汎用生物兵器1
プロローグ
4083年。人問は全滅していた。人間がその手で作り上げた、工ホバの手により・・・・・・
しかし、この時代において、歴史の影に隠れて細々と生きている人間もいたのである。
リーバードが地球を巡回し、人問の生き残りを抹殺する。そんな殺伐とした風景だけが
残る街で、ドリッカー=ヴォルナツトは生まれた。生まれの母親も知らず、父親の手のみ
で生きていたのである。幸福の文字などない。一日のうちに食ぺるものを探ずだけで、手
一杯だった。
父親、ライト=ヴオルナットは、何とかこの息子を生かそうとしていたのである。生き
て、そして今一度人間の社会を、いや。本当の人間の杜会を作り上げて欲しいと願ってい
たのである。
十月四日。
「ねえ・・・・お父さん。」
「ん?」
まだあどけなさの残る四歳程度の少年は、甲高い声で父親へと話しかけた。
「今日ぱ食べるもの・・・・・・あるの?」
「ああ。久しぶりに食料が手に入った。」
ライトは、そこまで言うと少しせき込んだ。
ドリッカーは、四歳にしては異常なまでの思考能力を持つ人間だった。俗に言う天才と
いう奴である。
「もうすぐ・・・・お前も一人立ちだな,j
「でもさ・・・・僕一人じやローズを守っていけないよ。ローズはまだこんなに小さいん
だもの。」
ライトはドリッカーの心配そうな声を聞いて、すまなそうに顔を背けた。
「・・・・私もそう思う。だが、ここにいればいずれはリーバードの軍隊に見つかってし
まう。」
「やっつければいいじやない。」
疑いもせずにそう叫ぷドリツカーの頭を、ライトは優しく撫でた。
「お前が・・・・・もう少し成長していればな・・・・・・・。」
「できるさ!僕は父さん達を守ってみせる。」
ドリツカーの大きな声に驚いたのか、まだ赤ん坊のローズは大きな声で泣き出してし
まった。
「あ・・・・・。」
「全く・・・・今あいつは昼寝の時間だから、大きな声は出すなと言っただろう。」
「・・・・・ごめんなさい。」
ドリッ力一はそれだけ言うと、その場に座り込んだ,
「ねえ・・・・・お父さん。」
「ん?」
「おかあさんは・・・・・どうしたの?」
ライトは一瞬表情に逡巡を見せたものの、すぐに答えた。
「おかあさんは・・・・遠い遠い国に行ってしまったんだ。」
「遠い?」
「ああ。うんと遠い。」
ドリッカーには、それがライトの作り話だということがよくわかっていたが、そうまで
して母親の行方をくらまそうとする父親の意志が理解できなかった。
ドリッカーは納得できない様子で、可愛い妹の顔を見に行った。
「・・・・・・!」
ライトが何かに気付いた。
「くる・・・・・・。」
呟いたその一言は、ドリツカーにも聞こえないほどに小さいものだった。
ドリッカーは外で遊んでおいでといわれ、こともわからぬままに外に出た。
「なんだったんだろう・・・・・・。父さん、怖い顔してた・・・・・・・・。」
妙な心配ぱかりが募っていく。
やっぱり戻った方がいいかな・・・・・・。
そう考えたドリッカーが、家の方に歩みを進めようとしたその時だ。
ライトは家の周りをリーバードが囲んでいるのを知った。
「まずいな・・・・少なくともローズだけは逃がさなくては・・・・・・・。」
ローズを耐熱カプセルに入れ、カプセルの裏にドリッカー宛のメツセージを書く。
「逃げろよ・・・・。」
ライトがちようどメッセージを書き終えたその時だった。
惨劇。まさにそれとしか形容できないものだった。
ライトは空高く吹き飛び、ローズは耐熱カプセルに入っていたため平気だった。
「父さん!!」
ドリッカーが涙を流しながら家に戻ったときには、すでに遅かった。
「父・・・・・さん?」
おそるおそる父親を呼んでみる。が、反応はない。
「父さん!」
もう一度声を大きくして呼んでみる。だが、ライトからの返事はない。
「父さん・・・・・・・・・。」
そこには、変わり果てた姿で横たわる、ライトの姿があった。
「・・・・・・・・・。」
やりきれない。涙がぼろぼろとこぼれ落ちてくる。
