「うみのそこ」
太陽が全方位から昇る
月が白々と薄れてゆく
僕は海の底から眺める
薄く白が広がる空で
下弦の月は染まらずに染まれずに
白のまま
記憶がふいに起こされて
懐かしさだけ持っている
ああ、そうか
いつか見た
僕の瞳と よく似てる
僕は腹を這うさかなを愛で
月は白くもそこにあり続け
太陽は全方位から昇り続け
魚はぼくのやわらかいところから食べる
ぼくはないぞうのなまえをしらないので
どこが食べられているかもしらない
群がるのはおなかばかり
ぼくだってみたことない
いたみはなんとかわかるけど
やっぱりぼくのしらないいたみだ
ちょうちょに似た魚が
みぎてのくすりゆびにちょいと触れて
みんなが群がるおなかへ急ぐ
まだちゃんとふやけてなかったか
くすりゆびはしっていたのに
ぼくはくちびるをしっている
ぼくはこのしたをしっている
しっているところがやわらかくなって
食べられていることがわかるまで
ねむらずにめざめていよう
「輪廻の雨」
無数の太陽は私を活発化させ
私を溶かして私は雫になって
私の足をつたって
地面の土に染み入ります。
私は名前をもたない植物の
静脈のような根によって吸収され
私はある種の養分となって
彼のしおだれた葉から排出されます。
私はらせんのような曲線を描いて
ゆらり高い空へと上っていって
私が一滴一滴と天に蓄積されます。
そうして降ってくるはずの私を求めて
私は天上を仰いで口をあけました。
私の輪廻は外部においてぐるぐる回り
私の内部が疎外されているようで
くやしかったのかもしれません。
もしくは無限に増殖しつづける私を
他の誰かにとられてしまうのが
くやしかったのかもしれません。
私はいっこうに降ってきません。
空の青さは清清しくも皮肉です。
喉の奥は渇いて渇き 舌の付け根に結晶化した一塊の塩分
それはたぶん私の中で唯一の 限りなく私に近かったはずの私。
口を閉じるとそれは ぬめぬめしたアミラーゼに絡まれて
味覚のとどかない体内の奈落へと
溶け落ちてしまったのでした。
「NUM-AMI-DABUTZ」 詩・向井秀徳
現在、冷凍都市に住む 妄想人類諸君に告ぐ
我々は酔っ払った 今日も46度の半透明だった
HAGAKURE理論に基づき 吠えた NUM-AMI-DABUTZ
が成功し 祝うこの世の無常節
同情の果ての冷笑を無視
俺は際際に集中力を高める必要がある。メシ食うときは新聞を凝視する必要がある。
中間試験を受ける必要はない。軍事訓練を行う必要はない。
赤軍派に感化される必要はない。俺はそんな平和な俺の平和を歌う必要はない。
鋭角恐怖症のヤツは耳をふさげ。
エレクトリック混乱主義者の俺は酒毒に侵食された脳が繰り出す言葉を呟きながら
虚ってあいまっていたから
歩き出した冷凍都市の18時半
真昼間にひっつきまくった男女の生殖器官はもういい加減 どうもこうもならん。
視姦 される女たちが自意識をまきちらし 恥さらし
しかしとりすましてパンツ濡らし 天は雨を降らし 餓鬼はガンジャ吹かし
それでも整然と営む冷凍都市の暮らし