汎用生物兵器1
 8 侵食
 
 ゼロの家の中で、密かに設置されている電算室。その中でアイリスは、ゼロに頼まれてmother 2歴代データのハッキングをしているところだ。それ自身にどんな意味があるのかはゼロからは聞かされていない。しかしゼロの頼みとあっては断るわけにもいかず、何となくハッキングをすることにした。
「何を考えているの・・・?ゼロ。」
 一人しかいない。答えてくれるものも何もない。自然とただ独り言が出てくる。しかしそれは、普通に誰かが聞いたとしても理解できるものではない。それはアイリスだけの、一つの計画だったからだ。
「まだ動かない・・・・それに今になってmother 2を調べろなんて・・・・・。そんなことしなくても動けばあれは邪魔してこないのに。」
 コンソールには、アイリスがアクセスしている様々な情報が映し出されている。立体映像ではないので、モニターに次々とウィンドウが開いていく。そこには、mother 2の造られた年代、その性能。そして、手がけた数多の事柄が表示されている。しかし、製造者などの肝心なことは全く不明だ。自分がその原因を知っているだけに、知らせられないじれったさがある。
 とりあえず引き出せた情報を端末にまとめ、アイリスは溜息まじりに部屋を出た。
「まだ計画はほど遠いようですよ・・あなた・・・・・・。」
 何も工夫がないつまらない天井を仰ぎながら、アイリスは誰かにそう呟いた。
 自らの分身を厳重に管理された部屋に残し、mother 2は軽い身のこなしでトラムへと乗り込んだ。
「さってえ・・・・これからどーしようかしらね。」
 非常にラフな格好なのが、何となくこの喋り方にあっているような気がするが、どちらにしろ軍用トラムの中でこんな格好した少女がうろついている姿は異様だというものだ。しかしその表情は、明らかに慈愛に満ちている。それが一体誰についてのものなのかは知らないが、少なくともmother 2の中には残虐などと言う言葉はないようだった。
 
 「もう一度戦う必要がある・・・・か。」
 夜のはずなのだが、星が全く見えない。旧人類が大気汚染を進行させ、上層部には厚く展開されたスモッグが世界中を埋め尽くしている。太陽の光すら満足に届かないのだが、少し層が薄くなったオゾン層から漏れ出る紫外線を遮断してくれる。そこら辺が利点というものなのだろうか?
「こんなに調子が悪いのはジュノのせいにしておこう。」
 極悪である。
 光のない部屋の中で、ジュノはまた私怨に己を焦がしていた。自分にもそれが意味のあるものだとは考えていない。しかし、そうやっている自分を咎めることはしない。そうしている自分が何よりも好きだった。誰かを恨むことができる・・・・幸せを妬む。そんな感情は、ジュノのほとんどを締めていた。
「・・・・・・。」
 声よりも先に負の感情が自分を埋め尽くす。それが素晴らしいまでの快感だったのだ。どちらにしろ、こんな自分を止める方法はない。後はいかにその感情を満たすことができるか・・・・・・・それだけだった。
 幾人もの兵器達は、その存在の中に目的を見いだす。それが「善」なのか、「悪」なのか、そんなことは関係ない。動き始めた盛大なプロジェクトの、はじまりが兵器達の目的だった。形は関係ない。計画そのものが成功すればいいのだ。
 計画の首謀者はすでに死亡している。しかし、首謀者の思惑通りにことは進んでいる。そしてその計画の遂行のために、動き回る伏兵も多数だ。
 自分でも気付かぬままに、計画へと参加していく。自分で考えることがなく、誰かに完全に利用されている・・・・・・それは、運命の一言で片づける人がいようとも、利用されているだけのつまらない存在でしかないのだ。
 しかし、自ら考えなければならない行動を要求される場合が必ず来る。その時には、もうすでに兵器達の考えは決まっているはずだ。これは単なる計画への利用ではない。与えられた試練という方が正しいのかも知れない。