「父さん・・・・・・・・・なんでいってしまうんだよ・・・・・・。僕一人で・・・・
・・・・・どうやって口一ズを守っていけっていうんだよ・・・・・。
父さあああああああああああああんっ!!」
逃げまどうドリッカーを追いかける、一つの工アフォースがあった。
「人間の子供が二人、逃走中です。」
「ごくろう。」
そこにいる司令官らしき人間が、メインモニターでドリッカーと口ーズの姿を視認した。
「一人は四歳くらいの幼児。一人は生後何カ月かの赤子と言うことです。」
司令官らしき人型リーバードは、オペレーターの言葉に深く頷いたあと、もう一度メイ
ンモニターに目を戻す。
「さて・・・・。我々は今ここにいる二人の人間を殺さなくてはならない。」
乗員達は、その言葉に深く頷いたあと、気にしていないように自分の仕事に戻った。
「隊長。」
「ん?」
後ろから聞こえる落ち着いた声に、隊長と呼ばれたリーバードはおもむろに振り返っ
た。
「自分に、行かせて下さい。」
「何故だね?」
司令官は対して驚きもせずに尋ねた。
「自分がケリをつけたいんです。」
司令官はまゆを少し動かしたものの、さしたる動きは見せなかった。
「・・・・・・隊長!」
そう言った途端、突然オペレーターから声が上がった。
「何かね?」
「さっきの子供達から、我々と同等の反応が出ています!j
その時になつて、ようやく司令官はオペレーターの方に向き直った。
「どういうことかね?」
「はい。彼らの体内から、我々と同じ素材で作られたものがあるのです。」
「・・・・・・・?しかし、実際には人間と対して変わらないだろう。ならば人問と同
じ・・・・・・・。」
「いえ、確かに身体の素材となっているのは人聞ですが、体内に粗み込まれたナノマシン
の存在がなければ、彼らは生きることすらできないのです。」
今一意味の理解できないオペレーターの言葉に、司令官はオペレーターの操るモニター
を確認してみた。
「・・・・なに?」
「これはどういうことでしょうか・・・・・・・。」
オペレーターも驚愕の表情を隠せない。しかし、被らには理解できなくて当たり前なの
だ。この技術は、今現代のいかなる化学力を搭載したところで、作り上げることなど不可
能なのだから・・・・・・・・。
「彼らの体の中にあるナノマシンが、彼らの存在自身を助けているとは・・・・・・。」
「どうします?彼らは人間といってしまえば人間ですが、我々と同等の存在と言ってしま
えば、まさにその通りなのです。」
オペレーターは司令に、次の指示を持った。
返答に詰まった司令官を助けるように、後ろから声が上がった。
「隊長。それを見極める役。白分に頂きたい!」
「・・・・・?」
さっき声をかけた士官だ。すでに出る準備を終えているのか、表情には余裕が出てい
る。
「君に・・・・・彼らを見極められるかね?」
「やってみます。我々にとって害をもたらす存在であれば処分。我々と同等の存在であれ
ぱ、生きる権利を彼らに与えます。お願いします。隊長。自分に、彼らを見極めさせて下
さい。」
司令官はまたもや返答に詰まってしまった。
自分はこの士官にこんな大役をまかせてしまっていいのか、もし見極めることができな
かったら、自分たちにとって、ここまで害のある存在はないだろう。
しかし、その士官は二十年前、いきなり現れたあと、滝を登る勢いで昇進してきた超工
リートだ。信用する価値はある・・・・・・・・・・。
しばらく考え込んでいた司令官は、その士官のまっすぐな眼差しを直視し、ゆっくりと
ロを開いた。
「よし。行って来たまえ、ゼロ大尉。被らの運命、全て君に任せた。」
「ありがとうございます、隊長。」
そう答えた士官は、エアフオースの後部ハッチから、外へと降り立った。
「・・・・・・・ようやく動き出したか・・・・・・父さん。」
ゼロは、そう呟いて荒野をホバーしていった。
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