旅烏のやくざ番場の忠太郎が、二十五年前に生き別れた母と再会するが……。
長谷川伸「瞼の母」五度目の映画化。
番場の忠太郎
1955
日本
86分
モノクロ
<<解説>>
長谷川伸の股旅もの「瞼の母」の映画化。現在までに七回映画化されていて、本作は五回目にあたる。幼い頃に生き別れた母の面影を追いつづけるやくざもの姿を悲哀を込めて描く。主人公の番場の忠太郎は、主演第二作となる若き若山富三郎が演じる。ドラマ部分では、またまだ台詞回しに拙なさはあるものの、立ち回りで啖呵をきらせれば、なかなの迫力だ。瞼の母・お浜には、山田五十鈴。中盤から登場するシャレ男・青木の旦那扮する森繁が、主演を食いそうなほど存在感がある。
<<ストーリー>>
やくざの番場の忠太郎は、舎弟の半次と共に、いかさま賭博の飯岡助五郎を待ち伏せるが、逃げられてしまった。四つの頃に母親と別れ、二十五年。ひとりぼっちの旅の忠太郎は、母親と妹がいると聞く半次に堅気になるよう諭し、彼の故郷である武州金町の辺りで別れた。一方、助五郎の子分であるつき膝の喜八と宮の七五郎は、半次の家を突き止め、家の前にいた妹のおぬいに果たし状を渡したのだった。
その夜、半次が母のおむらに懇願されて堅気になる決心を固めた時、喜八と七五郎に家に踏み込んできた。黙っていられなくなった半次は、喜八と七五郎を相手に一戦交えたものの、多勢に無勢で危うくなってしまった。そこへ、半次を心配して様子を見に来た忠太郎が駆けつけ、喜八と七五郎を斬った。息子の命の恩人となった忠太郎に感謝したおむらだったが、相手が息子をやくざにした悪い友達であることを知ると、反感を持った。忠太郎は、おむらを安心させるため、彼女に頼み、「喜八と七五郎を斬ったのは番場の忠太郎である」といった文句を紙に書いてもらい、その紙を死骸に添えたのだった。これで、半次への復讐の手が及ばないだろう、と。
旅を再開した忠太郎は、母親を探しているという幼い姉妹と出会った。忠太郎は、自分と同じ境遇にある姉妹に同情し、母親がいるという潮来まで一緒に行くことになった。そのころ、街道に忠太郎の後を追うおぬいの姿があった。忠太郎の母親の消息の手掛かりを知り、彼に知らせにやってきたのだ。途中で雲助にからまれたおぬいだったが、御用役人の青木一作に助けられた。青木は、当り屋の清吉が金町から持ってきた紙を手掛かりに、喜八と七五郎を斬った下手人を追っていたのだ。
忠太郎は、潮来の宿でおぬいと再会した。おぬいから、母親らしき女が江戸の大きな料理屋「水熊」で女将をしている、と聞き、会いに行くことに決めた。その時、忠太郎たちの座敷に、助五郎の子分たちが怒鳴り込んできた。忠太郎は、助五郎の子分たちと大立ち回りを繰り広げるが、青木と清吉が事態を収拾した。ひととおりの事情を知った青木は、無筆である忠太郎にあの紙は残せない、などと理由をつけ、彼を放免にした。さらに、青木は、自分が責任を持って姉妹を母親のもとへ届けると言い、忠太郎に江戸に行くようすすめた。忠太郎は、無事に母親と会った暁には堅気になることを青木に誓い、おぬいと共に江戸に向けて出発したのだった……。
<<キャスト>>
若山富三郎
桂木洋子
(松竹)
森繁久彌
鳥羽陽之助
阿部九州男
伊澤一郎
三井弘次
(松竹)
滝花久子
(大映)
光岡早苗
花岡菊子
坪井哲
冬木京三
大原榮子
井波靜子
大野佳世子
本郷寛美
五月藤江
鳥羽恵美子
松政雄
石川冷
築地博
伊東健
一條務
秋山要之助
國創典
村洋三
山岡正義
山川朔太郎
橋一郎
矢島孝一
志摩龍二
相田春夫
山田五十鈴
<<スタッフ>>
[企画]
柴田万三
[原作]
長谷川伸
「瞼の母」
[脚本]
三村伸太郎
[撮影]
岡戸嘉外
[照明]
小山正治
[録音]
澤田一郎
[美術]
伊藤壽一
[音樂]
C獺保二
[助監督]
柴田吉太郎
[編集]
笠間秀敏
[特殊技術]
新東宝特殊技術
[製作主任]
藤岡治郎
[監督]
中川信夫