11)水泳ぎ

 ソ連は、シベリアという言葉の感覚から常に厳しい寒さで、水泳ぎなどできな いと思っている人が多いと思うが、私も始めての夏を迎えてやはり結構暑いこと が分かった。 ビースク収容所を出て、砂糖工場の東側を通って2〜3km行ったところに、 北極海へ流れ込んでいるオビ河の支流で、ビーヤ川という川が流れていた。 ビーヤ川は、流れがゆったりとしていて、川幅は70mか80mくらいもあっ たように思った。 暑い日に時々その川へミッシャや歩哨たちと一緒に泳ぎにいったことがある。 ビーヤ川の水はとても冷たくて、とても長時間泳いでは居れなかった。 泳ぐといっても勿論、海水着などないので軍隊以来の木綿の褌で泳いだが、そ の褌姿をみて、ロ助達はとても珍らしがって、 「日本人は誰でも褌をしているのか」と聞くので、 「家にいる時はパンツをはいているが、軍隊では規則で誰でも褌をしとる」と云 うと、ミッシャなどは、 「ハラショー(これは良い)俺も締めてみる」と大いに気に入ったようだった。 もっとも彼等の大半は、フラちんで泳いだ。 以前にロ助と一緒に入浴したときに知ったのであるが、殆どの者は、パンツを 履いていなかったが、これは男性ばかりでなく、女性も同様である。余談になるが、零下20度位のときでも女性で下着を付けていない者が多い ので、ミッシャにその理由を聞いてみたら、 「冷えることによって自然に避妊効果がある為だ」という。 その時は彼等の解放された日常の性生活を見ているので、“成程尤もだ と 納得したが、それが本当なのか嘘なのか実際のところは、今もって良く分から ないのである。 又、ソ連の労働者には女性が多いので、聞いてみると独ソ戦での戦死者が多 くて、それで男性が少ないのだという。 確かに、何処の職場でも女性が大半を占めていた、だが彼女等はとても陽気 でネッカチーフを被り、数人集まるとすぐにコーラスがはじまり、時にはタタ ールダンスなどを踊って興じるほど明るい人達である。


ホームへ戻ります 目次へ戻ります
食料の受領 戦友と別れて