10)凍 傷
朝暗いうちから、夕方まで零下30度を超す中で伐採作業をしておれば、凍傷
にかかる者も日々に多く出た。 とくに耳、鼻先、手足の指先など外気に触れる個所や末端部が最初に凍傷にな
り、軽度のうちは部分的に白くなるので、その時点で痛くてもしっかりと揉めば
徐々に赤みがさしてきて回復するが、これをしなかったり、火にあたって暖める
と腐り出すのである。 靴 化膿し始めるとすぐに骨まで腐るので、当然本人の苦痛は大変なものだと思う
が、その膿の匂いは、とても我慢できない程強烈な臭さであった。 フエルトで出来た雪国用の長靴(ワーリンキ)や防寒靴は、1足しかないので
誰の靴も擦り切れて底に穴が開いていた。 その上、靴下の代わりにボロ布を足に巻き付けて、終日、屋外で労働するのだ
から、こまめに患部を揉みほぐすより他に凍傷を防ぐ方法はないのである。 医療設備のない収容所生活では、自分で防ぎ、治療するより仕方なかった。
作業より帰ってからワーリンキとボロ布を、棟に一つしかないペーチカで乾か
すのが、ただ一つの防衛手段であった。
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