
そこまで言うと、バラックはゆっくりと目を閉じた。
「バラックもやはり人の子ということであったか・・・」
スキッペが呟いた。
”強敵を求め、戦い続ける、か。敵がいなければ自身を失ってしまう、それがバラックという騎士だったのかもしれない・・・私も騎士の端くれとしてお前のことは理解できるつもりだ。しかし他者を戦いに巻き込むお前のやり方だけは絶対に許せない・・・”
無機質な大地に横たわるバラックを見つめるリッケンの頬を冷たい風が拭った。
「勝敗は決した!!!」
リッケンの言葉に、多くのバイエルン兵士達が武器を投げ捨てた。
リンケは一瞬首を項垂れたが、すぐに天を見上げ、剣を己へと向けた。
「カーン王、今お側に参ります。」
リンケの剣が自身の咽喉を貫いた。短く震えるとその体は地面へと叩きつけられ、2度と動くことはなかった。
将を失ったバイエルン兵の半数以上は自ら捕虜になり、残りは壊走していった。
「何だ、もう戦いは終わっちまったのか? まあ、いい、残兵は俺達に任せてくれ!!」
「ヘスラーさん、ゼヒツィヒの皆も!」
「わしもおるぞ〜い!」
「ビアホフ老子!」
懐かしい顔に、リッケンの顔に笑顔が戻った。
こうして、大陸至上最大の戦いは、ドルトムントの勝利で幕を下ろした。
リッケン・スキッペ王を先頭に、一同はドルトムントに凱旋した。
「ジーク・ドルトムント、ジーク・リッケン!!!」(ドルトムント万歳、リッケン万歳)
ドルトムント城に入場する一行を市民達が歓呼して迎え、口々に勇者達を称えた。リッケンが右手を高々と上げてその声に答えると、その歓声が一層大きくなった。
その夜は市民達に葡萄酒が振舞われ、街のあちこちで陽気な音楽が奏でられ、歌や踊りで大いに賑わっていた。
「ジーク・ドルトムント、ジーク・リッケン!」
そのお祭り騒ぎは夜明けまで続いた。
数日後、リッケンはドルトムント城門の前に立っていた。立派な騎士になるために旅立つことを決めたのだ。
「メッツェルダー、ケール、ドルトムント騎士団を頼むぞ。」
「はっ、命に代えましても・・・」
両将軍は恭しく答えた。
「ハマン、レーマン、これからもしっかり父上を補佐してくれ。」
両名は無言で一礼した。
「ビアホフ老子、お体に気をつけて、くれぐれも無理はなさらないで下さいね。」
「わしはお前さんが思っているほど老いぼれてはおらんぞ。」
ビアホフがそう答えると、リッケンはメッツェルダーとケールの方を見やって苦笑した。
「リッケン、立派な騎士になって戻ってくる日を待っておるぞ。」
「はい、父上。行ってまいります。」
父子は視線を交わすと、どちらからともなく頷きあった。
颯爽と身を翻すと、リッケンは優雅な身のこなしで騎乗した。そしてもう一度振り向き、一同の顔を見渡した。
辛い別れではあるが、リッケンに迷いはない。向き直ると、リッケンは馬を駆けた。
より高きを目指す―――
それから数千年という月日が流れた―――
西暦2002年6月――
大陸上での戦いから何世紀も時を超え、その記憶を残す者はもはやいない。しかし彼らは今も戦い続けている。舞台を灼熱のピッチに移し、より高きを目指して。
ここに、新たな伝説が始まる―――
あとがき――
2002年W杯から書き始めて、2004年ユーロを目前にやっと書き終えました。ホント、何を書いてしまったんでしょうね、私…。何なの、この終わり方…。そしてレジスタンス・ゼヒツィヒって一体…。それにしても、当然とはいえ、この2年間で代表メンバーも様変わりしてしまいました。リッケン王子…私は悲しいです。
あまり血生臭くならないように書いたつもりなのですが、カーンやイェレミースが死んだりと結構スゴイことになってます。別に彼らが嫌いという訳ではなく、話の都合上何となくです。そもそもイェレミース、好きだし。
ちなみこの小説、田中○樹の小説と三○志の影響を受けまくってます。
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