 自らの目的もまた、自らの使用している兵器に委ねられていることを、兵器達はまだ知らなかった。
 「へんだな・・・・・。」
 自室のコンピューターの中に異常を感じとったゼロは、画面がたまにちらつくのを首を傾げながら見ていた。
 扱いの悪いテレビカメラでもあるまいし、そんな風に画面がちらつくことなどはない。普通に考えれば、電波干渉にでもあったような感じである。
「ジャミングか?」
 戦闘の中で通信の策的妨害のために、電波でシステムを干渉することをジャミングという。しかし、別に今ここは戦場なわけではないし、近くで戦闘が行われているわけでもない。何らかの意図的な行動なのだろう。しかし、ゼロにはその意図がわからないのだ。
 ナノマシンを使って、コンピューターの記録システム内部に入り込む(本当に入るわけではない)。すると、一日の中で定期的な電波干渉にあったことが表示されている。
「・・・・・・。」
 コンソールをいじくりまくってみても、原因や、その電波がどこから飛んできたものなのかが表示されない。ローズに頼んで性能向上を図ったので、これくらいの微弱電波でも何とか拾えるはずなのだが・・・・・。
 これ以上は無駄と悟り、ゼロはとにかくコンピューターの主電源を切った。こうしておけば、電波干渉で悪影響が出る心配は少なくなる(雷が近くなったときにコンピューターのコンセントを抜くのと同じようなものだ)。
 ローズなら、何らかの観測機械でこの電波の出所を探っているのかも知れないという案がゼロの頭を過ぎる。
 シートの上で大きな溜息をついた後、ゼロは腰を上げて自室を後にした。
 さすがはマッドエンジニアだけあって、ローズの部屋には様々な機材や研究中の機体がある。それがどんなものなのか、素人のゼロと、専門的なことを独学で学んだローズでは、技術の説明にも雲泥の差があるのだろう。
 あまり感じがよくない部屋の中には、ゼロ自身あまり入りたいとは思わない。が、ローズが部屋の中に閉じこもっているのでどうしても踏み込む必要があるようだ。
 ローズの部屋のハッチを2、3度小さく叩く。
「誰?」
「俺だよ。」
 そんな他愛のない言葉が飛び交い、ハッチがシュンッと開く。
「何か用?」
「いや・・・・実はな・・・・・。」
 ゼロがその場で話そうとすると、ローズが伸ばした手がゼロの言葉を引っ込ませた。
「立ち話も何だし、中で話しましょ。」
 ものすごくいやだったが、今はローズに従うしかないだろう。
 ことのいきさつを聞いたローズは、「避けては通れないか。」と溜息まじりに呟いて一枚の用紙を取り出した。
「何だ・・・これ?」
「あたしもそれは前々から気になってたのよ。あなたの観測機械と違って、あたしのは何週間も前からその妨害電波に関する情報が流れてきてた。」
 用紙に目を通してみると、細かくわけられた日付に、いつ電波干渉が起こったか、それがどのようなタイプで、どんな機械を使用すると起こるかが細かく書いてあった。
「観測したところによると、これは非常に近いところから観測されてる。あまりに微弱だからゼロの機械では干渉はあってもそれを探ることはできなかった。でも、調べてて面白いことがわかってきたの。」
 わくわくしている子供のような笑みを浮かべて、ローズはゼロに喋る暇を与えずに喋り続ける。
「この電波・・・・・・司政官達の使っているダミーAI、motherから流れてきてるのよ。すでに艦隊司令部のいくつかのコンピューターがダメになってるわ。微弱なだけにあたしの機械でもなけりゃ発信元もわからない。いつのまにか記録用のコンピューターがダメになっていく。どうやら司政官達、軍隊に対して何らかの方法で面当てしようとでも思ってるのかしらね。」
「・・・・・。」
「司令部に行ってプロテクトをかけないと。またどんな機体がダメになるかわからないわよ。」
 ローズが笑みまじりにそういった後、ゼロが怪訝な表情で口を開いた。
「あのな・・・・・さっきお前は自分の機械じゃないと観測できないと来たが・・・・何でお前はそこまで完璧な機械が作り出せるんだ?」
