●妊娠判明
●治療開始
●絨毛検査(羊水中のホルモンも参考にします)
●性別判定 →男児 →治療中止
→女児 →21水酸化酵素欠損症の遺伝子診断
→患児でない →治療中止
→患児である →治療続行
図にするとこのようになります。
最近、先天性副腎過形成の多くを占める21水酸化酵素欠損症について次の論文が発表
されました。
Consensus Statement on 21-Hydroxylase Deficiency from The Lawson Wilkins
Pediatric Endocrine Society and The European Society for PaediatricEndocrinology,
The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
87(9):4048-4053:2002
これは、21水酸化酵素欠損症のまとめの論文で、その中に出生前診断についても書かれています。
Prenatal diagnosis and treatment
出生前診断と胎内治療
胎内治療は、女児にのみ起こりうる異常の防止には効果があるのではないかといわれるようになってきました。先天性副腎過形成のデキサメサゾン(ステロイドホルモンの1種)による胎内治療の適性、倫理、結果については、今も議論されているところです。しかし、出生まで治療された200人以上の胎児と、一時的に治療された1000人以上の胎児のデータによれば、妊娠のとても早い時期に治療を始めることで罹患女児全員のある特定の異常は改善され、85%以上は完全にその異常がが阻害されているのは明らかです。
結果のばらつきは、治療開始時期の遅れ、治療の中断、デキサメサゾンの代謝やアンドロゲン(男性ホルモンの1種)に対する感受性の違いによるのかもしれません。
一定の副作用についての報告はなく、出生体重の減少もありません。しかし、治療された胎児で大人になった者はほとんどなく、したがって長期の経過観察はできていません。だから、現在のところ結果はとても良いのですが、出生まで治療された患者さんの長期の安全性は確立されておらず、また、胎児の7/8は、男の子であったり、発症しないことが分かれば治療が中断されることになります。つまり、胎児の1/8だけが、治療の対象になるということです。(胎内治療は、女児にのみ起こりうる異常を阻害することを目的にしているため、女児のみ対象となります。また、先天性副腎過形成の遺伝形式では、1/4の確率で罹患児が生まれます。したがって、(女児がうまれる確率)1/2 x (罹患児が生まれる確率)1/4 = 1/8が、治療対象となるわけです。)
治療した母親には、未治療の母に比べて、体重増加、浮腫、皮膚線条がより多く認められますが、高血圧や妊娠糖尿病については現在データは示されていません。
胎児や母体における糖質コルチコイドの動きは分かっていません。分かっているデータによると、ヒトの胎児のコルチゾールのレベルは低く、胎児治療に用いられるデキサメサゾンの投与量では、胎児の糖質コルチコイドの濃度は正常レベルを上回る可能性があります。しかし、治療時の胎児のコルチゾールの変化やデキサメサゾンの濃度は分かっていません。
出生前治療プログラムの要素には、妊娠前の遺伝カウンセリングや発端者および両親の遺伝子診断も含まれます。その後に、絨毛によって得られる胎児の遺伝子の診断となります。胎児の性別はY染色体(男性であるとこの染色体を持っています)のPCR(遺伝子を増幅する方法)か染色体核型によってわかります。遺伝子特異的なPCRにより少なくとも90%は21水酸化酵素欠損症を起こす遺伝子が分かります。
胎内治療の基準は以下に示します。
1)以前に症状のある兄弟または一親等の親戚が、DNA解析で遺伝子変異が認められた、
いわゆる古典的な先天性副腎過形成症
(女児にのみ起こりうる異常や、塩類喪失を認める)である場合。
2)父が発端者の父と同じであると予想される場合。
3)迅速で質の高い遺伝解析が利用できる場合。
4)最終月経後9週以内に治療が開始される場合。
5)治療的流産の計画がない場合。
6)両親の受け入れが十分と思われる場合。
この場合には、母の体重(kg)当たり1日20μgのデキサメサゾンを3回にわけ、妊娠が確定したらすぐ始めるのが最も良いとされています。遅くとも最終月経から9週以内に始める必要があります。
治療は罹患女児に対して出産まで続けられ、他の児では中止されます。母親は血圧、体重やステロイドホルモン等を細かくチェックしていくこととなります。
胎内治療には、小児内分泌医、ハイリスクな妊娠をみれる産科医、臨床遺伝医、分子遺伝研究者によるチームが必要です。
★このページは、チェリーちゃん(仮名・6才の女の子)の主治医の先生と
助手の先生が訳してくださり、わかりやすい文章に書き直してくださったものです。
お忙しい中、ご協力いただきました先生方には、心からお礼申し上げます。
今後ともこのHPを暖かく見守ってくださいね。