2)マーシャ

 そんな作業をしているうちにマラリアにかかり、作業を休んで医務室の世話に なるようになった、毎日決まった時間になると熱が出るのである。 兵舎で寝ていると、看護婦のマ−シャ(20歳位の丸顔であどけない感じの娘 )が、巡回で様子を見にきてくれたが、熱が出ないときは割合、元気で退屈だっ たので、彼女と日本の様子、私の家や家族の話などをして居る間にとても親しく なって、彼女も両親の話や生い立ちまで話すようなった。 そのうちに身体も回復して作業に出られるようになったが、マーシャは一般の 作業に出るとまた病気になるといけないからと、私の身体を気遣って収容所の中 にあるパン工場に斡旋してくれたのである。 パン工場で仕事をすれば腹を減らすようなことはないし、作業も楽だからとの 彼女の計らいであった。 パン工場にはロ助の監督のバーブチカ(おばあさん)と三重県出身の国分さん と云う先輩がいた。 マーシャに連れられて行って、バーブチカに私を使うように話をしたが、 「国分一人で充分だから要らない」と断られてしまった。 マーシャとバーブチカは、“入れろ “要らない で延々と話し合ったが、結 局マーシャの“所長の承諾を得てある と云う言葉で、バーブチカも仕方なく私 を使うことにしたのである。


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