「簡単じゃない。」
 平然と言い返す。
「あたしが地球人類屈指のエンジニアだからよ。」
 その言葉に、ゼロと傍聴していたエックスが呆れ返ったのはいうまでもなかった。
 対処に困ったゼロは、とりあえず自室のコンピューターにプロテクトをかけて居間へと戻った。すると、エックスが一人で椅子に座っている。
「どうしたんだ?」
「ジャミングのことで・・・・少し忠告があります。」
 言っている途中で顔を俯かせたので、最後の方が聞き取りにくい。そのため、ゼロが必然的にエックスに近づいてくることになる。
「この妨害電波・・・・・ナノマシンにも影響があるらしいんです。」
「つまり?」
「だから・・・・このままではゼロさん達に影響が出る可能性があるんです。性能の面でも、生命維持の面でも・・・・・。」
 そこまで言ったところで、ゼロが訝しげに首を傾げる。
「ちょっと待てよ。それはナノマシンに限ったものじゃない。つまり、司政官側はこちら側の全リーバードを壊滅させようとしているとでも言うのか?」
「ローズさんはそうおっしゃってました。」
 もちろん、それがかなりの危機を呼び込もうとしていることくらいは、ゼロやエックスにも容易にわかった。ナノマシンや機械の機能をダメにする電波は、現在の化学では作れないことはない。しかし、それ自身を戦線に投入しようなどと言うものは無駄どころかかえって危険である。この機械だらけの時代に、機械の機能そのものをダメにしようなどという作戦は下の下だ。
 向こう側にもそれは無論のことで知れているだろう。つまり、その作戦に置いて、自軍(司政官側)には、何か対策があったと見て間違いはない。同じ戦法はとれん。
 先も説明したとおり、司政官側と艦隊側はいわば犬猿の仲だ。お互いに接触が少ない上に、仕事内容から生活の仕方まで全く違う。たったそれだけで啀み合っていたのが人類だが、こんな醜態を見せつけられればリーバードが人間に造られた存在なのだと言うことがよくわかる。
 いずれはこんなことがあるだろうと予測はしていたが、まさかこんなに早くも事態が進行していたとは・・・・・。ゼロの嫌な予感は、本当に予期せぬ形で現実となった。
 ローズはすでにこの事実に気付き、調査を進め確定した証拠を取った。そうなれば、一刻も早くmother の悪性電波を止めなければならない。これ以上司政官側の跳梁を許していれば、被害が甚大になった後で二代勢力の戦争と言うことにもなりかねない。
 それだけは、絶対に避ける必要がある。(早まったことをしてくれたものだな・・・・・・。)
 こんな一大事の中で、ゼロの司政官側の出方について呆れることぐらいしかできなかった。それももっともと言えようが。
 緊急対策会議(単なる話し合い)をエックスと開いているさなかに、突然ドリッカーが割り込んできた。
「何の話?」
 無論のこと、事情を説明していないドリッカーには悪性電波のことなどわかるはずもない。先ほどまで自室にこもっていたらしく(改めて説明しておくが、ゼロの家はものすごく狭かったので、ローズの案で増設したのである)、暗がりから出てきた熊のようだった。
 昼寝でもしていたのか、目の周りはしょぼしょぼしていて髪はぼさぼさになっている。しまりがない中年親父の寝起きと形容すると、ぴったりかも知れない。
 そんなだらしないドリッカーにことの重大さを説明すると、態度が百八十度急回転するかとも考えられたが、この無神経男にそんな常識が通用するはずもない。
「簡単じゃねえか。」
「何がだ!」
「発信元をぶち壊しゃいい。」
 これだ。
 無論、そんな考えを持ったリーバードが艦隊側に出ると司政官側が予測していないはずもない。つまりドリッカーの考えは、初期段階で討議に出ることもなく個人の頭の中で却下される方法である。俗にこのような考えを、バカな考えという。
「アホか。」
 にべもなく吐き捨てられた可愛そうなドリッカーは、しょげしょげとその場を去っていった。
