オープンマイク 六番手 ROMさん 戻る
「eutとっとのペット 落ち葉編 」
すっかり冬に入った
朝もめっきり冷え込んできた
彼は風邪もひかずに元気でいるだろうか?
天気のよい日、久しぶりにペットのネアンデルタール人を
小さな湖のほとり 小さな森に訪ねた
大きな体を揺すりながら 白いウサギを懸命に追いかけていた
目が合った瞬間、ウホッと挨拶をくれて
脱兎のごとく 通り過ぎて行った
大イチョウの木の下で待つこと 30分
意気揚々と彼は汗だくなって ウサギを肩に戻ってきた
ウホッウホッ 上機嫌だ
持ってきた熱いコーヒーを勧める
いつもの大好きなおにぎりと玉子焼きも 目の前にひろげた
ますます上機嫌で 海苔にくるまれた小さな黒いおにぎりを
高々と空に掲げたあと おいしそうにパクついている
玉子焼きも最近やっと好みの甘めに作れるようになった
あっという間に 平らげた後
おいしそうにシケモクを吸っている
このごろ、わたしは仁王立ちになって コンコンと禁煙を説教しなくなった
彼は彼だと想うようになったのだ
食後の軽い散歩に出た
膝を曲げた大きなネコ背のあとを ゆっくりと ついて歩いた
森の中は 一面の落ち葉が敷きつめられていた
ふかふかの落ち葉のベッド
クヌギや紅葉、イチョウなど
何十年、いや何百年 かかって出来た心地よい感触
色とりどりの鮮やかな落ち葉
踏みしめると はじき合うように匂ってきた
彼はそこに腰を下ろし、空を見上げた
すっかり枝だけになった木をとおして雲が見える
白い大きな雲が 初冬の風に流れていく
さまざまにすばやく形を変えながら わたしも横に腰を下ろし、同じ空に夢中になった
ときどき目が合い
そのたびに彼は白い歯をみせて ウホッと笑いかけてくる
マッタリとした不思議な時間が流れていった
人間でもない 言葉も満足に話せない
お金の価値さえ知らない
社会的なものは 何ひとつ持っていない
それでも いつも抱えきれないほどの想いをわたしにプレゼントしてくれる
もしかしたら 天国とは こんなものかもしれない
そう思ったとき 彼がゆっくりと押し倒してきた
暖かい重さの下 はっきりと空を仰いだ
雲と目が合った 笑ってくれた
わたしも思わず微笑み返した
わたしのペットは ネアンデルタール人
わたしの心を抱く 唯一の雄がここにいる
天国へ連れて行ってくれる 唯一の雄がここにいる
電話
わたしは
大概泣いている
嗚咽まじりの挨拶をする
波頭のたかぶった気持ちが
彼の言葉に吸い込まれていく
泣いてもいいんだよ
涙をすかすと 紫煙の向こう
彼の曇った瞳が見える
しばらくすると 近況を伝える
つい昨日と今日にあったことを
彼は在るようにそこにいる
聞いているよ、いつまでも
少しずつ穏やかな声に顔を埋める
もうしばらくすると
夏空に虹をつかんだ女になり
仔犬のように笑いあっている
そのときまでには たいてい
逢う日取りを彼が目の前に置いてくれる
そして 最後に 甘い匂いの音だけの世界を
二人で肩を寄せあい聴いている
何ごともなかったかのように
そもそも 詩人とは 何だろう?
詩人が もっとも人を惹きつけるのは
詩才よりも その豊かな感受性だ
澄みきった瞳 小さなてのひら
生まれたままの無垢な こどものことば
すぐれた詩として 感動する理由は
きらめく感受性によるものなのだ
大いなる人生に船出して しばらく
大海原に沈む夕日
悲哀が 詩人に 詩をあたえる
満天の星空 身ごもった恋
詩人は踊る 詩とともに 永遠の愛を願って
青い砂浜
天国と見まがうばかりの歓び
詩人はのびやかに歌う 幸福の絶頂を
荒れ狂う波がしら 火のような苦悩
詩人は 詩と格闘する 冷たさに耐えながら
そして やっと辿りついた 真実の御前
ただただ 絶句して 叫ぶのだ
生まれたての 赤ん坊のように