1)収容所のロ助

 この収容所のロ助は、ほとんどがバラビリャンカ収容所から一緒にきた人達で ある。 白髪で品のいい収容所長のニコライフ中尉、下士官で蟹股のカンドバイ、ミー シカ、気の弱いニコライ達については、バラビリャンカでちょっと紹介したが、 少し補足しておく。 所長の奥さんは色白で小肥りした、よく喋る下町的なマダムであったが、何と なくいつも所長夫人を鼻にかけた態度がみられた。 もう1人ニコライフという同じ名前の27〜8歳の中尉がいたが、この中尉は 色が白くて恰幅のいい男で、所長代理といった地位であった。 この男はなかなかの色男で女友達が多く、いつも小遣いに窮していたために、 始めの頃は時々倉庫へ来て、食料や被服を寄越せと言って来るような男だった。 しばらくして、このニコライフのヤミ商売を手伝って金儲けをさせてもらった ことがあったが、後程書きたいと思っている。 次に下士官3人のうち、人気者は、背の高いミーシカこと「ワンパ」だ。 カンドバイと同じように大声を出して棒を振り回したが、彼は人を叩かず地面 や周辺の物を叩いて威嚇するだけで、片言の日本語を使い、子供っぽい顔付きで 何となく日本人からも好かれていたようである。 ニックネームを「ポーボル(料理人)」と呼ばれたニコライは、小柄で色白の 見るからに気の弱そうな男(事実気の弱い男)で、われわれと喧嘩をしてもすぐ にべそをかきそうな顔をする下士官で、主にポーボルとして炊事場で日本人の炊 事班と一緒に働いていた。 日本人の炊事場班長の当麻候補生の子分的存在で、どちらが抑留者か分からな いくらい、当麻の云うことにはよく従っていた様だ。 最後は、私がこのビースクにいる間、お互いに心から打ち解けて一緒に仕事を してきた「ミッシャ」である。 年齢は私と同じ、背の高さも同じくらいの、とても歌が好きな男で、いつも大 きな声を張り上げて唄い、話をするときは口を少し尖らせる癖があった。 彼は気のいい男で、いつも日本人の味方をしてくれたので、随分と助けられた 思い出がある。 そのほかにもう一人ニコライというデブの下士官が時々収容所に出入りしてい たが、この男のことも後ほど書いてみたいと思っている。


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