 話を聞きつけたローズも現れ、3人で頭をひねらせている。また、途中でアイリスも加わったために4人で唸ることになってしまった。頭のいい人間が集まるほど、決めるべき項目は決まりにくくなる。策士策に溺れる・・・・とはかなり違うが。
 一向にいい案は浮かばない。単なる妨害電波だと思ったのが、そもそも手遅れだったのかも知れない・・・・・・とローズは自らの行動を恥じた。
 「そんなに悩むことねえじゃねえか。」いきなり後ろから、ドリッカーがのんきなことを口走っているものだから、緊張感が消えてしまい、その場にいたほとんどが机に突っ伏してしまう。
「のんきなことを・・・・。」
 呆れたようにローズが呟いた刹那、ドリッカーがこんなことをいってきた。
「全部にプロテクトをかけたら時間がかかりすぎるなら、妨害電波を遮断する何か、例えばそれを妨害する電波を出すとか、やれることはいくらでもあるだろう。」
 どうやら本人にもよくわかってないらしい。
「どうやってその電波を作るんだ?第一、機械作るだけで時間かかるぞ。」
 また切り捨てられるような言いぐさで全員から怒鳴られたので、ドリッカーはしょげて外へと出ていってしまった。・・・・が。
「でもなあ・・・・・。」
 ローズが自分の指をからませて溜息をつく。
「兄さんみたいに、やれることをやろうとする姿勢を持たなきゃ、何も解決する方向へは行かないんじゃない?」
 ゼロの方を見ながら呟く。そんなローズの視線を真っ向から受けとめて、ゼロも同様に溜息をついた。
「やはり、強行突破しかないか。向こう側にはジュノがいるから、少々やっかいだが・・・・・・・・。」
 もっとも単純だが、もっとも効率がいい。ドリッカーが最初にそれを提案した時点で、自分たちの戦闘能力を考慮した上で、ゼロはその意見を切り捨てた。しかし、無茶とわかってでも突入が要求される事態なのも確かだ。
 今ドリッカーを危険な舞台に立たせるのも、これからの成長を考慮した上で必要なものなのかも知れない・・・・・・。ゼロはこの強行突破の上でのメリットを探すのに必死だったが、対して考え込むこともなく決定的なメリットが出てきてしまった。
 つまり、突入するのが一番いいと判断するしかなくなってしまったのである。
「よし。外にいるドリッカーを呼んで来てくれ。アイリス、並びにエックスはサポートのために準備。ローズはバスターの点検を頼む。」
「了解。」
「はいはい。」
「わかりました。」
 三人三色の返事が戻ってくる。が、これからが戦闘の開始となるのだ。気は引けない。
 ゼロ、アイリス共に軍からは叩き出されているから大したことはないものの、ドリッカーに関しては、任務外の違法戦闘ということになる。ばれれば懲戒処分だ。・・が、ゼロも、ドリッカーも、独断専行はお手のものだったので、大して気にすることはない。
 後は、アイリスとエックスのサポートと、ローズが自分たちに装備させる兵器に問題がある。
 そんなことを考えていると、後ろからいきなり怒号が響いてきたため、ゼロは反射的に自分の耳を抑えてしまった。振り向いてみると、ドリッカーが「俺の言ったことが正しかったんじゃねえか!」と叫んでいる。まあドリッカーが怒るのももっともだ。
「静かにしろよ。結果的にはお前の意見を取り入れてやったんだから。」
 なだめる・・・・・には遥かに偉そうな態度で、ゼロはドリッカーに声をかけた。
 ドリッカーがその言葉を聞いて考え込んだように座り込む。
「どうした?」
「なあ・・・・・おかしかねえか?」
 ドリッカーがいきなり仏頂面でそんなことを口走ったので、ゼロは前髪に隠れた眉をつり上げた。
「コンピューターをダメにすることが出来る妨害電波なんて聞いたことがねえ。しかも、人類最高のエンジニアであるローズでさえそれがなんなのか、正確には把握できちゃいねえんだろ?俺の考えとしてはだ。これは多分、電波を偽装した新型の兵器か何かなんじゃねえのか?簡単に言ってしまえば、機械にとっての毒ガスみたいなもんだ。そんな兵器が実用化されて、司政官側と艦隊側が全面戦争になったとして、双方がその武器を使えることがあったとしたらだ。リーバードなんて・・・・・ほとんど全滅するんじゃねえのか?」
