4、帰 郷

  11月26日、11時17分の特別帰還列車で東舞鶴駅を出る。 途中の駅で帰還兵を降ろしながら、19時16分、名古屋駅に着いた。 すでに役場から到着時間の連絡があったらしく、出札口に父と弟(哲)それに友 人の西田君が手を振っている姿が見えた。 笑顔でくしゃくしゃになった父の姿が何となく小さくなったように思えた。 途端に、いろんな思いで胸が詰まり、走り寄って父の手を握り、 「ただいま」というのがやっとだった。 江本君と一緒に名鉄電車で半田へ帰る。 電車の中で、父が名古屋駅の駅裏にある闇市で買ってきてくれた“練り餡の饅頭 (餡玉の回りに小豆が付いている饅頭) を江本君と食べたが、その旨かったこと と言ったら、3年間夢に見た味で、とても言葉にならなかった。 3年2ケ月ぶりに故郷の半田へ降り立ち、関東軍の防寒帽、ロ助の薄汚れた毛皮 の外套、踵の擦り減った軍靴、雑嚢という一見して帰還兵と分かる姿で、見慣れた 懐かしい町中を歩き、顔見知りの人と挨拶を交わしながら家まで歩いた。 家へ着いて、帰っていないはずの明兄さんの姿を見て驚いた。 後で訳を聞くと、佐世保に上陸して四国の戦友のところへ寄って、昨日、帰って きたという。 兄弟が、一日違いで帰ってこれたことは、正に奇跡であると思った。 そしてお互いの無事を喜び合った。 近所の方々が祝いに来ていてくれていた。 なによりも真っ先に、両親に、 「勉、只今帰って参りました」と報告をして、私の“抑留生活 は終わった。


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