五、再び労働へ

1、涙の逆送

  そんなある日、例の如く裸にさせられ尻をつねって行う身体検査が行われた。 最初は帰国を前にソ連も気を使って、健康管理をして呉れるのだろうと思ってい たが、どうもそうではなく再度健康な者を労働に出されるのではないか、との噂が 出て、それが数日後、現実となった。 ロ助の説明によると、“日本からの配船が円滑に行われず、今すぐに帰国する事 ができないので、順番がくるまで半年間仕事に就く と言うのであるが、ナンとも 納得のできない話である。 運命の5月27日、アルタイスクから一緒に来た者のうち半分は帰国出来るが、 あとの半分は、これから半年間の労働に出るというのである。 私は、労働組に選別されて再び作業に戻ることになった。 今まで苦楽を共にしてきた斎藤孝一や多くの仲間達と別れて、帰還船高砂丸を目 の前に見ながら、中島修一、嶋田若樹、小森正義達とともに、行き先も分からず、 再び赤い貨車に乗せられた。 労働期間は一応、半年間と言われていたが、ロ助のことだから一年先になるか、 二年先になるか全く信用できず、今度、このナホトカへ来るのはいつになるのか全 く分からないのである。 ナホトカの砂浜と日の丸を付けた帰還船を後ろにして、列車が動きだした時には 、みんな黙り込んで、無念の涙に暮れた。


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