 もっともな疑問だった。それがドリッカーの言うとおりならば、そんな自殺行為を、しかも司政官側が起こすとはとても思えない。いくらそんな兵器があったとしても、艦隊で一気に踏み込まれれば司政官側はすぐに打ち砕かれる。そして苦し紛れに攻め込んだ艦隊側も、やがてはその兵器によって潰されていく。つまり、リーバードの全滅を願う第三者の出現を考慮する必要があるのだ。自らにとってその兵器が全く無影響で、なおかつ遠目からリーバードを攻撃し、司政官側と艦隊側の共食いをさせる・・・・・・そう。人間のような。
 ドリッカーの意図を汲み取ったエックスが、慌てたように口を開く。
「しかし・・・・この世界にもう完全な人間は・・・・・。」
「そう・・・・。」
「あたし達しか・・・・・。」
「いないはずなんですよね。」
 ゼロ、ローズ、アイリスの順で、つないだように口を開いていく。全員がその場で考え込むか、俯いて嘆くかをしていた。一体、今まで動かなかった自分は何なのだろう。何故、誰かの助けでリーバードが消えていくのだろう。
 リーバードが消えることを望んでいるはずだった。絶対に、いつかリーバードを全滅させてやる・・・・・そう考えていたのだ。しかし・・・・・自分たちがやるはずだった作業を、あっさり他の誰かにやられた・・・・・・。その虚しさは、確実にドリッカー達を腐らせていた。
 艦隊司令部に衝撃が走ったのは、レーダー室から飛び込んできた新造のリーバードからの報告だった。リーバードそのものに異常を与える、新型の破壊兵器。あらゆるコンピューターのシステムを根底から破壊し、レーダーから何から何までをダメにする電波状の兵器。今までのコンピューターウィルスとは勝手が違う、まるで機械にとっても、人類にとっても最悪な兵器・・・・・・。
「戦争にだって・・・・・・絶対に機械と名の着く物はいるはずなのに・・・・・・。」
 呆然と若い幹部が呟く。口にこそ出しはしなかったが、どの幹部も、司令も皆同じ表情をしていた。この兵器がmother付近から出ていたのも、衝撃の一つだった。
「司政官側を問いつめたのか?」
 イライラした口調でそう言い放つ司令に脅えながらも、新造のリーバードはのらりくらりと質問に答える。
「は・・・はい。一応問い合わせはしましたが、全く身に覚えはない。こちらも被害を受けているところだ・・・・・・と一方的に突き放されまして・・・・・。」
 司政官側の対応に、遂に勘極まったか、司令がゆっくりと立ち上がる。
「全軍を集結させろ!やられる前にやらなければいかん。こちらの身体がダメになる前に仕掛けるまでだ!!」
 全面戦争の宣言が、残り時間がわずかになった司令官のお言葉だった。
 一方、艦隊側のレーダー室は罵声と悲鳴の飛び交う戦場と化していた。
「外部侵入プログラム用のプロテクトを今すぐにかけろ!どんな抗体を使用しても構わん!mother 2へのウィルス侵入だけは、何がなんでも阻止するんだ!!」
「プロテクト廃絶!OS側がコマンドを一切受け付けようとしません!!このままでは浸食されていくことは間違いありません!!」
 室長の叫びに応答した伍長クラスのリーバードは、今にも泣きださんかと言うくらいに必死に答えていた。外部浸食のデータを表す画面が、一方的にエマージェンシーコードの赤色の面で埋められていく。レーダー室の大型レーダーも、すでにそのほとんどが浸食された状態にあった。
「何を考えているんだ!司政官側は!!」
「艦隊司令からの命令です。全艦隊を集結させ、この事態を打破すべく司政官側に攻め込むと・・・・・・。」
「全面戦争か!?」
 室長を含めた全員が焦りと絶望感に表情を険しくする。全面戦争は、すなわちそのほとんどが死ぬことを表していた・・・・・・。
 
 
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