|
縁あって、初めて10部リーグの試合を観戦するという機会に恵まれました。ドイツ最低リーグである10部リーグがどのようなものなのか、ここで少しばかりご紹介したいと思います。 その前にドイツサッカーのシステムはどうなっているのか簡単にご紹介します。 |
| 1部 | Bundesliga | ブンデスリーガ | 言わずと知れたトップリーグ。稼いでます |
| 2部 | Zweite Liga | ツヴァイテリーガ | まだまだサッカーで食べていけます |
| 3部 | Regionalliga | レギオナルリーガ | サッカーが本業で副業をしている選手もいます |
| 4部 | Oberliga | オーバーリーガ | サッカーが副業になりつつあります |
| 5部 | Verbandsliga | フェアバンツリーガ | サッカーは完全に副業です |
| 6部 | Landesliga | ランデスリーガ | |
| 7部 | Landesklasse | ランデスクラッセ | |
| 8部 | Kreisliga | クライスリーガ | |
| 9部 | Erste Kreisklasse | エーアステクライスクラッセ | |
| 10部 | Zweite Kreisklasse | ツヴァイテクライスクラッセ | 仕事が一番、サッカーは??? |
|
4部以下になると、サッカーが副業という感じになってきます。夜に練習を行い(もちろん毎日ではなく、大抵週に2回くらい)、週末に試合というのが一般的です。 私が今回観戦したチームは、ドレスデンから程近いブランデンブルク州にある小さな街、Bad Liebenwerdaに拠点を置く『FC Bad Liebenwerda』。このチームは、18歳以上で構成される1軍〜3軍、年齢別のユースチーム、そしてAltチーム(やや年齢のいった方のチーム)で構成されており、1軍はクライスリーガ(8部)、2軍はエーアステクライスクラッセ(9部)、そして3軍はツヴァイテクライスクラッセ(10部)にそれぞれ所属している。この所属リーグをみただけで、あまり冴えないチームだということがお分かりいただけるだろう。 ホームスタジアムは、スタジアムという言葉よりはFussballplatz(サッカー場)という言葉の方が似合う。アウェー側はピッチの高さと同じなので試合を観るにはあまり適していないものの、一応ホーム側となっているサイドは土手のように2mくらい高くなっており、ベンチなども置かれているので比較的観戦しやすい。そしてピッチの周り4分の1(バックスタンド側)には、プロのスタジアムでもお馴染みの看板広告が据えられており、そこには地元の人以外絶対に知らないと思われる商店や会社の名が連なっている。もちろんチームのスポンサーもおり(このチームは水の会社)、ユニフォームはKappaで作っている。スタジアムの横にはクラブハウスと言う名のKneipe(この国からは切っても切れないビールを飲める場所)が併設されており、選手達はそこで着替えや試合前のミーティングを行っている。 節ごとに試合のパンフレット(A4判のコピー)も作成されており、その節の1〜3軍までの対戦組み合わせや選手の紹介(1軍のみ)などが載せられている。 土曜日の午後、1軍・2軍の試合が立て続けに行われる。まずは正午開始の2軍の試合からだ。冬の寒い中とあって観戦している人はさすがに疎らで、試合開始直後は数えるほどしか観客がいなかった。勿論、彼らは皆知り合いである。試合が始まっていても親しげにベンチの選手やコーチ陣に話し掛けている。道端での立ち話となんら変わるところはない。 2軍は9部所属だが、9部と言ってもまだまだ見られるものである。ただ、一週間仕事で疲れた後の週末に90分プレイするのはかなりシンドイようで、試合が進めば進むほど選手達の体力も覇気もなくなっていくのが良く分かる。ちなみに仕事の都合(鉄道関係)でほとんど寝ていない状態のままプレイしている選手もいるらしい。選手間の連携プレイはまだ良いのだが、細かいミスが多く、冷や冷やさせられることも度々だ。しかし勿論相手チームも同じレベルなのだから、試合としては十分成り立つのである。 後半になると、昼食、もしくはブランチを済ませた住民が少しずつ加わって、観客が増えてきた。しかし残念ながら、試合終了間際に勝ち越し点を取られて敗れてしまった。ベンチの真上に陣取った知り合いのオヤジから名指しでダメ出しされてしまう選手達に少し同情してしまう。 なお、これは1〜3軍同様なのだが、ボールがピッチ外に出た場合、選手達は自らボールを拾いに行かなければならない。もし遠くまで飛んでいってしまった場合には、「お前取りに行けよ」とお互いを牽制し合っている。そして誰かがボールを取りに行っている間に、他の選手達はしっかり休んでいるのだ。たまに観客席の子供が取りに行ってくれる場合もあるが、何度も度重なれば子供とて嫌気が差して次第に取りにいかなくなってしまう。 そして審判だが、90分間選手と一緒に走ったら心臓発作でも起こしてしまうのではと思わせる風貌だ。副審にいたっては、年金をもらっている傍ら、趣味で審判業をやっているのではと思われる。しかし主催側(ホームチーム)が審判に謝礼を払っているので、全くの素人というわけではない。 さて、2軍の試合が終わると、すぐに1軍の選手達がアップをするためにピッチに現れる。2軍の試合が終わった15分後には1軍の試合が始まるので、時間に無駄のない観戦が可能である。1軍の試合が始まる頃には観客も更に増えてきて、その中には選手の彼女などもおり、彼女達に向かってピッチから投げキッスをしているアホもいる。 1軍はやや年齢層が下がる。練習も怠っていない様子で、体つきもしっかりした選手が多い。そして8部とは言っても、思ったよりもレベルが高いのには驚かされた。とは言っても、やはり技術的には上のリーグとは比べ物にはならないのだが。こちらも2軍同様に仕事で疲れているのか、冴えないプレイを連発することもあるが、細かなプレイは明らかに2軍の選手を上回っている。試合は終了間際に勝ち越し点を上げるという劇的な展開に終わり、観客も大喜びだった。観客と言えば、このチームに特別な愛着を持っている人ばかりで、自然と応援に熱がこもっているのだから、勝利の喜びもひとしおなのであろう。 1軍の試合中に缶(この辺が笑えるのだが)を持って観戦料を徴収して回っている人々がいたが、基本的にアウェーの応援に訪れた人は、観戦料を支払わなければならないそうだ。大抵1ユーロ〜1,50ユーロ(約150円)くらいなのだが、中には払うことを渋っている人もおり、ホーム側のファンから罵声が飛んでいた。 今日のプログラムは全て終了。試合後は、選手達も観客も今日の試合をネタにビールを飲みながら語り尽くすのである。 翌、日曜日の午後に、3軍の試合が行われた。いよいよドイツ最低リーグ、10部リーグの試合である。昨日とは違う場所だったが、こちらも昨日と似たりよったりという感じだ。 監督という存在はおらず、選手の1人が監督を兼任している。交替選手もほとんどおらず、体の重そうな選手達を見ていると、90分間のプレイに耐えられるのかと不安にさせられる。 しかしそんな心配を他所に試合は始まる。そしてそこには、1軍と2軍の間の差とは比べ物にならないほどの差が2軍と3軍の間にあった。選手の中には3軍とは思えない動きをする選手が数人いたが、彼らは学生(別の街で大学に通っていて、週末に実家に帰ってくる)であったり、ストレスになるからと、定期的に1軍の練習に参加することができず、自ら3軍に席を置いている者たちである。彼らは毎回試合に出られるわけではないので、彼らがいない3軍というものを想像すると、下から2番目という現在の順位も納得できる。 後半から入った色白でひ弱そうな選手にいたっては、敵選手に何度もボールを奪われ、周りの足を引っ張るばかりであった。なぜ彼のような選手が試合に出ているのか。彼は来週から軍隊に行くので(1年間の兵役は義務)、監督としては最後に彼を出さないわけにはいかなかったという訳である。このように、やむ終えず私的理由を優先させなければならないチーム事情に、監督のジレンマはいかなるものであろうか。 それでも試合中の選手の顔つきは真剣だ。これは単なる趣味ではなく、ブンデスリーガと同様、チーム同士の真剣勝負なのだから当然である。もちろん皆サッカーで食べているわけではないので、選手が試合よりも仕事を優先するのは当たり前だ。食べられなければサッカーなどできるわけもないのだから、急な仕事が入って試合に来ないというのも日常茶飯事だ。そんなときは助っ人として違う選手がプレイするが、Altチーム所属の57歳の選手が替わりにプレイしたこともあるそうだ。更に、1人しかいないキーパーが急な仕事で試合に来られなくなり、フィールドプレーヤーがキーパーのポジションに入って負けたこともあったと聞いた。 試合結果は1対1。しかし内容云々はどうでもよい。試合が終わると緊張から解放された選手達に笑顔が戻る。観戦に訪れていた家族と談笑し、友人達とたった今終わった試合を議論し合う。この光景は負けても勝っても変わらない。 明日からまた仕事に、学校に、それぞれの一週間が始まり、週末にまたピッチに集う・・・ 10部リーグがどんなものか、少しはお分かりいただけたでしょうか。彼らは勿論サッカーを楽しんでいるけれど、それ以上にプロ選手と比較しても変わらないほどのプレッシャーにも晒されているのです。というのは、彼らも勝つことを目的としているからです。そしてマスコミと変わらない地元のコミュニティでヒーローになれるか叩かれるかは、全て自分の力量とチーム次第。そして試合後に美味しいビールを飲めるかどうかも。 最後に一言 10部リーグとは、その下に落ちることのない素晴らしいリーグなのです。 今回私が観戦した『Bad Liebenwerda』のホームページ http://www.fc-badliebenwerda.de |